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悪徳領主になるまでの物語  作者: 雄太
悪徳領主、街へ入る。
21/29

木彫りのの自画像

 

 言葉にすればたった10分程度の時しか経っていないような感覚だが、セバスの告白を聞いた俺は……そのたった10分ほどの時間が何時間も経っているように感じた。


セバスは俺の死んだ祖父グリエル・オズワルド……

グリエル・オズワルドはこの10年、お爺ちゃんのように接っしてくれたセバスチャン


 父上はセバスチャンを殺した……

 父上は自分の父上を殺した………


 ……………

 ……………

 ……………


 くるくるくるくるくるくる


 俺の頭の中ではよくわからないパネルがくるくる回っている。とそのパネルが突如として粉々に砕けた。


「気持ちはわかります。私も自分の息子に殺されかけましたから」


 気持ちはわかる?……普通なら「俺の気持ちなんて!」って叫んでいる場面だと思うが……不思議とそんな言葉は出て来なかった。


 それどころか変な共感さえ感じた。


「セバス……いえ、祖父様」

「やめてください……セバスのままにしてください。私はもうセバスです、グリエルは死にました」


 突然、敬語で話し始めたアラエルにセバスはむず痒そうにしていた。


「ふふっふふふ」


 俺の口からは何故かわからないが笑いが漏れた。


「大丈夫ですか? アラエル様」

「いや、なんでもない。死んだと思っていた祖父様が蘇って」


目の前にちゃんと足が付いている祖父が立っている。それも俺の執事として名前を変え、俺の目の前にこうして生きている。それが何故か不思議でたまらない。


「何か、少し違うような気がしますね」


セバスとしてはグリエルは死んだと言うのは言葉の綾と言う感じで言っていたのであろう、だから蘇ったなんて言い方は想定外の反応なのかもしれない。


「自分で言ったじゃん、グリエルは死んだって」

「そうですね」

「死んだと思ってた祖父様はずっと、そばにいて、俺を見守ってくれた……」


こうして目の前にいる、だが目の前にいるのは祖父様で無くセバス。


「それが私の仕事ですので。今の私の仕事はアラエル様の執事です。これからもお仕えさせていただきます」

「あぁ、頼むセバス。お前の命尽きるまで俺に仕えてくれ、これは命令じゃない、お願いだ」


むず痒い恥ずかしい一言を俺は堂々と発し、セバスは膝をつき頭を下げた。


「はっ! この命尽きるまでアラエル様にお仕えいたします」


感動の演説ありがとうセバス。でもまだ終わってないよ……


「で、いい話でまとめ切ったところ悪いんだけど、一体何があったの?」


 大まかな流れ自体はセバスの説明を聞いてなんとなくだが、分かったような気はするがそれでも疑問が尽きることはない。


 そもそもなんで祖父様は父上に殺されかけたのか?

 何故今までこんなに近くで潜伏していてのか?

 父上は裏で何をしているのか?

