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黒い光に照らされて。  作者: ユウソン


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第十二話 掴んだ確信

調査報告書を渡した時の依頼者は、

「ありがとうございます!やっぱりコイツだったのか!証拠突き付けてとっちめてやるんだから!」と、会う度にオネエ寄りになっていくのが否めない状態だった。

「え…ええ、そうですね。まぁ、とにかく冷静になって、弁護士を間に立てる事をお勧めしますよ。」そうアドバイスをして別れた。

「アイツ絶対こっち入ってるだろ。笑」そう言いながら、指をそらした手の甲を頬に当て、笑う後輩。

「俺もそう思う。」

俺は同意した。

明後日からの予定を聞いたのに、暇だったのだろう。後輩は今日の朝から俺について来た。

「お前、仕事は良いのか?」

今更だが、ふと気になって聞いてみた。

「ウチは副業OKだからな。会長も、探偵の用心棒なんて面白そうな仕事、今後の掴み話になるから行ってこいってスタンスだよ。」

コイツはそこそこ大きい所の格闘技ジムの選手兼、トレーナー補佐だ。要するに、掛け持ちバイトのフリーターって所だな。

「俺もそんな生き方してぇなぁ。」

嫌味ではなく本心で出た言葉だ。

「やれば良いじゃん。」

ソレが出来ないからこんな仕事やってんだよ!とはプライドが邪魔して言えなかった。



アパートに帰り、パソコンを開く。

(まだ、確定じゃ無い。が、俺の推理が正しければ…。)

カメラを繋ぎ映像を見返す。

2時間。3時間。気づけば5時間ほどが経過している。

(気のせいだったか?)一度作業を中断して、応接用ソファーで爆睡する後輩を起こし、昼飯を食べに出かけることにした。


平日の昼過ぎだ。何処も空いていて、選びたい放題。俺たちは犬山城の少し外れにある、中華料理やに入る。

入ってすぐ左側の席につく。

メニューにサッと目を通し、店員をすぐに呼んだ。

水とおしぼりを持って来た店員に、すぐに注文をする。

「俺は、ランチセットの醤油ラーメン大盛りで。」

「俺も一緒で。」

料理が来るのを待つ間に店の角にあるテレビを見た。今日の夜に少し雨が降るらしい。

しばらく雑談をしていると料理が運ばれて来たのでしっかりと手を合わせて食べる。

「そういう所真面目だよな。」口から麺を垂らしたまま後輩が言った。

「まぁな。食えない時期もあったから、やっぱり飯が食えることには感謝しないとな。」

ふーんと鼻を鳴らし食事を続ける後輩をよそに俺はラーメンを啜った。


もう一度アパートに戻りカメラの映像を見直す。

(違和感だ。直感で良いから違和感を探すんだ。)そう言い聞かせながら無心で画面に食い付いた。

俺の事を見ていた後輩は冷蔵庫から勝手に水を出しながら聞いた。

「今更だけど、なんで探偵なんだ?もっと楽な道もあれば、賢い生き方も出来ただろう?」

画面に注視しながら自分の過去や気持ちを省みて答えた。

「元暴走族の中退が、まともな企業つけると思うか?建築現場で働いて、リフォームの営業マンやってまた現場で働いて、殴られて怒られて嫌になって、なんとなくテレビの影響で昔憧れた探偵になろうと思った。楽そうだったからな。こんな経歴だ。何処も雇っちゃくれねぇ。でもなぁ…。」

そう言って画面から目を外し、後輩の方を見た。

「SNSだ動画配信サービスだ、メディアでさえ本当か嘘か分からん情報の世の中で、探偵だけが真実を証拠に飯を食えるんだ。こんなに面倒くさいとは思って無かったけどな。」タバコに火をつけコーヒーを淹れる。

「ふーん。なるほどね。」そう言って後輩はまたソファーに横になり携帯をいじり出した。

(雑談したかっただけかよ。真剣になって損したぜ。)

そこから2時間ほど動画を見返しただろうか。

動画の中に映る1人の男が一瞬妙な動きを見せた所を俺の目が捉えた。

(コイツか?)

身なりや背格好を覚え、動画を早送りする。

次の動画へ。またその次へ。

全身の毛が逆立つ。

「……お前か…」

俺はパソコンの画面を睨みつけながら箱に入った最後のタバコに火をつける。

ここ数日の違和感の正体を突き止め、勘違いでない事が証明された。

やはり明日は後輩と名古屋へ出掛ける事になりそうだ。

(後は俺の賭けた保険が効くかどうかだな…。)

名古屋の街を頭の中で歩き、地図を見て思い出し、

最適解なルートを構築。


そこで初めて今日、俺は気を抜いた。

「っ…ふぅ〜…」煙を天井に向かって吐き出して椅子の背にもたれ掛かり脱力する。

対面のソファーに寝ている後輩にタバコの空箱を投げて起こす。

「んぁ?」

眩しそうな顔をして起きた後輩。

「ビール取ってくれ。」

寝起きでだるそうな身体を引きずりながら起きて伸びをする。

「終わったのか?どうだった?」

冷蔵庫を開け、俺にビールを投げる。

「ビンゴだ。明日夜から作戦に移る。」

プルタブを開け、吹き出す泡よりも早く口へと缶を運び喉を鳴らしながら一気に空にした。


「ッカァ〜!!」



夜のアパートから聞こえる美味そうな咆哮は、

明日の作戦決行を決めた合図となる。


夜中に降り出した雨の音を聞きながら、

(そういえば、近年紫陽花の花を見る事が少なくなったなぁ)とふと思いなんとなく調べてみた。


紫陽花にも花言葉があり、色によって変わるらしい。

俺はやはり紫陽花と言えば青色だろうと思い調べた。


青いあじさいの花言葉は、「知的」「神秘的」「冷淡」「浮気」

ふーん。と鼻を鳴らしページを飛ばして3歩歩いたら忘れてしまった。


この花に、毒がある事を知らぬまま。


後1ヶ月もすれば梅雨に入る。出来れば夏は仕事がしたくないなと、気付けばまた、為にならない考え方が頭を過ぎる午後23時18分。



雨はまだ止む気配はない。そんな5月の夜になった。






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