表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

第五章:【夢】月の夢

-1-


さくらが、


さくらが散っていくよ。


なんて…。


なんて綺麗な。



なんて綺麗なさくら…。


なんて綺麗なんだろう…。


ほら、


さくらが、


さくらが散っていくよ。


-2-


「うわぁ…」


あまりの美しさに思わず声を漏らした。


「綺麗だなぁ…。こんな綺麗な花、見たことないよ」

「月光花って言って月にだけ咲く花なんだよ」

掌に持ったガラスのプレートから浮き出るようにして映し出されるその立体映像の花を

僕に見せながらイネ=ノが言った。


今日はあいにくの雨。

ベッドに横になりイネ=ノに色々な土産話を聞いているところだった。


雨の日は苦手。

気圧の関係だろうか息が苦しくなる。

頭はくらくらするし、なによりも空が暗いと憂鬱になる。


けれど、

イネ=ノがこうして来てくれるだけで精神的に大分救われている部分が大きい。



「月か…。いいなぁ、イネ=ノは色々なところへ行けて。僕も行って見たいよ」

「何言ってるんだい、君も行くんだよ」

「え?」

「十二星座守護神で月に一度も行っていないのは君だけだよ。

月の女神アルテミスは僕ら黄道星座の力の要でもある太陽神アポロン様の双子の妹君。

一度ぐらい挨拶しておかないと失礼だよ。」

そう言って軽くウィンクしてみせた。


「本当?!」

思わず声を上げる。

「だって…僕、城の外に出たことなんてないから…。

いいの?」

真っ直ぐにイネ=ノを見つめその表情を伺う。

「もちろん。主治医の僕がいいって言うんだからOKさ」

そういいながら部屋のドアの前で心配そうな表情をして立っているスズ=タケの顔をちらりと見た。

スズ=タケは黙ったままだ。

「う…うわぁ!!嬉しいよ!!本当?!

本当にいいの?!」

思わずベッドから体を乗り出す。


「ああ…。最近調子もいいしね。」

するともう我慢できないといった顔をしながらスズ=タケが眉間にしわを寄せこちらへとやってきた。


「イネ=ノ様…キク=カ様を城の外にお連れするなどとは…」

「いや、僕一人の判断じゃないよ。アルテミスの命令でもあるんだ。

君、それに逆らえるかい?」

「アルテミス様の?!…ああ…それは…ですが…しかし」

女神の名前が出てもなお、納得いかない表情で口の中でぶつぶつと何か呟いている。


「ねぇ、スズ=タケも一緒にきてよね。まさか僕一人で月に行かせるなんて事さえてないでよ?」

「そ!それはもちろんです。当然ご一緒させていただきます。

ああ…しかし…」

すっかり困惑した表情でスズ=タケは僕とイネ=ノの顔を交互に見比べた。


「イネ=ノ様…ちょっとお話したいことが…」

そういいながら部屋の外へと促す。


「スズ=タケ!僕のいないところでイネ=ノに何か含んだたら許さないぞ」

慌ててスズ=タケの服の裾を引っ張った。


「いえ…そうではございません。ただ…その…」

何度もイネ=ノの顔をちらちらと見る。


「分った」

ため息をつきながらイネ=ノはそっと椅子から立ち上がった。

「話しを聞くよ。キク=カ、ちょっと失礼するよ。大丈夫。月へはちゃんと連れて行くから。

その打ち合わせをスズ=タケとさせてもらうから、少し待っていてくれるかい?」

「う…ん…。」

そういわれてもやはり不安は拭い去れなかったが

ここはイネ=ノを信じようと自分に言い聞かせ頷いて見せた。


「じゃ、ちょっと失礼。」

スズ=タケとイネ=ノが部屋から出て行った。


ドアの閉まる音がし、

僕は大きくため息をついてベッドに沈み込んだ。


これは夢だろうか…。


庭に出る自由すら許されなかったのがいきなり月だって?!

夢みたいな話しじゃないか…。


胸がわくわくと高鳴る。


「ああ…夢のようだ…」

思わず口に出す。


夢のようだ…。


夢のよう…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