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黒い光に照らされて。  作者: ユウソン


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第十四話 元凶

「おーい。生きてるか?おーい。」

俺はサラリーマン風の男の頬を叩いて声をかける。

しばらく続けていると男が「うぅ…」と呻いて、目を覚ました。現場に安堵の声が多数漏れた。

「丈夫な身体に生まれてきて良かったなぁ〜。お前。」

俺も安堵し尻餅をついた。

男はいつかの俺みたいに、パンツ一丁でロープにぐるぐる巻きに縛られていた。

「えっ!?」男が自分の身なりを見て声をあげた。


「分かるぜ。俺も同じ気持ちだったからな。」


そう言って立ち上がり高そうなソファに座る先輩の元へ。

「何とか生きてましたね。」

「おう、意外と丈夫だなぁ!ガハハ!」と笑う先輩に対して舎弟たちは胸を撫で下ろしていた。

(そりゃそうだ。死んじまったら、処分の方が大変だからな。)

そうして俺は、尋問。いや、ここからは拷問かな。

を先輩に任せることにした。

「おうこら。お前の名前と商売話せ。嘘言ったら分かっとんな?」

そう縛り上げられた男は、先輩の手元に名刺と、免許証。携帯、財布と全て握られている事に絶望しながら少しづつ答えた。

「名前と仕事に嘘はねぇな。ほんなら、住所と電話番号と、車のナンバー言えや。」

(何の時間なんだコレ?情報は手元にあるだろう。)

そう思いながら後ろから様子を伺う。

男は住所を少しだけ、気になるほどではない省略の仕方をして答えた。

その瞬間に先輩のサッカーボールキックが顔面へ飛ぶ!

おそらくあそこに居た全員が男の首が飛んだと思っただろう。

「ガバァッ!」そう言って倒れ込んだ男の口の中から大量の鮮血が流れ出した。

「(番地)が抜けとるだろうがオラァ!」そう言って鳩尾あたりに蹴りを入れた。

(この保険…。キツすぎる。)そう思って後輩を見ると、後輩も(可哀想〜)と口パクで言いながらかなりドン引きしていた。

ここの事務所は先輩の管理するビルのひとつで、昔よく呼び出されていたので覚えていた。

俺はこのビルを計算に入れて、先輩が何時に来るかを思い出しながら作戦を組んでいた。

見事に俺の頭の中のリハーサル通りに動いてくれたこの男が今は不便でならない。

「ずみまぜんっ!言いまず!ぢゃんど全部言いまずぅ〜!」男は号泣していた。

涙と鼻水と鼻血と口から血を流し汗に塗れた顔は文字通りぐちゃぐちゃだ。

「そうだ。最初からそうすりゃ優しくしてやったのになぁ。」

「「「嘘つけ!!」」」と全員、ツッコミを飲み込んだ。

男はその後は実にスムーズに質問に答えていった。

少しでも渋ったり、迷ったりしたらすぐ先輩が立ち上がり、木刀の様なものや、殴る蹴るの暴行を負わせるため、完全に心が折れて観念した顔だ。

ここで俺の知りたかった本題に入った。

「お前は誰に雇われてんだ?」

男はすぐに答えた。

「名古屋の半グレグループで名前の無い団体です。最近結成されて、ほとんどの素性は知りませんが、そのグループを探っている者が居るから、そいつの大元を探し出せと言われて雇われました。」

もう完全に手懐けられた犬である。


そこで少し疑問が頭に浮かんだ。


(?俺は、半グレなんて探ってないが、何故尾けられたんだ?)

そう思っていると、全員の視線が俺に向く。

「え、なに?」

先輩が口を開く。

「お前、半グレや反社は調べんのじゃなかったんか?」肩越しに睨まれた俺はビビりながらも否定した。

「いやいやいや!俺、そんな事して無いですよ!

後輩にも聞いてくださいよ!なぁ?」

後輩へパスを出す。

「まぁ、全部の依頼について行ってるわけじゃねぇが、自分からそんな所に飛び込んで行くタイプではねぇな。」俺を見ながらそう言った。

「だからそいつの勘違いなんすよ!」

俺は男を指差して弁解する。

先輩は男に視線を戻し木刀を手に立ち上がる。

「ほんとなんです!信じてください!あの男の人が半グレグループの写真を撮ったのを見てました!」

先輩がこちらを向く。

「は!?いや、お前ふざけんなよ!俺がいつどこでそんな事したんだよ!」俺だってこんな目に会いたくないし、こいつがでまかせを言っていると分かっているが、先輩はそうなると多分俺とこの男、両方を拷問にかけるだろう。そういうタイプだ。

男が口から血を飛ばしながら叫ぶ。

「そっちこそふざけるな!1ヶ月ぐらい前にあんたグループの写真撮って逃げたじゃないか!」


「お前!良い加減にしろ!俺は……!あ?1ヶ月前?…」

記憶を辿る。(そんな様なことがあった気が…。)

頭を回し考えていると、後輩が突如言葉を放つ。

「あ。殺された依頼者の…。」

その言葉を聞いて思い出した!

「あぁ〜!アレか!!アレは違うぞ。別件の不倫調査でホテルに入って行く男の写真に、その半グレが写り込んだだけだ。」


「そ、そんな…馬鹿な…」

男はそう言って絶望の顔をしてへたり込んだ。


「フッ。残念だったな!」そう勝ち誇った俺はタバコに手を伸ばす。

違和感。

(何か引っ掛かる…。)そうして口に咥えたタバコに火を着けぬままゆっくりと男を見る。


「俺は、全く関係の無い人を…」そう呟く男。

俺は冷や汗が止まらなくなった。

脚が震える。手もだ。おまけに胃が冷たくなる様な感覚がして、血の気が引いた。


「お前…まさか……」


男は項垂れながら言った。

「半グレの写真を撮って逃走したアンタが次に接触した人間が、例の新城市の遺体で発見された人だ…。」


俺は眩暈がして床に手をつきしゃがみ込んだ。

後輩が軽く支えてくれなかったら、顔からダイブしていただろう。


「そ、そんな。そんな偶然。馬鹿な…あるはずない…。」

俺は目の前が真っ白になった。


「おい、そいつ上に連れて風に当たらせこい。」

先輩がそう言った気がする。

俺は放心状態で運ばれた…気がする。


目の前が真っ白になり、何も考えられない。

が、自分の未熟さが、傲慢さがとてつもない事をしでかした事だけは理解した。

そんな責任に耐えられなくなった俺の脳みそは処理落ちし、無へと帰す。

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