 セバスの諜報部隊との関係性


 わずかな時だけでこんなに疑問が浮かんでくる、もっと時間が経てばもっともっと出てくるだろう。


「長くなりますが、よろしいですか?」

「どのぐらい?」

「日付が変わる前には終わるでしょう」


 セバスの一言を聞いた俺はすぐさま時計を探した。

 視線を巡らせると棚の上にポツンと置かれた木製の時計あった。その時計が示している時刻は22時30分ぐらい。

 約1時間半……そのぐらいならいいかと思ってしまう自分がいた。それは無意識のうちに言葉になっていた。


「まぁいいや」


 無意識に呟いた一言にセバスが目を少し開き反応した。

 いつものセバスなら本心としては驚いているが表情に出さない事が多いのに、珍しいものが見られた。


「珍しい、てっきり、嫌だとおっしゃられると思っていました。申し訳ありません」


「謝んなくていいよ、実際、嫌だったし、でもあそこまで匂わされて逃げられるほうがもっと嫌だからね、」


 俺がそういうとセバスは少し笑った。


「セバスはもっと感情出したほうがいいよ」

「かしこまりました」


 いつもの執事モードに戻ってしまった。

 言ったそばから……ま、セバスだしいいか。


 そんなことを考えていると変な空気が流れ始めた、ふとセバスを見ると先ほどまでのおっとりとした目からキリッとした本気の目を俺に向けている。


「では、アラエル様が1番気になっているご様子でした、父上グランドの話をしましょう」 


 そんなに表情に出てたかな?。


「いきなりそれ突っ込む?」

「ええ、いきなりだからいいのです」


 嫌なことは後回しにせず、一番最初に行う事が肝心です。後回しするとどんどん嫌だと言う感情が増幅して、より嫌になります。なのでアラエル様が苦手としている自己紹介なども一番最初にすることをオオスメしますよ、ご自身で線を引くのですーーセバスがつらつらと喋るせいで止めるタイミングを失ったアラエルはここぞと言うタイミングで止めに入った。


「で、そんな表情に出てたの?」


 セバスは長々と発言していた気はしていないのか、首を少し傾げたが、すぐにいつも通りに戻った。そんなセバスをよそに俺は自然と自分の頬を触っていたが、表情には出ていないと思う。まぁ、自分じゃよくわかんないけど、だけどセバスはそんな俺の表情の何かに気づいたようだ。


「いえ、表情には出ていません。私には表情で人の心を読むなんて能力は持ち合わせておりませんので」


 だろうね、怪しいと思った。


「え? じゃあなんで?」

「ご自身の父上の事ですよ? 気にならない息子がいると思いますか?」


 いないね、と言いたいけど……


「……まぁ、いないね、セバスは?」

「私も気になっていますが立場上あまり近寄れませんので、そこら辺はグランドの担当メイド ナナージャに情報を流してもらってますよ」


 シシリーじゃないんだ意外。あのセバスならシシリーを使い潰してそうな気がするけど。

 今度から表情に出ていたのかセバスひ言い訳するように少し早口で言った。


「近寄ってバレたら本末転倒転倒なので、今の所、実質アラエル様専属執事として雇われているだけです」

「初耳、てっきり父上が俺には執事なんて1人でいいとか言ってこうなってるって思ってた」


 うん、あんなやつ執事なんてつけなくたい!!とか言ってガラスカップおもっきり叩きつかそうだと思ったけど、違うんだ


「それもあながち間違いではありませんね、あまりいい顔はされませんでしたので、私の前の執事ラウルが引退するときに私を紹介してもらい、今私がここにいるわけですから」


 ゼバスは似たようなものですねと続けた。

 そのセバスの口調は父上の酷い態度は気にしていないような物言いだった


「いちいち気にしているようでしたら執事という仕事は治りませんよ、特に逃げ出すアラエル様をいちいち叱っていたらすぐ血圧が上がり暇を取ることになりますので」


 俺の考えている事がわかったのかセバスは補足するように付け加えたが俺は逃げ出してない。散歩だ。散歩、またはランニングとかジョッギングとか、運動、日課、課題、とか色々な名前を付けて逃げ……ではない。


「そういえば、ラウルは今どこで何してるの?」

「さぁ?」


 露骨に話を変えられたセバスは諦めたように肩をすくめた。本当にラウルの行方は知らないようだ。珍しい。セバスなら尻の毛の数まで把握してそうだけど、まさかね。ありえないよね、知ってたら怖い。俺だって知らないのに。逆に知ってる人なんているか? いないな。うん。いないと思いたい。居てもらった困る。


「……さぁ?」


 俺は怪訝そうな表情を浮かべた。なんで知らないの? 前任者でしょ、たまにあるんだよね、こういうルーズなところが


「さぁ?」


 俺のさぁ?をセバスは首を縦に振り、肯定した。だがそこ後に続く言葉があった。


「先月、私の誕生日に木彫りの自画像を持ってきましたね、それきり見ていませんね」

「……大丈夫、何も言わないから」



 木彫りの自画像……熊の方がまだ……有用性、あると思う。それにしても木彫りの自画像……ね、もらった時のセバスの表情が手に取るようにわかる。すっごい嫌そうな顔したんだろうな、嫌でもセバスはそういうの隠すの上手いしな、気になるけど聞いたら絶対に痛い目に遭いそうだからやめておこう。


「そう言ってもらえるとありがたいです」


 今、その自画像がどこにあるのか気になるところだが……首を突っ込んではいけないとよくわからない第六感と言われるものが警告を出していた。


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