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悪徳領主になるまでの物語  作者: 雄太
悪徳領主、街へ入る。
20/29

真っ暗闇にライト一つ3

 

「で話戻すようで悪いけど、父上は……裏で何してるの?」


 俺の問い詰めるよう問いかけにセバスはゆっくりと窓に近づき、ガラスの外の満月を見つめ、目を瞑った。


「…………」

「セバス……言えないならいいよ」


 無理に問いただす気はないが……。ここで聞かないと後悔するような気がする。


「いえ、そうではなく……何から話したらいいものなのか、少し考えておりました。」


 俺はセバスが話し出すのをただ黙って待っていた。

 月明かりが照らす森ではフクロウがホーオーホーオーククッルと鳴いている。

 セバスが昔、言っていたフクロウがこう鳴く時は子育てしているメスに狩りをしてきたオスが餌を今から持って行くと言っているって。



 無音の時間が流れているとセバスがフーと息を吐いて、窓から離れた。



「……………では、古い話からしましょう……」


 セバスはそういう時俺の前のソファに座り込んだ。

 その顔は諦めたように清々しい表情で、その両肩は何かの重さが消えたのか軽そうだった。


「先代領主はご存じですか?」

「知ってる。まだ俺が10歳の頃、領内の視察の為に馬車で移動してた時に盗賊に襲われて死んだって父上が言ってたよ」


 そう、俺の祖父である先代領主グリエルは視察途中で盗賊に襲われて、護衛兵20人と共に死んだと父上は言っていた。


 10歳の頃だから記憶が曖昧だけど俺は何回も祖父の執務室に出入りしてイタズラをしていた。


「では先代領主グリエルの遺体は発見されなかったことについては?」


 思わず俺はテーブルを叩きつけ立ち上がる。そんな事は今まで聞いたことなどない。遺体が見つからなかった? なんの冗談? 俺は祖父様の墓………


「え⁉︎ どう言う事? 父上からは遺体は無惨な状態で発見されて、腐敗しこの城に持って帰って来れないからって現地で埋葬したって……」


『アラエルよ、祖父様の遺体は持って帰れない』

『な、なんで!』


 祖父様が盗賊に襲われて死んだという情報が早馬によってもたらされた直後、父上は俺に向かってそう淡々と言った。

 俺は父上の胸倉を掴むかというほどの勢いで手を伸ばしたが、父上に掴まれた。


『遺体の損壊が激しい、それに今は夏だ、ただでさえ腐りやすい時期なのだ。わかるだろ、祖父様は西の海岸線付近で盗賊に襲われた、早馬がこの城にくるまでにで既に3日かかってる、すでに3日立っているのだ、遺体を持ってくるには早馬での返信を含め1週間はどうしてもかかる。』

『で、でも!』


 掴まれた手を引き剥がそうとするが父上の握力には勝てない。それどころか俺を掴む握力がより強くなる。


『1週間あれば遺体にはウジ虫が湧き出すだろう、それに今から早馬で駆けたところで虫が出ていることは間違いない。だから先ほど早馬を出しておいた、現地で埋葬することにした』

『そんな……』


 手首にかかっていた握力が突如としてなくなり、俺は地面に崩れるようにして座り込んだ。頬には涙が滝のように溢れ、流れ出す。涙はすぐに床に落ちカーペットに吸収された。


『蛆虫の湧いた遺体を街中を通らせるわけにはいかない。下手をすれば疫病の蔓延につながるかもしれない。私だって、祖父様の遺体はできることなら……この城で眠らせてやりたい……だが、時間が足りないんだ、ウジ虫が湧いて喜ぶと思うか?』


