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未来日記

未来日記とは?

 自分だけの妄想ではないのかもしれないと思えた瞬間、胸の奥にわずかな安堵が灯った。けれど同時に、罪悪感から目を逸らさず、現実として理解しなければならない気がした。

 スマートフォンを手に取り、関連しそうな言葉をいくつも打ち込んでは画面を滑らせる。

 恋愛心理、依存、運命的な出会い。

 理性的な答えを探していたはずなのに、気づけば次々に表示される記事に導かれるようにリンクを辿っていく。

 ソファーに身を沈め、まどろみの中で指だけが機械的に画面を動かしている。


——魂の共鳴

——前世からの縁


「……ん?」


 指が止まった。


 (アセンション?)


 聞いたことのない単語だったが、どこか現実離れしているはずの言葉が並んでいるのに、不思議と拒絶感はなかった。

 むしろ、胸の奥に触れるものがある。

 理解できているわけではない。それでも画面を閉じることができない。

 次のリンクを開き、また次へ。時間の感覚が薄れていく。


『10月1日 今あなたはこれを見て、慌てふためいているでしょう』


 (えっ? 何? えっ、えっ、今日?)


 10月1日。


 それは今日。いや、この投稿が書かれたのは十年前なのか……まさしく、過去と現実が重なった瞬間だった。

まるで、私にあてて書かれたような文章だ。どうやら雪子という人物が、神からのメッセージを毎日書き留めたものらしい。

 数年前、彼女も突然神からのメッセージに気づき、同じ様に驚いて書き下ろし、慌てふためいたのだろう。

投稿は続けて、2日、3日とその後も続いている。


『我々はプレアデス星人です。今まで本当にありがとうございました。夢のような気持ちです』


 (何これ! 何? 何?)


 言葉にならない。

 好奇心に任せ、日にちを追っていく。それはまるでこれから私に起こる出来事の予言の日記のように、どれも今リアルに感じている感想そのもので、現実離れした現実に理解が追いつかない。


『最近、地球の波動が大きく変化し、カルマの浄化が起きています。この浄化の機会を与えてくれた命ある存在、自然、宇宙のあらゆるもの、何より、今いのちあるものとして、生きていることに、感謝することが、大きな波動の変化に対応できる、唯一の方法です』


 これまでと違う未来を想像出来ないのに、日記に書かれている未来の映像がリアルにまぶたに映し出される。


 (――もしこれが本当に訪れる未来だとしたら)

 胸の奥に、小さなざわめきが生まれる。知らなければ選べたはずの道が、すでに決められているようで、一歩進むごとに、見えた光景へ自分が近づいていく感覚に、息が浅くなる。

 期待と同じ場所から、恐れが芽吹いていく。未来を知るということは、それを受け入れる覚悟まで問われるということなのかもしれない。


 (怖い。もう未来なんて知らなくていい)


 以前ならこんな事は気にも止めず一歩歩けば忘れられたはずなのに、既に経験したように刻み込まれた記憶は忘れる事など出来ない。


 ふと頭に思い浮かぶメロディが気になり、諦めたように再び青く光るモニターを手にした。


『怖がらなくてもいいんだよ』

『一緒に頑張ろうね』


 歌詞ではない文字がモニターに浮かび上がる。

 

 (まただ! 神様に励まされている?)


 今はそんな言葉が余計に不安を煽る。

 

 (きっと気のせい。そうだ、動画でも見て気を紛らわそう)


 そう思って再生した動画も、チャンネルを変えるごとに表示されるのは、宇宙やスピリチュアルを語るものばかり。

 最近の検索履歴から選ばれているだけ――そう分かっているのに、どれも妙に心の奥をなぞってくる。


「やめて……」


 思わず目をそらす。けれど拒もうとするほど、思いもよらない場所から言葉は届き続けた。

 偶然のはずの断片が重なり合い、ひとつの意味を帯び始める。逃れようとしても、どこかで導かれている感覚が消えない。


 (やっぱり最近起きていた不可解な出来事は、ただの偶然なんかじゃない)


 点在していた出来事が線で結ばれ、避けようのない流れとして浮かび上がる。

 それを認めた瞬間、胸の奥に小さな震えが走った。

――これは、必然なのだと。



点在していた出来事が線で結ばれたとき。。。

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