グランド・オズワルド
オズワルド城内、グランドの自室の奥の贅沢部屋。
この部屋の存在を知るものはメイド部隊や執事達を含め1人もいないとされている。
その隠し部屋にグルースター王国国王 グラフィット直属の近衛第三部隊がグランドの悪事の証拠となる証拠品の押収の為、足を踏み込み回収作業をいざ、始めようと動き出すとこの城の家主であるグランド・オズワルドが徹底的に邪魔しようと怒鳴り声を上げ、証拠品を回収しようしている捜査員を払いのけ危害を加えようとしている。
「それに触れるな! それはお前らの給料じゃ買えない額だ! その薄汚い手を引っ込めろ! おい! そっちは土足で踏み入れるな高級品だ! お前ら如きに弁償できる品物じゃねぇぞ!」
目に付いた捜査員一人一人に怒鳴りまくり、捜査を妨害しているグランドに声をかける者がいた。
「グランド殿、少しこちらへ」
捜査員達の中でも一際、銀色に鈍く光る甲冑を着込んだ捜査員が後ろから声をかけると、グランドはすぐさま振り返り、その捜査員の胸倉を掴み上げるとそう甲冑からミシミシと金属が擦れる音が聞こえる。
「誰だ! 誰の権限でこんな事をしている、答えろッ!!」
「何をする! その手を離せ!」
「やめろ」
剣を抜き、今にも斬りかかろうとする部下達をその捜査員は左手をゆっくりと上げて宥めた。その捜査員の表情はグランドの怒鳴り声に怯える事なく、平常心を貫いている。あくまでもこれは仕事だと言うように。
「グランド殿、暴力はお控え頂きたい。我々は捜査に来ているだけです。何も証拠があれば捕まえることは致しません。どうかこの手を離してください」
「誰の命令でこんなことをしてる! 違法捜査だ! 人の屋敷から早く出て行け!」
表情を一切変える事なく淡々と説明する捜査官をグランドは怒りに体を任せ、壁に向かって思いっきり投げつける。
投げつけられた衝撃で白い壁が少し凹む、壁に沈んだ捜査官は何も感じないのか、表情を変えず、めり込んだ壁から出てくると、肩に付着した壁の破片をパンパンと手で叩くようにして払い落とす。
「グランド・オズワルドで間違いないな」
「何がだ! 答えろ、お前ら誰だ!」
グランドの名前を確かめようとする捜査員を無視して、声を荒上げながらズカズカと捜査官との距離を詰める。
叩きつける足音のせいか台の上に置かれた花瓶がカタカタと音を立てる。
グランドと捜査官の距離が3mほどまで近づくとグランドの目の前には部下達の2本の剣がクロスするように構えられた。あと、20センチほど近づけば、グランドの身体はX字に切れていたと思われる。
「それ以上近づくようでしたら、血が流れますが、いかがなさいますか?」
「お前は誰だと聞いてるんだ! 答えろ!」
今はまだ理性は多少保っている様子だが、グランドは顔面を紅潮させ、目の前の剣にを掴もうとしようとしているのか、利き腕ではない方の左手がゆっくりと剣に近づく。
別に剣を掴まれようとさほど関係のない捜査官だが、容疑者であるグランドに自殺されるのを嫌がったのか、少し、考えると自分の名前をゆっくりとわかりやすく名乗った。
「私は国王専属第三近衛隊 隊長 オクラスト・シュリガーだ」
国王専属近衛隊 グラフィットには四つの専属近衛隊が存在する。
第一近衛隊 主に国王自身が危険地帯へ出向くときに同行する、いわば護衛と言ったところである。
腕っぷしは近衛隊の中で一番を誇る武闘派集団として認識されている。
第二近衛隊 主に国王の身辺警護を任されている部隊である。国王が王宮にいるときは、第二近衛隊が国王の護衛を務める。王城内でグラフィットのトイレに同行したのも第二近衛隊である。第二近衛隊は必要とあれば第一近衛隊と共同で危険地帯に向かう場合もある。
そして 第三近衛隊 主に不正調査を行う捜査官としても意味合いが強い近衛隊である。ちゃんとした貴族も数多くいるが、時より貴族という名称を履き違え、グランドのように悪事に手を染める犯罪者を刈り取るのがこの第三近衛隊の役割である。
一つ間違えては行けないことは、第三近衛隊の対象は貴族だけではなく、裏社会にも手を伸ばす時がある。普段は裏社会に対しては無関係を貫いているが、裏社会の行動が表社会に影響を及ぼしていると判断されれば、仕込んでいる仲間たちがいつでも動ける体制になっている。
