第十七話 修羅の道
「さてと。」手の平どうしをパンパンと叩いて鳴らし、俺たちは横に並んだ。
目の前にはプラスチック製の結束バンド(タイラップと、言ったら伝わるだろうか。)で手足を縛られたヤンキーが10人。正座で俺たちの前にいる。
「お前らのバックは誰だ?」
腕を組み、見下ろしながら俺は聞いた。
「いや、自分たちバックとかは居なくて…。」
縛られたうちのリーダー(?)と思わしき男が口を開いた。
「なら、そういう先輩とか居るだろ。呼べ。」
今の時代、ケツモチなんている方が珍しい。
暴対法の影響で暴力団の勢力が衰退した今、ケツモチなんて商売にならないシノギ向こうにもメリットが無いだろう。
だが、奴らは違う。
「聞きたい事があるだけだ。さっさと呼べ。」
電話をしぶる男の携帯を取り出して、該当する人物に電話を掛けた。
「…何や。」
偉そうな態度で電話に応答した男。
「お、お疲れ様です。すみません。今、お電話大丈夫ですか?」
「おう、さっさと要件言え。」
そこで俺は自分の口元へ携帯を持っていく。
「お前がコイツらの面倒役か?教育がなってないな。度量が知れる。」
突然煽られた男はかなりイライラしながら返してきた。
「誰やお前。そんな奴らの面倒なんざみた覚えねぇわ。適当な事抜かすなよ。」
「そうか、俺はただの一般人だ。後輩の始末も付けれねえ中途半端な先輩風吹かすなら、大人しく家に籠ってろ。ビビり野郎が。」
「喧嘩売ってんのかお前。殺すぞ!」
「電話越しでなら何とでも言えるんだよ!雑魚が!殺れるもんなら殺ってみろ!水分橋のグラウンドに居るよボケが!」
そこまで言って俺は電話を切る。
「さて、お前らはこの先輩とやらが来るまでここで人質だ。来たら帰って良いぞ。」
そう言って、一応念の為全員の携帯を没収して、
一度身を隠した。
ここで、相手の出かたを待つ。
仮に大勢で来ても、コイツらを生贄にして見捨てれば良い。俺は探偵だ。1人だけターゲットを決めれば、そこから芋蔓式に調べ上げてやる。
そうして、ナイトビジョンのカメラを取り出して、
生贄集団の方へ設置する。
10分ほど身を潜めていると、白色の字光式のゾロ目ナンバーがグラウンドにもの凄い勢いで入ってきた。
(見るからにって感じだな…笑)
車から降りてきた男は両腕両足から龍のような蛇のような柄が巻き付いた刺青を出しながら何かを叫んで降りてきた。
縛られ、正座させられているヤンキー共何人かへ、蹴りを入れて叫んでいる。
「1人できたみたいだな。」
俺の隣に隠れていた後輩が小声で話しかけてきた。
「ああ、よっぽど頭に血が登ってんだな。」
「アンタ、煽りスキル高すぎだよ。笑 ありゃ、俺でもキレそうになる。」
褒めか貶しなのか分からない、一応称賛に聞こえる言葉を貰い「そりゃどうも」と短く返した。
ヤンキーの数人がコチラに向かって指を指してきたので男はコチラに向かってドシドシと足を鳴らしながら向かってくる。
俺がそのままスッと立ち上がり、両手を挙げて男に向かって歩き出す。
「降参だ。すまない。酒に酔ってたんだ。」
男は怒号を飛ばす。
キレ過ぎているのと巻き舌で何を言っているのかよく分からなかったが、まぁ、友好的でないのは確かだ。
小物のフリをして、ビビりながら後退する。
「ホントすんません!仕事のストレスでこんな事しちゃって反省してます!」
そう言って両手を前に姿勢を低く、男から距離を保ち退がる。
男が先程、俺が隠れていた付近に差し掛かった時、後輩が後ろからチョークスリーパーを仕掛けた。
すかさず俺はダッシュで走り寄り、男の腹めがけて思いっきり蹴りを入れた。
俺に気を取られてチョークを解除出来ずにそのまま息もまともに吸う事が出来なかったので、結構あっさりと気絶した。
「邪魔したか?」
腕を解く後輩へ聞いた。
「いや、どっちでも良かったよ。」
そう言って、2人でまた、男の手足を縛った。
担ぎ上げて、ヤンキー達の方へ行き、すれ違いざまに声を掛けて、そのまま車に男を詰める。
「早く帰れよバカヤロウ共。2度と悪ささんじゃねぇぞ!」
野球部のような返事をして解散したヤンキー共に少し笑いが出たが、すぐに切り替えた。
バッシャーン!
