仕込みと餌とネズミ
グラフィットが部下の諜報部隊を使って調査した結果、グランドが手を染めた犯罪行為はかなり根深いことが判明した。
面白そうだからと設立したグラフィット専属の諜報部隊を使って調べた調査結果をグラフィットは必要な部分にモザイクをかけながら話した。
何か隠されているとグリエルは薄々気づいているが何か理由があると勝手に解釈していた。
「裏社会のドンか、それに薬物の密売、武器の密輸入と輸出、殺人、他国に違法に国内の情報を漏らしたり、違法な暴行に拷問尋問、質問に答えなければ指を切り落とすと言う悪行、たとえ吐いても、息の根止めて始末する」
自分の息子であるグランドが行っている目を背けたくなるような悪行の数々にグリエルは額を手で覆った。
「思ったより酷いな、その全てが自分の手で行われてるわけではなく、部下たちが勝手にしている風を装ってる、ってわけか」
「あぁそう言う感じだ、どの線を追っても、グランドには辿り着かなかった。」
「ならなんで関わってるってわかるんだ?」
「金は流れてる。密売組織の連中が、ある場所に建物建てて、そこでグランドと金の引渡ししているようだ
例えばAの地点に建物Aがあって、隣に立つBの建物があるとしよう、まだ内部の様子は掴めてないが、壁をぶち抜いてあるか、地下掘って道作ってる様子だな。
グランドはAから建物の地下に入り、その地下道を通りBの建物に向かってそこで金を受け渡して、帰る。アラエル心当たりあるだろ、毎月10、20、30日のひと月に3回午前9時ごろに屋敷を出て11時ごろに帰って来てる」
グラフィットの問い詰めるような口調にアラエルは困惑したような様子で答える。
「えっ? あれは、確か仕入れって」
「なんの仕入れだ? 中身を見たことは?」
いつになく真剣な眼差しにアラエルは恐怖からか思わず背中を仰け反らせた。
「絶対に見せようととはしなかった。俺が馬車に近づこうとすると取り巻きの貴族のガキたちが近づくのを阻止して来た」
「報告通りだな」
「報告通り?」
グラフィットが何にも考えずに漏らした一言に今度はグリエルが反応した。
セバスも知らない内通者がオズワルド城に存在する。
セバスは机を叩き、グラフィットの胸倉を掴みにかかる。
「あぁ、うちの者をグリエルのところにメイドとして仕込ませた」
何も悪いことはしてないと言った様子でグラフィットが言い放つとグリエルは、こいつはダメだと呟いて胸倉を掴んでいた手を離し力が抜けたように椅子に座った。
「ナナージャか、あいつ、やっぱり怪しいと思ってた」
「なんだ知ってるのか? 後でお仕置きしないとな」
これ以上は双方、得にならないと言った視線を交わすとお互いほぼ同じタイミングで頷きアラエルを置き去りにしたまま話を進めようとするが、それを止める声が出た。
「ナナージャが何かしてるの?」
「大人の会話に口を突っ込むではない」
だがすぐにグラフィットが口止めした。「はぁ……」下手な口止めにため息しか出ないグリエルであったが、あまり突かれると面倒だからと話の先を促した。
「うん、そうだな。ある者からの報告によると」
「ナナージャでしょ」
「ある者からの報告によると」
「だからナナージャでしょ」
「ある者からの報告によると」
「さっきから言ってるじゃんナナージャでしょ」
「ある者からの報告によると」
……………………………
「一応もう一回まとめるぞ、お前の親父は裏でいろんな事に手を染めてたんだ、まぁその全ては自らの手で犯したものではなく部下たちを利用してたみたいだがな。でその事だ。グリエル、一つ謝らないといけないことがある、だから先に謝っておく、すまんな」
グラフィットは珍しく素直に頭を下げるが、例の如く信用されるはずもなく、グリエルは問いかける。
「何を謝るんだ? 自分の口から言ってみろ」