 思わない、だがその一言を言うのを口が拒否している。


『…つ、ぁ………』

『必ず、お前を連れてくと約束しよう、だから諦めてくれ』


 父上はそう言い、その場を後にした。

 多分だから祖父様が使っていた執務室に向かったんだろう。



 そして一月後、正式に亡き祖父の後を継ぎ、オズワルド領の領主となった。


 半年後、諸々の引き継ぎ業務がひと段落した俺は祖父様の墓に向かう為に西へ向かった。その時父上はついて来なかった。理由は仕事が忙しいからとの事。


 俺がセバスを初めて見たのは祖父様が死んで半年後……なんとなく祖父様の面影があるように見えたがその時はただ単に歳を取ればみんなそっくりな顔になると思っていた。


「……まさか、セバスってユブッーー」


 祖父様? 言おうとした瞬間セバスによって俺の口は塞がれた。


「それ以上は喋らないでください。ここからは頷くだけでお願いします。質問は最後に」


 セバスの指示通り俺はコクリと頷くと、セバスは少し笑った。それは孫との対面を楽しむお爺ちゃんのようであった。


「私の本名は先代領主グリエル・オズワルド、今ではセバスと名乗らせてもらいっています。」


 それは俺にとって衝撃の一言では収まらないぐらいの動揺を与えられた。


 今までセバスと名乗っていた人物は俺の祖父で先代領主。

 それも西の海岸線で盗賊に襲われて、死んだはずの祖父が目の前にいる……俺の頬には一筋の涙が流れると堰を切ったように涙が溢れてきて自分の意思では止められない。 


「何故。死んだはずの私が生きているのか……理由は簡単です。あの馬車には私は乗っていませんでした。


 息子、いやアラエル様の父上、グリエルの企みにはなんとなくですが気づいておりました。裏でコソコソと何かを画策していたのは諜報部隊からの情報により筒抜けでしたので、なので私は、グランドを誘き出し、釣り上げようと宰相殿と計画、相談して、計画して、住民か少ない海岸線視察というわかりやすい餌を撒いて実行しました、まさか索敵部隊が抜けられるとは思いもよりませんでしたが」


 セバスはそこまで言うと、回想に入る。


『索敵はどうした!』


 セバス、いやグリエルによく似た男が割れた馬車の窓から顔を出し、叫んだ。


 今、馬車は約30人近い盗賊風の格好をした()()が偽物を守る護衛兵と対峙しているが劣勢である。


 両脇を崖で囲まれた山道を進んでいると突然。崖の上から本職が降り立ち。一斉に護衛兵に襲いかかり初っ端に護衛兵達の隊長を切り伏せ、隊長を失った護衛兵達の指揮系統はめちゃくちゃとなり。護衛兵1人に対して敵2人、すり鉢のように攻められた護衛兵は数を減らし残るは偽物を含め5人ほどになっていた。


「グランド様! 我々がグブッっ……」


 偽物を生かす為に道を作ろうとした護衛兵が左右から槍に胴体を突かれ、地面に崩れた。護衛兵が倒れた茶色い地面は赤茶色に染まる。

 この瞬間、最後の護衛兵達の士気が冷めるのを感じた。


 残された4人は各々持っていた武器を地面に落とし、投降の姿勢を見せずに本職の方に向かい、握手を交わし何か呟いた。


「お、お前ら! ブュ!ーー」


 その瞬間、背後から現れた本職の1人が偽物の首を刎ねた。

 偽物が発した最後の一言となった。


 偽物は自分の残された胴体を目を見開きじっくり見ると、視界が黒く染まり、ゴロッという音を立て地面に落ちると坂道をコロコロコロコロコロコロと転がり本職の1人の足元にぶつかり止まると、額に剣を突き刺し、頭を二つに割った。


 地面には肌色の俗にいう脳みそというものが、とろーと流れ出す。


「任務ご苦労様」


 本職が護衛兵に労いの言葉をかけた。


「仲間が3人も死んだ」


つまり彼ら以外も潜り込んでいた裏切り者が居た……という事である。だがなんらかの理由でその3人は殺された。

本職の部下達に情報が流れていなかったのか、乱戦になり見分けがつかなかったのか、誰もその理由を答えられる者はいない。


「それはすまないことをした、彼らの家族は手厚く保障しよう、グランド様も許してくれるだろう」

「………」

「報酬は後日例の場所で」


 護衛兵の1人は「わかった」と呟き。本職に背を向けた瞬間、胴体から剣が生えた。



「つ! け、剣だと……グブュ……な、なな、何を……す……」


 護衛兵は同じように胴体から剣が生えている3人の仲間を視認した瞬間、地面に向かって仰向けに倒れ込んだ。


「お前達は用済みって事だ。裏切り者を仲間として受け入れると思ったか? お前らは一生主人殺しの首謀者として地獄を生きろ、金に釣られたおバカさん達」


 本職は黒いマスクを外し、地面に倒れた護衛兵を嘲笑った。


「お前ら! 俺たちの犯行だとバレないようにもっと斬り刻んでおけ」


『『はっ!』』


 本職が部下達に指示した瞬間。同じようにな黒いマスクをを着けた者達は我先へと先に死んでいった護衛兵達の身体を切り刻み始める、


ある者は手の指先だけを斬り、その指を摘み上げ護衛兵にの口の中に入れた。

ある者は遺体をパーツごとにバラバラに分解し胴体を開いた

ある者は手首足首首だけを切り落とす。

ある者は目をくり抜き。剣の腹で押し潰す。

ある者は首を切り落とし剣の切先に押し付け、振り回す



 部下達がストレスを発散した頃、本職は部下達に穴を掘るように指示し殺した護衛兵達を埋め、逃げ出した馬と馬車は別働隊が確保し山奥に連れて行った後、馬を殺し、馬車を解体した。


 燃やしても良かったが煙でバレるのを本職は嫌った。

 バラバラにされた馬車は原型を留めず、一目見ただけではその残骸が馬車であったとは思えほどに破壊された。

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