第十六話 大乱闘
俺は後輩に自分がやろうとしている事のリスクを話した。
「…以上だ。この先のリスクはお前の人生に汚点を残すか、死ぬか。それほどの道になる。2時間後俺は実行する。来るか来ないかはお前が決めろ。」
そう言って家に来た後輩に伝えた。
そのまま解散を宣言して準備に入ろうとすると、
「俺はいつでも準備出来てるぜ。」
そう言って後輩は俺を真っ直ぐ見据えていた。
続けて言う。
「アンタのところに来る時は、いつも(最悪)を想定して来ている。コレは俺が助手をやる時にアンタに教えられた心構えだ。言いつけは守ってる。」
(そうか。コイツも俺の事をちゃんと分かってくれていたんだな。)
「…それなら背中は預ける。頼むぜ相棒。」そうして手を差し出す。
「くさすぎだよ笑」
俺の言葉に少し、照れた様子を見せたがしっかりと俺の手を握ってくれた。
以前通った時に見かけた、北ドンの駐車場にたむろする改造車の若者集団を思い出し、まずはそこへ向かう。俺の作戦は、名古屋とその周辺のヤンキー共の一掃。襲撃をかけて、情報を引き出し、半グレ集団にたどり着く人物を見つけ出す事だ。
かなり乱暴だ。だが、コレが俺のやり方なのだ。
あの闇探偵に聞けば情報は入るだろう。
しかし、アイツは先輩の管理下にいる。
先輩に聞いたところで、俺たちはすでに部外者。
情報を提供してくれるとは限らない。
名前の無い集団だ。聞き込むにも、情報がふんわりし過ぎている。
頂上の見えない山は下から登るしか、確認する方法は無いのだ。
「まずは末端から叩く!」
そう言って向かった先の北ドンには今日はヤンキー共はたまっておらず、肩透かしを喰らう。
「まぁ、こんなご時世だ。あんな人種が珍しいぐらいだからな。」
後輩が冷静に言う。
「マジかぁ〜。俺が見たのはたまたまだったのか。」
俺は次の目的地を探す。
「半グレっぽい奴に突撃するのはダメなのか?」
後輩が聞いてきた。
「いや、アイツらがどんな組織で、どれほどの情報網を持っているか分からない。俺たちが仕掛けた時に少しでも情報に遅れを出したい。それに下っ端にも上と関わりはなくても情報通な奴ってのは居るもんだ。」
俺はマップやSNSでそれっぽい場所や人物の投稿を探しながら言った。
すると、ブォンブォンと爆音を鳴らしたバイクの集団が10台ほど入ってきた。
「なんだ、やっぱり居るじゃねえか。」
そう、歓喜すら思わせる顔を後輩に向ける。
「いや、たまたまだろ」
呆れた顔で後輩は俺に言う。
集団は駐車場をぐるぐると回りながらバイクを吹かす。
「よし。運転変われ。」
後輩と運転を変わると俺はバイクの集団の方へ車を進めた。
乱暴にバイクの前に車を止め、クラクションを鳴らす。
窓を開けて怒号を飛ばす。
「テメェらブンブンうるせぇんだよ!田舎もんが!日本語使えるだけの猿が調子に乗るんじゃねえ!!」
そう言って1番体格のいい奴が乗っていたバイクに向かって痰を吐く。
「何してんだテメェ!!」
そう言ってブチ切れた集団は向かってくる。
その瞬間に笑顔で中指を立てて俺は車を発進させた。
案の定付いてくる。
「良い子達だ!そうだ!プライドを傷つけた相手だ、地獄の底まで追ってこい!」
そうして俺は国道41号線を庄内川方面へ抜けて、
赤信号を無理やり突破し、橋をすぐに曲がり堤防へ。
バイクの集団は、俺たちを追ってくる。
逃げる奴ってのは、心理的にこちらが優位と勘違いして、追ってしまうものだ。
そうして少し走ると右手に野球、サッカーグラウンドが見えた。
入り口が少し急な角度になっているので、
煽りハンドルをし、ドリフト気味に駐車場へ入る。
奴らも上手い事入ってきた。
頭に血が昇っている。どうしてグランドに入ったかなんて、考えても居ないだろう。
集団全員が入ってきたところで、またしてもドリフト気味に方向転換し、バイク集団の方へ車の向きを変える。
車を停止させて、俺の思う状況になるまで様子を見る。バイクから降りてきて何人かは車を殴る蹴る、怒号を飛ばすなど仕掛けてくるが、まだ動かない。
集団の最後の1人が、バイクから降りて、こちらに向かって走ってくる。
俺の狙いはコレだ。(全員がバイクを降りる事)
車を急発進させて、奴らのバイクに思いっきりぶつかる。乗り上げ、ぶっ飛ばし、ぶっ倒し、破壊する。
唖然とするヤンキー集団がこちらを見ている中、
車で出口を塞ぎ、バットを持って後輩と外に出た。
「コレで逃げらんねぇなぁ」
そう言った瞬間に俺はバットをヤンキーへぶん投げ走り出す。後輩もそれに続く。
飛んできたバットに頭を押さえてしゃがみ込んだ奴の顔に膝蹴りを合わせてぶっ飛ばした!
かなり良いところに入ったらしく、1発でそいつはのびた。
後輩も1人2人とテンポよく確実に顎を打ち抜き崩していく!
(締め落とす約束はどうしたんだか…。)
そう思っていると、隙をつかれてぶん殴られた。
「あ痛ったー!」一瞬視界が揺れて、脚がガクッと落ちるが、踏ん張って倒れなかった。
俺は先日やられた上着を目隠しにする方法を思い出し、ヤンキーに向かって自分の上着を投げ、目眩しに使う。しっかりと顔にかかり、怯んだ隙に上着ごと顔を殴った。
「卑怯だぞテメェ!」そんな声が聞こえたが、
「大人ってのは卑怯なんだよ!童貞野郎が!」
そう言って顔を踏みつけて次に向かうも、
いつの間にか、後輩が残りの8人を既にノックアウトしていたのだ。
(コイツ…強過ぎだろ…。先輩とどっちが強いんだ?)そう思いながら、賞賛も込めて後輩へ投げかけた。
「………お前、世界取れるぞ…」
そう言った後に立ち上がってきたヤンキーの頭をさっき投げたバットでコーンと叩き気絶させた。
作戦を立てたのに全く役に立っていない、
中年不良探偵は今年35になったばかりだ。




