第20話:京都パニック! 11人のメイドと古都で愛の観光ツアー
第20話:京都パニック! 11人のメイドと古都で愛の観光ツアー
「……というわけで、佐藤健太の大学2年生、最大のイベント『修学旅行』の幕が上がります!」
僕は講義室で、幼なじみの美波に詰め寄られながら溜息をついていた。
大学主催の修学旅行。行き先は古都・京都。
しかし、僕の周りには、すでに防寒具ならぬ「防愛具」を身にまとった11人のメイドたちが、異様なオーラを放ちながら控えていた。
「ご主人様。……京都の素晴らしい景色、私たち11人で、余すところなくご案内いたしますわ。もちろん、観光ガイドブックなど不要です。私の脳内データに、すべてのルートが刻まれていますので」
結衣が凛として告げる。彼女の持つ鞄には、なぜか護身用のスタンガン(?)らしきものがチラリと見えている。
「ふふ、京都の歴史的建造物よりも、健太様の歴史を私が一番理解していますわ。……私の愛の歴史を、修学旅行中に証明してみせますわ」
志保が眼鏡を光らせる。彼女の持っている手帳には、「健太との接近行動記録」と書かれている。
「ちょっと! 修学旅行はメイドの仕事じゃないわよ! 健太は私が京都の歴史、じゃなくて! 青春の素晴らしさを教えてあげるんだから!」
美波がスキーウェアのようなコートを脱ぎ捨て、修学旅行用の服装に着替えながら主張する。しかし、彼女のバッグにはお守りが大量に入っており、それが何を守るものなのかは言うまでもない。
京都に到着して早々、僕たちは注目の的となった。
11人の絶世の美女を引き連れた大学生。
清水寺の舞台で、メイドたちは次々と「健太様と愛を誓うスポット」を見つけ出しては、僕を無理やりそこへ連れ込んだ。
「健太様ぁ~! この音羽の滝の水を、二人で一緒に飲みましょうっ! そうすれば、永遠に結ばれるって、莉奈ちゃんが言ってましたぁ!」
陽葵が僕の手を引き、滝の水を汲む柄杓へと顔を近づける。
彼女の豊かな胸が僕の腕に密着し、観光客の視線が突き刺さる。
「……っ、陽葵、これ、一杯しかないぞ!」
「ふふ、ご主人様。……間接キスなど、私たちの愛の前では些細なことですわ。……陽葵、終わったら次は私の番ですわ」
結衣が背後から冷徹な笑顔でプレッシャーをかける。
僕の青春は、観光ではなく、命がけの愛の争奪戦と化していた。
嵐山の竹林を歩いているときだった。
11人の美女が一斉に僕を見つめ、何やら密談をしている。
「……。健太様。この静寂の地で、私は貴方の全DNAを、京都の美しい竹林の土に埋める……いえ、記憶することを提案します」
志保の言葉に、僕の背筋が凍る。
「志保さんっ! それ、怖すぎますぅ!」
陽葵が志保を止めようとするが、メイドたちは僕を囲むようにして、竹林のさらに奥へと誘導した。
そこには、小さな祠があった。
「ご主人様。……ここには、愛の神様が祀られていると言われています。……私たちは今から、この神様に『佐藤健太の永遠の所有権』を祈願します」
結衣が祠の前に立ち、厳かに祈りを捧げ始めた。
10人のメイドもそれに続く。
僕は、自分の青春が、とんでもない方向へ進んでいることを悟った。
でも、不思議と嫌ではなかった。
11人の愛の重さが、僕の青春そのものになっていたからだ。
宿に入ると、部屋は全員大部屋だった。
ふすまを隔てた隣の部屋からは、他の大学生たちの「誰とどこに行こうかな」という青春真っ只中の会話が聞こえてくる。
「……あ、あの、みんな。夜は少し静かに……」
「ご主人様。……京都の夜は長いですわ。……私と、夜の京都を二人で散歩しませんか? 誰にも邪魔されない、静かな場所へ」
結衣の誘いは、もはや断れない命令だった。
「ちょ、ちょっと結衣さん! 健太を連れ回さないでよ! ……健太、私と一緒に温泉行こう!」
美波が僕の腕を引っ張る。
11人の美女たちが、僕をめぐって部屋の中で再び火花を散らす。
ランキング1位を維持するその情熱は、古都京都を揺るがすほどの熱量だった。
僕は、11人の愛の奴隷として、この激しい修学旅行を駆け抜けていく。
第20話 完