そして第四近衛隊 第四近衛隊は表に出ることは一切なく、
名目上は4と言う数字は死を連想させてしまうために欠番扱いにされていると、国民は思っているが実際は違う。
4と言う数字は死を連想させると言ったが、ある意味では国に危害を与える者は4つまり死まで追い詰めると言う意味で使われている。
極秘にされている第四近衛隊の仕事は他国の情報を集める間者が主な仕事である。グラフィット王国は他国に対して数多くの間者を潜り込ませている。
その数は全世界で2000を超えるとされているが国王グラフィットでさえ把握しておらず、その全貌を把握しているのは第四近衛隊の上層部のみと考えられる。間者達は商人として移動しながら情報を仕入れたり、街の飲食店を経営しながら、情報を流したり、農家として野菜を育てながら、情報を集めたりしている。そしてその多くは家庭を持ち家族にも内緒で間者としての仕事を全うしている。
そして全近衛隊は軍とは独立して行動ができる権限を持つ。
だがしかし国王、つまりグラフィットが必要であると判断すれば、軍の一部を近衛隊に含めたり、近衛隊の一部を訓練目的で軍に送り込むことも可能である。
「そしてグランド・オズワルドお前には国家反逆罪の容疑が掛かっている、拘束させてもらう」
隊長オクラスト落ち着いた声でそう言うと既に後ろで構えていた部下の1人がグランドの腕をロープで拘束しもう1人の部下が足をロープを使い引き倒し、床に押し付ける。
「離せ! 俺はグランド・オズワルドだ! お前らの暴挙は許さない! 俺には国王が付いてる! その意味がわかるか!」
実際には国王がバックにいるはずもないがグランドは近衛隊に脅しをかけた。がしかしグランドは先ほどの近衛隊長の話を完全に忘れているようだ『私は国王専属第三近衛隊隊長オクラスト・シュリガー』とちゃんと発言していた。がしかし怒鳴りすぎで完全に記憶から消えているようだ。そしてグランドが脅しているのは国王専属の近衛隊である。いつもなら国王の名前を出せば勝手に跪いて、金を持ってきてくれるが脅してる相手が悪すぎる。逆に国王の名前を出したことで罪が追加された。
「キャシー、あれを持ってきてくれ」
「わかりました」
オクラストの副官キャシーはめんどくさそうに、自分の部下に預けた書類を受け取ると、オクラストがよく見えるように広げて、わざとらしく声に出して読み上げた。ここまで明らかな理由があるがグランドは以前としてその態度を崩す気配はない。
「さて、グランド・オズワルド この名前に間違いはないな」
「答える必要などないッ!」
床に押し付けられても威勢の良いオズワルドは芋虫のように跳ねる。その衝撃で拘束していて捜査員達が振り落とされそうになるがどうにか耐えた。
「まぁ良い、答えろって言って答えるバカはいないから。お前をグランド・オズワルドと認める。
グランド・オズワルド国家反逆罪で逮捕する、それと詐欺と殺人、違法取引、薬物密売、嘱託殺人、暴行、監禁そして、私への暴行の容疑で連行する。連れて行け!」
オクラストが部下達にそう命じると外から担架が搬入され、グランドの脇に置かれると縛られたグランドがゴロッと転がされるようにして担架に乗せられ再度担架にぐるぐる巻きなされ部下達の手によって外で待たせている輸送用の馬車へ乗せるために連行されていった。
「離せ!」
今度こそ動けないようにされたグランドは逃げようと体を捩るが屈強な男4人かがりで固定された体は動かない。
「ナナージャ‼︎」
連行される廊下でグランドはこの城のメイドであるナナージャの姿を見つけると彼女の名前を叫んだ。
彼女の姿を見た瞬間何かに合点が言った様子だ。
「お帰り、お待ちしております」
グランドとすれ違う瞬間、いつものように頭を下げた。
頭を上げたナナージャはグランドの私室へ向かい、その奥の隠し部屋に慣れたように入って行った。
「久しぶりだな。ナナージャ」
近衛隊隊長 オクラストはナナージャの姿を見つけると近づいて声をかけた。
「お久しぶりです隊長」