グラフィットが何について謝罪したのか薄々気づいているグリエルであるがここでグラフィットを問い詰める事なく自分の口から『気にしない』など口が裂けても言えない。現にグリエルの顔は目も当てられないほどに怒りが滲み出ている。
「グランド・オズワルドを国家反逆罪で指名手配した。
我々は直轄近衛兵をグリエル悪いが調査の為にオズワルド城へ派遣した。」
グラフィットはいつもの飄々とした口調と打って変わり国王として有無を言わせるような口調で一方的に宣言した。
「すまないな、丁度タイミングが良かったんだ、グリエル。グリエルが登城すると言う報告を部下から受けた時にこの作戦を思いついた。もし2人が城にいるときに捜査を行ったらお前たちも処罰しないといけなくなる」
グラフィットはカタカタと靴を鳴らしながら窓の外を見ながら「俗に言う共犯だ、だからお前たち2人をグランドと引き剥がす必要があった」それを目を瞑りながら聞いていたグリエルはふっと息を吐いた。
「もし俺たちがあの城に居たらお前は俺たちも捕まえる気だったのか?」
グリエルは一言一言、言葉を選ぶように、ゆっくりと発言した。それに対してグラフィットはどこまで話そうかと少し間を取り、決断した。
「……抵抗するなら捕まえていた。だがもしそうなっていればオズワルド領を管理する者がいなくなる、それは国防上由々しき問題だ。なんとしてもそれは避けたかった。我々はこの事件の主犯はグランドだと知っていたが国民は知らない、親の功は子供の功、親の悪は子供の悪だ。
オズワルド領内で情報を集めた結果、幸いな事にアラエルへ対する領民の感情としては親しいものがあった。よく街で買い食いして自分でも知らぬ間に株を上げてたみたいだな」
グラフィットが話終わる前に笑い声を堪えきれなくなったグリエルは堰が切れたように笑い声が溢れる。
「あはは! あんな馬鹿な行動が結果的には最善の行動を選んでいたとはな、だがもしアラエルの心象も悪ければどうなっていたんだ?」
「もちろんアラエルも捕まっていただろ。そして連座制でも適用して同じようにポンッと飛んでいただろうな」
グラフィットは自分の首に手を当て切るような真似をして見せる。つまり、アラエルも死んでいたと言う事だろう。
「え?」
置いてきぼりされたアラエルの間の抜けた声が残された。
自分の首が飛ぶなど、ここ10分ほどでアラエルの脳内で処理しようとした情報はアラエル脳内のキャパシティを大きくオーバーしたようだ。
大人たちはそれに気づいているが、説明してもどの道アラエルが理解に苦しむ事を理解しているせいか誰もアラエルに説明しようとはしなかった。
「俺の首が飛ぶ? 俺の普段の行動が自らの身を救ってた? 誰か説明してくれない?」
「アラエル様は深く考えなくて結構です」
「ガキは大人の会話に口を突っ込むではない」
グリエルはオズワルド家で執事として勤務しているのだから。セバスはオズワルド城のことはだいたい把握している。そもそもオズワルド城はセバスの所有だったからこそより立場がややこしいのだが。少し纏めよう
アラエルの執事ゼバスは今話題に登っているグランドの父親である。つまりアラエルの祖父に当たる人物で、グリエルは約10年ほど前グランドに殺されているがなんらの理由によって命は助かる。
グランドはグリエルの死因について辺境の地で事故に遭ったとアラエルは説明しグランドはオズワルド領を引き継ぐ事となりその後違法行為にブレーキが効かなくなったとグラフィットは説明した。
その後アラエルの先代執事が引退したことによって、先代執事の後継者としてグリエルはセバスと名前を変えてオズワルド家で執事として働くこととなった。
だが不思議な事にグランドはセバスがグリエルだと気づいていない。
一部の古参の執事やメイドたちはセバスの正体に気づいているが顔に出さないように勤務している。時より、隠し部屋と呼ばれるスペースで密談をしている。




