第17話:雪合戦は命がけ!? 絶叫の温泉バトルロイヤル
第17話:雪合戦は命がけ!? 絶叫の温泉バトルロイヤル
雪は止み、屋敷の庭は一面の白銀の世界へと変貌していた。
昨日までの「密室での溺愛」の余韻が冷めやらぬ中、リビングにはメイド長の結衣が凛として立っていた。
彼女のその姿は、まるで雪の女王のように冷徹で、かつ眩いほどに美しかった。
「ご主人様。……昨夜は暖炉の前で熱い時間を過ごしましたが、健康のためには外の空気に触れることも重要です。お体がなまってしまいますわ」
結衣の背後には、防寒具としてモコモコの白いコートを羽織ったメイドたちが、雪の中に飛び出す準備万端で待機している。
彼女たちの瞳は、雪よりも白く輝き、闘志に燃えていた。
「外って……この極寒の中に行くの? 結衣、僕は部屋で紅茶でも飲んでいたいんだけど……」
「はい。……本日は『佐藤家・冬の雪合戦大会』を開催いたします。……勝利したチームは、今夜の夕食後、ご主人様を30分間『独占』できる権利が与えられますわ。私の腕の中で、思う存分甘やかされる権利……魅力的でしょう?」
結衣の言葉に、メイドたちが一斉に瞳を輝かせ、闘志を剥き出しにした。
その場にいた10人のメイドたちが、一瞬にしてご主人様を巡るライバル同士と化した瞬間だった。
「負けられない闘いがここにある……。ご主人様、私の指揮下に入れば、必ず勝利をもたらしますわ。戦略的配置と、雪玉の物理的強度の計算は完璧です」
志保が眼鏡のレンズをキラリと光らせ、戦略図らしきバインダーを手にした。
彼女の目は、もはやメイドのそれではなく、軍師のそれだった。
「健太様ぁ~! 陽葵はご主人様と一緒に守備担当になりますっ! 健太様を守るためなら、陽葵、どんな弾でも体で受け止めますぅ! だから、終わったらたくさん褒めてくださいねっ!」
陽葵がコートの上からでもわかる豊かな胸を押し当ててくる。
彼女の愛は、雪景色を溶かすほどの熱を持って伝わってくる。
「ちょっと! なんであんたたちだけで話を進めてるのよ! 健太は私の幼なじみなんだから、私とチームを組むのが当然でしょ! 結衣さん、この勝負、私が勝って健太を完全に連れ戻すわよ!」
美波が、真っ赤なスキーウェアに身を包んで乱入してきた。
彼女の目は本気だ。健太をメイドたちに渡さないという執念が、雪景色の寒さを吹き飛ばすほどの熱気となって伝わってくる。
ルールはシンプル。
チームに分かれ、相手チームの全員に雪玉を当てるか、相手の陣地にある「佐藤家の旗」を奪えば勝ち。
庭には、メイドたちが徹夜で作ったという、要塞のような雪のバリケードが築かれていた。
「健太様、美波様。……ルールはご理解いただけましたか? 敵チームの『結衣姉さま』には、特に注意が必要ですっ。あの人、雪玉を投げる時、指先から青いオーラが出てるんですぅ!」
陽葵が僕の手を引き、雪のバリケードの裏へと隠れた。
美波は「行くわよ健太!」と僕の手を握りしめ、その熱さに驚いた。
「……ふふ、甘いですわね。陽葵。……私の目から逃れることは、誰にもできないのです」
バリエーション豊富な雪の壁の向こうから、結衣の冷徹な声が聞こえた。
結衣は、芸術的なまでに美しい、高密度の雪玉を手に持っていた。
彼女の動きは、雪を踏みしめる音すらさせないほど静かだった。
「ああっ! 結衣姉さま、速いですぅ! 健太様、伏せてくださいっ!」
陽葵が僕の上に覆いかぶさり、結衣が放った雪玉がバリケードを粉砕した。
雪玉はまるで砲弾のように壁を貫通した。
「……っ。結衣、本気すぎだろ! 殺す気か!」
「はい。……ご主人様を独占するためなら、手加減はいたしませんわ。私の手の中にある雪玉は、私そのもの。貴方への愛の重さでできているのです」
結衣が次々と雪玉を投げつけてくる。その精度はまさにスナイパーだった。
僕たちが移動する先々へ、寸分違わず雪玉が飛んでくる。
「健太! 今よ、私に続いて!! 志保さんに旗を奪わせないために、私が結衣さんを足止めするわ!」
美波が叫び、隙を見て結衣の陣地へと走り出した。
彼女は「健太を守る」という一心で、雪玉に怯むことなく前進する。
その姿はあまりにも無謀で、しかし美しかった。
「……。美波様の動きは予測不能です。……陽葵、右から回り込みます。私は左から結衣姉さまをサポートしますわ」
志保が冷静に指示を出し、陽葵と連携して美波を追い詰める。
志保の雪玉は、計算し尽くされた軌道で美波を狙い撃った。
「きゃああっ! 志保さん、卑怯よ!! それに陽葵、そこは滑るわよ!」
美波が雪の中に倒れ込み、メイドたちに雪玉で集中攻撃された。
その姿を見て、僕は心が痛むと同時に、彼女たちの熱すぎる愛に圧倒された。
雪合戦が終わる頃には、全員が雪まみれになり、寒さで震えていた。
美波は雪だるまのようになっていた。
「さあ、ご主人様。……闘いの後は、これですわね」
結衣が、勝利チーム(今回はメイド長のチーム)の独占権利を使わず、全員で別邸の温泉へ入ることを提案した。
それは、結衣の優しさか、それとも健太を温泉で誘惑するための罠か。
熱いお湯に浸かった瞬間、全員から幸せな吐息が漏れた。
温泉の湯気で、彼女たちの肌が美しく赤らんでいく。
「……。闘いの後の温泉は、筋肉の緊張を解き、ご主人様との心の距離をさらに縮めますわ。……健太様、肩が凝っていますね。私が流して差し上げますわ」
志保が僕の隣に座り、濡れて透けた髪をかき上げた。
温泉のお湯の中で、彼女の指先が僕の肩をなぞる。
「あはは……みんな、さっきまで本気で戦ってたのに、温泉に入ると仲良しだね。……美波、大丈夫か?」
「……当たり前でしょ。健太を巡る戦いは、公平でなきゃいけないんだから! ……あー、あったかい……」
美波が鼻を鳴らしながらも、僕のお湯に浸かった腕を抱きしめた。
彼女の熱さが、お湯の温度と混ざり合う。
「健太様ぁ、陽葵も、温泉の中で健太様と温め合いたいですぅ!」
陽葵が正面から抱きつくようにして、お湯の中に潜り込んできた。
温泉の浮力で彼女の肌が僕の体に密着する。
冷え切った後の熱い温泉。その心地よさと、メイドたちの熱すぎる独占欲が混ざり合い、僕の心と体は完全に溶けかけていた。
「……ご主人様。……冬の雪合戦は命がけでしたが、その後のこの時間は、まさに天国ですわね。……今夜は、このまま私の部屋へ……」
結衣が僕の背中に寄りかかり、その美しい指先で僕の胸元をなぞった。
ランキング1位の勢いはそのままに、物語はさらに激しく、甘く、そして僕を「重すぎる愛」の沼へと沈めていく。
屋敷の温泉は、今夜も彼女たちの愛で熱く燃え上がっていた。
第17話 完




