05_神殿の東屋に向かえ_後編
暫く神殿内を歩くと見慣れぬ建物が高台にあることに気付いた。
「あれ?なんだろう?」
ムードの声に二人はそちらを向く。
暫くその場で見つめてジーンが言った。
「天文台かな。」
「天文台?」
「うん、向こうで写真を見たことがある。近寄っても良い?」
「ああ、良いぞ。行ってみよう。
で、天文台って何だ?」
「望遠鏡を使って空の星を観察する施設。」
「星の観察?望遠鏡を使って?」
ハーレンでも野外で活動することの多い何でも屋達はよく空を見る。
太陽や星の位置で居場所を確認するためだ。
農家や村の住人も空を見る。
こちらは天候を予測するのが目的だ。
ハーレンの住人は目が良いのでわざわざその為に望遠鏡を使ったりしない。
「何のために?」
と言うレノンの問いにジーンは佳澄の世界で聞いた話を伝える。
「星の動きで未来を占うのが事の起こりだったみたい。」
「星を見て分かるものなのか?」
「大昔のある国では大河の氾濫時期を予測したりするのに使っていたそうだけど。
後は、神話とか色々あって、今は宇宙を調べるのに使っている。」
大地で暮らすムード達には今一つピンとこないようなのでジーンは聞いた話を色々語る。
そうこうする内に天文台に着いた。
「そういや、昔宇宙を渡る船がある世界から来た来訪者も居たな。」
ムード達には宇宙は向こうのアニメなどの世界で自分達には関りがあるとは思っていない。
「これって昼でも使えるものなのか?」
「単に分かりづらいだけで星はあるから見えるんじゃないかな。」
そう言ってレンズを覗き込むとうっすらと星が見える。
「なるほど、これは夜にもう一度来るべきだな。」
「そうだね。昨日気が付けば良かったね。」
東屋を見つけたら先に進むつもりがもう一泊ここで過ごすことになった。
東屋らしき場所も見つけ、周囲を調べ終えると一度仮眠を取る。
夕方近くなって3人は再び天文台にやってきた。
遮るものが何もない満天の夜空にため息をつく。
「これだけ多くの星が見えるのって初めてかも。」
普段見る夜空は森に囲まれ、光度の高い星しか見えない。
「向こうでも光害のせいで人里離れた高台に天文台が作られるって聞いたけど・・・」
「光害?」
「光が多いと暗い星が見えなくなるって話。ここは明かりも無いし遮るものも無いから。」
そう言ってジーンは夜空を見る。
そこには溢れんばかりの星々の瞬きが彩っていた。
星空を堪能した3人は翌日、目星をつけた場所に向かった。
ついでに十分データの集まった計測器も回収していく。
「ここの濃度、あの古城より高い数値を維持しているね。」
「特に大きな乱れも無しか。」
計測結果を読み取りながら会話を進める。
「フレイの偵察でヘルドックとかのモンスター化した生き物の存在は確認できていない。」
「やはり、この数値とモンスター化には直接の関係は無いと思っていいね。」
バーンや古城、ここはどれも計測結果を見ると高い数値を示しているが凶暴なモンスター達は確認できない。
害のあるモンスター達はここよりもずっと数値の低い場所で発生している。
最近ではこの値より100分の1以下のレナ・カサルで野生生物のモンスター化が確認されていた。
ハーレンに比べると小さな個体が多いので被害はそれ程大きくなっていないのが救いだった。
「この数値はモンスター化というよりモンスター化する生物の大きさや賢さに影響を与えていると思った方が良さそうだね。」
レノンの言葉に2人は頷いた。
証拠に最近のハーレン大陸では新たにモンスター化した個体は殆ど確認されていない。
「これから畜産業をする人には育てた家畜の心配をしなくてよくなるから朗報かな。」
「そうだね。モンスター化は魔王が原因なのかなあ?」
「でもそうなると魔王や魔人の活動が殆ど記録されていないエマルドでの発生が説明が付かないよ。」
「そうだな。」
目星をつけた場所、12本の柱が囲む空間の場所に着いた。
柱には神代文字で太陽、月、風、大地とアナ・ハルナの八柱、12柱の神々のシンボルが刻まれている。
その中心には強い力の揺らぎが感じ取れた。
事前に柱の近くに仕掛けた計測器の情報を読み取る。
「太陽、10500,水12000、鳳凰11500・・・」
全ての柱近くの数値を読み取って3人は顔を見合わせた。
「てっきり神殿の中心の柱が起点だと思ったけど・・・」
「ズレてるね・・・」
地図情報に各計測値を重ねると神殿の柱周辺が一番高い値を示している。
が、もう一か所高い値を示す場所があった。
天文台だ。
「うーーん、水と鳳凰の間を抜ければ良いかと思っていたけど。」
「龍と月から獅子と太陽に抜けるのが良さそうだね。」
周辺の様子を確認し、忘れもの、設置した計測器は全て回収済みなのことを確認するとムードは上空のフレイを呼んだ。
「行くか。」
フレイが肩に止まるのを確認すると龍と月の柱の間から中心に向かって進む。
力の揺らぎのある場所に近付くと、3人の姿は神殿から消えた。
閲覧、有難うございます。
前に伊豆大島のホテルで降るような星空を見たことがあります。
あれを思い出すと普段如何に星が見えていないのか・・・がよく分かる。
ここで計測しているのはリアナの濃度です。




