真っ暗闇にライト一つ2
夏は暑い。(制作日7月某日)
熱いと全くやる気が出ない。
「せ、セバス」
「手荒な手を使ったこと、謝罪します。」
セバスは少し後退が始まった頭を下げた。
「何が目的だ、金か!身代金か?」
思わず口から出た一言だが俺が思っていた以上に冷たい声が出てきた、セバスは俺の声に一瞬だが肩を震わせたように見えた。
「……あの場所にあのまま止まっていたら……ーー」
「死んでた。そう言いたいんだろ」
セバスが言いたいことを俺が代わりに言うと、少しだけ頷く。だか俺は話を続けた。
「いや、殺されてたって言った方が合ってるか?」
「ええ。旦那様のあの様子を見る限り、ですが。身内であるアラエル様を殺しかねません。」
あいつならやりかねない。たとえ実の息子だろうと裏話を聞かれて生かしておく理由がない。俺は知らず知らずのうちに拳を握っていた。
「………」
「暗くなりましたね」
セバスは外を見てつぶやいたが外はずっと真っ暗である。月明かりが輝いているだけ。
「グラスの件は後で〆ておきます。グラスには少し変な性癖がありまして……私がもっとはやく来れれば、アラエル様をこんなお辛い目に遭わせることはなかったのですが……申し訳ありません」
そんな性癖聞きたくない。
「グラスはどうでもいいよ、諦めてるし、でもさー縛る必要あった? 誰の指示? まさかセバスって言わないよね、ねぇセバス? グラスの独断? それもそれでどうかと思うけど、」
グラスの独断で俺を縛るなんて前代未聞
セバスの指示で俺を縛るなんて言語道断
どちらにせよ前代未聞の事態である。
セバスは少し考える、全ての責任をグラスになすりつけることにした。
「全ての責任はグラスにあります。解雇するなり、処刑するなり、焼くなり、後日お好きにしてください」
「人の肉なんて不味そう」
思わず呟いていた。
人の肉なんか食べたことはないけど、あんな脂身貴族の肉などギトギトドロドロ、肉質は硬くて、性格に似て臭そうな匂いがしそう。
俺がそんなことを考えているとセバスが思いもやらぬことを言い放った。
「その昔、人は人の肉を食べていたと言う研究結果がありましね」
「あるんだ……」
どんな研究結果だよ……
「しかし、硬くて不味くて食べれなかったようです」
聞きたくねぇー。
まぁそりゃ食べれないだろうな、食べれるなら戦争で略奪しなくて済むし、敵兵の肉でも食べれば、食糧も自給自足出来るしね、現場の兵士たちが食べたいと思うかが難点だけど、乾燥させて干し肉って事にして流したら……。
「それこの最近の話?」
「確か、200年ほど前の話ですね、天言教はご存じですか」
「あの、宗教の名を騙った、殺人グループそれが?」
天言教……確か過激派の宗教団体。
最初は田舎の家族たちがやり始めたものが広がったって書いてあった。
「奴は、神様の言葉の代弁者である、教祖の戯言を真に受けた者たちです。教祖が言えばなんでもやると言う話です。
例えば、『野菜を神に貢げば幸せが訪れる』と言ったら、信者たちはもれなく野菜を持ってきます」
「うん、そう信じ切ってるんだもんな」
野菜を持ってきたら幸せになるそう言われたら持ってくるしかないよな、だけど結局のところ。仕事と同じかもね、ここでは3時間警備したらいくら給料として渡すって言う感じかな?。
「ではその野菜最後には誰が食べると思います?」
「まぁ普通の宗教であれば、『神はこれ以上は食べきれません』とか言って翌日そのまま返却みたいな感じだろうな、それか孤児院的な感じもアリかもな」
セバスは俺の意見を肯定したのか頷き、続きを話した。
「普通の宗教であればの話ですね。この宗教では教祖と呼ばれる者が全て裏ルートで高値で密売するか自分が食べる為に集めていたようです。」
「どこの世界にでもいるんだな」
他人を騙して、私腹を肥やす、時代が変わろうと世界が変わろうと必ずこう言う奴は湧き出てくる。
騙された者が悪いとよく言うが……。
「では、『ある村の民は神を信じない愚か者だ、奴らを殺せ』と神の代弁者である教祖が命じたら、どうなりますか?」
殺せと代弁者が言ったら………
「……熱狂的な信者であれば、教祖の言った通り、その村の住民を皆殺しにする……」
それが正しいと思ってるなら殺すのだろう。
それが宗教でなくても同じなんだろうな。
街中の噂もかなり似たような話しなのかもしれない。
先生が言うことは全て真実だと子供達が思うように、宗教に近いものは身近に存在するのかもしれない。
「それが200年前に起きた天言教事件です、今では時の風化のせいで知っているのもはごく僅かですが、書籍などにも残されてはいますが。その多くは国家所有のものです」
本来書籍は全ての国民が見られるようにしなければならないと俺は思うが天言教事件の後国家の都合の悪い情報が書かれている書籍を回収。いや強制的に徴収した。
「では最後に、もし……教祖が神の言葉として『その村民の穢れた魂を浄化する方法が一つだけある。それはその村の住民の肉を食べる』と言えば、正確に言えば心臓を食べるですが、もしそれを言ったら信者達はどうします?」
「それが正しい道だと思い込んでるなら………食べる。」
「ええ、その通りです。それが200年前の天言教事件の意図的に隠された真実です」
200年前の真実……だけど何故セバスがこんなことを?
「じゃ誰かが直前になって食べなかった」
「前々からその教祖に不信感を抱いていた者が居たと歴史書には書かれてますが、それ以上は分かりませんね」
「なんでこんな話を俺に?」
「必ず、寄ってくるゴミは居ます。これ以上は言えません
人を見抜く目を今のうちに養うことが肝心です
同じ失敗を繰り返さないように」
「あれ? なぜ私はこんな話をアラエル様に?」
ふと、何か思ったのかそんなことを呟いた。
だから俺は話を戻す事にした。
「グラスを焼くって話からだ」
「あぁー、そうでしたね。グラスの件についてはこちらで処理しておきます」
処理、か、死ななければいいが
「まぁいいか、だけどもう2度と姿見ることはなかったって事なるのはヤダよ」
「それは人によりけりですね、耐え切れば出てくるでしょう、耐え切れなければ……その時考えましょう」
俺はただ首を振ることしかできなかった。




