第21話:嵐の修学旅行! 絶叫の夜の観光と、京都タワーの誓い
第21話:嵐の修学旅行! 絶叫の夜の観光と、京都タワーの誓い
京都の夜は更けても、佐藤健太の青春は眠らない。
メイドたちとの愛の観光ツアーで疲労困憊の僕をよそに、結衣は部屋のふすまを閉め、部屋の明かりを少し落とした。
ふすまの向こうの他の学生たちの騒ぎ声が、まるで遠い世界の出来事のように聞こえる。
「ご主人様。……京都の夜は、私たちの愛を深めるためにあるのです。……他の学生たちの騒音など、私たちの愛の囁きにはかき消されてしまいますわ」
結衣が膝をつき、僕の顔のすぐ近くまで顔を近づける。その瞳は、暗闇の中で妖しく輝いている。
「結衣、明日は朝から『伏見稲荷大社』に行く予定だぞ……。少しは寝ないと……」
「あら、ご主人様。……お体が疲れているなら、私が全身全霊で癒やして差し上げますわ。……陽葵、準備はいいかしら?」
「はいっ! 結衣姉さま! 陽葵の『特製・眠れる愛のハーブティー』ですぅ! これを飲めば、健太様は朝まで陽葵の夢しか見られませんっ!」
陽葵が、怪しげな紫色の液体が入ったティーカップを差し出した。……絶対に飲みたくない。
「……っ。陽葵、それはさすがに危険すぎるだろ! ……美波! 誰か止めてくれ!」
僕が助けを求めると、美波は修学旅行のしおりを熱心に読みながら、ボソボソと呟いていた。
「……えーっと、次は……健太と私だけのスポット……。ここだわ! 『京都タワー』! ここで告白すれば、絶対に成功するってネットに書いてあったの!」
美波は僕の危機には気づかず、自分の世界に入り込んでいた。
結衣の無理やりな誘導により、僕たちは夜の京都パニックに巻き込まれた。
向かった先は、美波が言っていた「京都タワー」。
展望台から見える夜景は絶景だったが、11人のメイドたちが僕を囲んでいるため、景色を堪能する余裕など全くない。
「健太様ぁ~! この夜景よりも、健太様の瞳の方がずっとずっと輝いてますぅ!」
陽葵が僕に抱きつき、展望台のガラス窓に押し付ける。
「……。陽葵、それは物理的な観点から不可能です。……それよりご主人様、このタワーの構造の強度は私のデータによると十分です。……ここで、貴方のすべての愛を私に捧げる誓いを……」
志保が、タワーの耐震強度について語りながら、僕に重い契約書のようなものを差し出す。
「ちょっと! 健太の愛は私に捧げるものなのよ! 志保さん、契約書とか怪しいもの出さないで!」
美波が志保と僕の間に割って入り、タワーの展望台は一触即発の事態となった。
「ご主人様。……この絶景をバックに、私たちの愛の誓いを立てましょう。……あ、誓いの言葉は私が考えましたの。500文字ほどございます」
結衣が冷徹な笑顔で、僕の逃げ道を完全に塞いだ。
11人の愛の重さが、夜景のきらめきをすべて塗りつぶしていく。
僕の青春は、絶叫と絶望、そして甘すぎる愛のパニックの中にあった。
夜遅く、宿に帰った僕たちは、ふたたび「修学旅行」の現実に戻った。
他の学生たちが、夜食のカップラーメンを食べながら笑い合っている。
「……健太。……あんた、本当に大丈夫? なんか、幽霊を見たみたいな顔してるわよ」
美波がカップラーメンを分け与えてくれた。
11人のメイドは僕を独占しようと必死だが、美波のこの瞬間だけは、僕にとっての「普通の青春」の安らぎだった。
「……ありがとう、美波。……やっぱり、普通の青春も少しだけ欲しいな」
「バカっ! 誰が普通の青春なんてさせるか! 健太は私のものなんだから!」
美波が突然、カップラーメンを口から吐き出し(嘘)、僕に強く抱きついた。
その勢いで、僕と美波は部屋の隅に転がり込んだ。
「あらあら、美波様。……ご主人様に、ラーメンの匂いを移そうとしていらっしゃるのですか? 非常に悪趣味ですわね」
結衣が冷ややかな視線を美波に向ける。
「な、なによ! 私たちは幼なじみなんだから、当然のスキンシップよ!」
ふたたび部屋の中で始まるメイドたちの愛のバトル。
僕は、自分の立ち位置が、「ランキング1位の青春ラブコメの主人公」であることを再確認した。
11人の嫁たちとの、終わりのない、熱い熱い愛の物語。
京都の夜が明けても、僕の心臓は、彼女たちの愛の鼓動と完全に同期していた。
この溺愛の牢獄こそが、僕の生きる場所なのだ。
第21話 完




