神性とは、何を意味する?
雷の討伐を終えて、本部に帰ってくる。アンとは途中で別れた。やはりスフィーは魔法で先に帰っていたが、何故か本部の建物に寄りかかって立っている。どうやらあたしのことを待っていたらしい。
「お前、教育係だって言われてるのになんだあの体たらくは。性質くらいちゃんと教えとけよ」
……頭使うのが苦手なあたしに教育係なんてさせる方が悪いだろ。
そんなことを思っても言わない方が得であることは分かっている。それにアンは性質を教えなくても善戦したらしいし、それならそれで良いだろう。
「……忘れてただけだ。あいつも生きてんだからいいだろ。それにあの神、放っておいたら碌な事にならないだろ。武器が違っても、いるだけで十分な時間稼ぎができるはずだ。あいつ、筋いいし」
そうだ、アンは筋がいい。生きている間もこういう質のことを生業にしていたらしい。だからあたしがいちいち言わなくたってここでの戦い方もすぐ身につけるだろう。
そうじゃなくたってどうにか生き残るためにやるはずだ。神に取り込まれたらどうなるかもスフィーがどうせ教えているはずだ。
「筋が良くてもお前がやらないといけないことはやれよ。もしあれで眷属とかにされてたらどうするつもりだったんだ」
「そのときは叩き潰せば良いだろ。いくらあの訳わかんねぇ武器持ってたとしても近づけばあたしの力でどうとでもなる」
拳銃とかいうのを持っていたところで近づけさえすればすぐに殺せる。実際、そういうものだ。誰が神に取り込まれたとしてもあたしたちは余計な情なんて抱かずに殺さなければいけない。神を弱体化させるためにも、だ。
……どうせ死ぬ時はみんな同じなんだしな。結局みんな肉塊になるんだ。
みんな最後は同じだ。死ぬっていうそれだけは変わらない。あたしが死んだあとのあっちの世界はどうなったのかは口伝でしか知らない。それでしか知ることはできない。
「……ルベリア、お前は神ってなんだと思う?」
スフィーが聞いてくる。神とはなんだと聞かれてもあたしにはわからない。あいつらはただ力を持った、面倒で生きることしか意識にないような奴らだ。
「知らねーよ。自然とか信仰とか、そういうのが形になった奴なんだろ。そうやって教えられただろ。それだけ分かれば十分じゃないのかよ」
「そうだけど、そうじゃない。あいつらってなんであんなに生まれてくるんだろうな。人がいなかったら自然神が増えすぎてそのまま世界は終わってたんじゃないのか?」
「それが在るべき姿ってヤツなんだろ」
あたしは世界の存続だかなんだかには興味がない。あたしはただ与えられた仕事をするだけだ。死んだ後だって、生きていたときだって。
……死んだ後もまだこうやって戦うとか、奇妙なもんだよな。
生きている間は死んだら幸せな世界に行けるなんて馬鹿なことは考えていなかったし、死んだ先があるとも思っていなかったんだったか。もう昔すぎて碌に覚えてもいないが。
「不思議なんだよ、この世界さ。魔法とかも奇妙な物だと思わないのか?魔法は神の力だって言われてるけど、魔法の神はどうやって出来たんだ?」
いつものスフィーらしくなく、根源まで突っ込んでいこうとする。魔法が何なのかとか、どうやって魔法の神が出来たのか、とか。
そういうのは追いかけ回すものじゃない。
碌なことにもならない。
「おいスフィー、そんなの知って何になるんだって話だろ。それに、分からねーだのなんだの言って不安になるくらいなら魔法なんか使うなよ」
「そう、なのかもな……。ルベリアっていつからこれ、やってるんだよ?僕がかみさまの殺し屋になったときから居たよな。その時も、僕の師匠より上の世代みたいな感じだった」
あたしがいつからこれをやっているのか。そんなことあたしですらも曖昧な話だ。ここに来たのが何年前だ、目の前で何人死んだ、とか、覚えるだけ無駄だと思っているから。
「だからって、何も変わらないだろ。あたしがお前の師匠より年上だったとしても。……それに、あいつももう死んだ。お前も気をつけろよ」
こんな話は立ったままするものじゃない。あたしはそもそも本部に用があって部屋にそのまま帰らずここに来たのだ。こっちはさっさと用を終わらせて帰りたい。
「20年だ」
「は?」
「僕がここに来てからの年数だ。お前は覚えてないだろうけど」
真っ直ぐな瞳があたしを見詰める。その瞳は昔、スフィーの師匠をしていた正義感に溢れたあいつのようだった。




