第23話:愛の再教育!? 11人の嫁たちと挑む、地獄の溺愛フルコース
第23話:愛の再教育!? 11人の嫁たちと挑む、地獄の溺愛フルコース
修学旅行から帰宅した翌日。
僕は佐藤家のリビングで、ベッドに拘束されているかのような錯覚に陥っていた。
僕の周囲を、11人のメイドたちが完璧なフォーメーションで囲んでいる。
彼女たちの視線は、熱く、そして僕を「佐藤家の主人」としてではなく、「愛を注ぐべき対象」として見つめている。その目は、獲物を狙うハンターのように鋭く、同時に恋焦がれる乙女のように甘い。
部屋の隅に置かれた暖炉の火が、彼女たちの影を不気味に揺らし、まるで僕を飲み込もうとしているかのように見えた。
「ご主人様。……京都での『再検証』は、素晴らしい成果を上げましたわ。志保の報告によると、ご主人様の私への心拍数は、祠のシーンを再現した際に、あの陽葵の時を超えたそうですわ。やはり、ご主人様にとって一番の愛は、私なのですわね。……ふふ、その心拍数を、さらに加速させる『特別訓練』を、これから行いますわ」
結衣が紅茶を淹れながら、凛とした声で告げる。
その声は満足げだが、彼女の瞳はすでに「次の再検証」の計画で動いている。結衣がティーポットを持つ手は寸分の狂いもなく安定しており、その完璧さが逆に僕の恐怖を煽る。僕が飲む紅茶は、彼女の愛情の成分が濃縮されたかのように、異常なほどに香りが強かった。
「……っ、結衣。祠の再現って……。あれはただ、結衣が僕を抱きしめて、離さなかっただけじゃないか。心拍数が上がるのは当然だろ。窒息しかけたんだぞ。……ていうか、訓練はもういいよ。普通の青春を送らせてくれ……」
「あら、ご主人様。……心拍数が上がったのは、ご主人様が、私の愛を全身で感じてくださったからなのですわ。窒息などさせません。……貴方の呼吸も、私の呼吸も、すべて同期させるのです。それが愛の究極の形です。……さて、ご主人様。今日は、修学旅行の疲れを癒やすための、特別な『溺愛フルコース』をご用意いたしました。このフルコースを終えるまで、部屋から出ることは許されません」
結衣が指を鳴らすと、メイドたちが一斉に動き出した。
彼女たちの動きは、まるで一つの生命体のように完璧で、僕の逃げ道を物理的に、そして心理的に塞いでいく。
僕の青春は、彼女たちの熱い愛の中で、終わりのないサイクルを繰り返している。
まず運ばれてきたのは、莉奈が作った特製チョコレートフォンデュだった。
しかし、そのチョコレートは、ただのチョコではない。莉奈の情熱が限界まで注ぎ込まれた、血のような深紅のチョコレートだった。部屋中に、濃厚で、少し血の匂い(?)がするようなカカオの香りが広がる。
「健太様っ! 莉奈が、一粒一粒に『愛の呪文』をかけたチョコですっ! 食べると、健太様は莉奈しか見えなくなりますぅ! 莉奈だけの健太様になってくださいっ!」
莉奈がチョコを僕の口元に運ぶ。その手は少し震えており、彼女の純粋すぎる愛が僕の心臓を締め付ける。
彼女の目は、本気で僕を呪縛しようとしている。僕が拒絶すれば、彼女の心は壊れてしまうだろう。
「……っ、莉奈、呪文はまずいよ……。ていうか、そのチョコ、温度が熱すぎる! 舌を火傷しそうだ!」
「あら、ご主人様。……愛の温度は、熱ければ熱いほど良いのですわ。莉奈、次はもっと熱くしなさい。ご主人様の舌が私の色に染まるまで」
結衣が莉奈を応援する。僕は逃げ場がないことを悟った。
僕の口の中で、熱いチョコレートが広がり、僕の理性も同時に溶けていく。莉奈の愛が、僕の体の中に直接流れ込んでくるのを感じた。
次にやってきたのは、志保だった。
彼女は、手に怪しげな注射器(?)のようなものを持って近づいてくる。注射器の中には、青く光る液体が入っている。その液体は、心臓の鼓動に合わせて発光しているように見える。
「……。ご主人様、チョコレートフォンデュの摂取による血糖値の上昇が確認されました。……ここで、私の最新作『愛の栄養剤』を投与します。……これを飲めば、貴方は明日から、私の声しか聞こえなくなる……いえ、私が一番愛おしく感じるようになりますわ。……さあ、血管に直接注入しますわ」
志保が、理科の実験道具のような手つきで僕の腕を掴む。
彼女の瞳は、愛情ではなく、純粋な好奇心と独占欲に満ちている。
「志保さんっ! それ、絶対にダメですぅ! 健太様が青くなっちゃいますぅ! 陽葵が健太様を愛のハーブティーで癒やしますから、あっちに行ってくださいっ!」
陽葵が志保に飛びつき、注射器が床に落ちる。注射器から漏れた液体は、絨毯を溶かし始めた。……これ、飲むものじゃないだろ。絨毯から紫色の煙が出ている。
「……。陽葵、実験の邪魔をしないでください。……ご主人様、別の方法を考えます。……貴方の体温を、私の体温と同期させる実験です。佐藤家の主人として、私の実験に協力してくださいわ」
志保が僕の体に、冷たいセンサーのようなものを貼り付け始めた。
僕の青春は、彼女たちの科学実験の場と化していた。僕は、佐藤家の主人としてではなく、11人のメイドの愛の実験体として、この屋敷に存在している。
その後も、メイドたちは次々と僕を「溺愛フルコース」で攻め立てた。
マッサージという名の拘束、歌という名の愛の絶叫、そして最後は結衣による「愛の再教育」だった。
結衣は、僕の顔のすぐ近くまで顔を近づけ、その美しい指先で僕の唇をなぞる。
僕の唇が、彼女の冷たい指に触れるたび、僕の心臓が警鐘を鳴らす。
「ご主人様。……貴方の心は、まだ少しだけ、私たち以外のことを考えているようですわ。……その心を、完全に私の色に染め上げるまで、この教育は終わりませんわ。……ご主人様、貴方のすべては、私たちが決めるのです。それが佐藤家のルールなのですから」
結衣の言葉に、メイドたちは一斉に頷く。
僕は、自分の立ち位置が、「ランキング1位の青春ラブコメの主人公」から、「11人の愛の牢獄の囚人」に変わったことを確信した。
僕の青春は、彼女たちの熱い愛の中で、終わりのないサイクルを繰り返している。
僕の心臓は、結衣たちの愛の鼓動と完全に同期し、彼女たちなしでは生きられない体になっていた。
この溺愛の牢獄こそが、僕の生きる場所なのだ。僕は、彼女たちの愛の奴隷であり、同時に彼女たちの愛の王様なのだ。
第23話 完