突然水を掛けられた男は「ヒャッ!」と情けない声で飛び起きた。
「おはよう。状況分かるか?」
男は自分の置かれた状況を少しづつ理解しようとキョロキョロと周りを確認しだした。
夜。木々が生い茂る暗闇。全裸に、縛られた状況。
目の前に男2人。
男は叫んだ。
「お前ら顔覚えたぞ!ぶっ殺してやるからなぁ!」
「ほ〜ん。今から死ぬお前がいったい、俺たちの顔を覚えて何しようってんだ?呪い殺すか?見た目に似合わずそういうの信じるタイプなんだな。めでたいめでたい。」
そう言って俺が1煽り入れると目つきが変わる男。
「アンタら誰や。組の人か?お、俺が死ぬて、何で、何の件だ?」
明らかに俺達を何かと勘違いした男は、態度が少し落ち着いた。
「さっきの威勢はどうした?まぁ、言葉遣いと、自白の内容によっちゃあ助けてやらんこともない。」
そう言うと、男は急に態度を改めた。
「ほ、ほんとですか?自分は吉野と言います。
いったい、何のご用件でこんな事になってるんですか?」
「思い当たる節言ってみろ。当たったら助けてやる。」
吉野を名乗る男はペラペラと自分の悪事を話した。
このくだりに全く意味はないが、上手い事事が運びそうなのと、何かの材料になるかもしれないので、一応録音をしておいた。
どうやら吉野はオレオレ詐欺、恐喝、保険金詐欺と、末端のチンピラ仕事を任されている男らしい。
(末端もいいところだな…。)
そこで、俺は上の人間に繋がりそうなオレオレ詐欺から情報を抜く事にする。
「お、オレオレ詐欺正解〜。お前の上の人間に、アレ、何だ、アイツだよアイツ!ほら、最近名古屋で名前ないグループ出来ただろ。そのメンバーのアイツ!あーもう歳だなぁ。もう、説明するのもめんどくせぇからやっぱり道具持ってこいよお前。」
俺はそう言って吉野に話しかけて、途中でド忘れしたフリをし、後輩を車の方へ促す。
「か、加藤さんですか!?五島さんですか!?」
俺のセリフを何かと勘違いしてビビり上がった吉野は名前を出して、助かろうと必死だ。
(結構、一か八かのかまかけだったが、2人も出てきたな。コイツは半グレ向いてないな笑)
「そうだ。そのどっちかまでは言えないが、お前が仕掛けた仕事の被害者が身内らしいぞ。終わったなお前。」
冷酷に吉野へ伝える。
「そ、そんな。俺はどうしたらいいですか?」
吉野はすでに手の中だ。ここまでやればあとはチョロい。
「まぁ、俺もお前みたいな仕事してた時期があるからな。」
そう言って足元に小さいおもちゃのようなナイフを投げて渡した。
「コレで何とか解いて逃げろ。俺らも、今回の仕事で足を洗う事を決めてたんだ。最後ぐらい助けてやる。」
男は「ありがとうございますありがとうございます」と何度も頭を下げた。
「あ、ついでだが、新城のバラし(殺し)なんか知ってるか?俺たち以外にも汚れ仕事担っている奴がいるみたいなんだが。」
吉野は自分は末端だからそこまでの情報は入っていないと答えたので、そのまま2度と中部地方に戻ってくるなと伝えて放置した。
「さて、この後が、大変だな。」
そう言って車に乗り込み、帰るだけなのに珍しく俺がハンドルを握って車を出す。
「明日は槍が降るかもな。」
後輩がそう言って珍しそうに運転する俺を見た。
「この後の事考えると、槍ぐらいならまだありがたいな。」
そう言ってタバコに火をつけた。
片目が壊れたボロ車は
俺達を修羅の道へと案内する。




