第十三章:【夢】透明な、色。
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そこは神殿の中だった。
巨大な教壇の上で光りが輝いている。
キク=カはその光りに跪き挨拶した。
「およびでしょうか、アポロン様。」
「そこにいるな?スコーピオンよ。」
するとキク=カの体から低い声が漏れた。
「はい、アポロン様。ここにおります。」
「うむ。
よいか、スコーピオン。お前を呼んだのは他でもない。
お前の力で抹殺してほしい奴が一人いるのだ。」
「誰でしょう。」
「お前もよく知る人物だ。
オリオン。
知っているだろう。」
「オリオン…。」
「あいつを殺してほしいのだ。
もちろん褒美は出す。
キク=カの体を完全にお前のものとしてやるぞ。」
「おお…なんと…。
この体が完全に私のものとなるのですか?!」
「どうだ。悪い話ではないだろう。」
「もちろんです!!その話し、お受けしました。」
-2-
なんだろう…。
夢を見ていたような気がする。
どんな夢だったかは思い出せない。
なんだか…気分が優れない。
ベッドに横たわったまま
天井の星図をずっと眺めていた。
きらきらと輝く星たちは一体
どこをめぐり、
どこへ帰るというのだろう。
体全身が痺れているみたいだ。
今日は体調があまり良くない。
寝返りをするとベッドから離れた所に置いてある椅子に
スズ=タケがいないことに気がついた。
あれ…。
どこ行ったんだろう…。
手でも洗いに行ったのかな?
なんだろう…
なんとなく落ち着かない。
重い体を起こし室内を見渡す。
照明が落とされ薄暗い。
ところどころにランプが置かれほのかに光っているのが
幻想的だ。
あれ…。
もしかして、今って夜?
てっきり朝かと思っていたのだが
まだ夜は明けていないらしい。
時間がたつのが遅く感じてなんとなく
歯がゆく気持ちが悪い。
一度大きなため息をついた。
少しの間待っていたがそれでもスズ=タケが戻ってくる様子はない。
仕方がない。
ゆっくりとベッドから起き上がり
テーブルの水差しをみつけそこまで歩こうとして
体が異様に重く感じることに気がついた。
だめだ…。
今日は本当に調子が悪い。
熱があるようだ。
手が汗ばんでいる。
その手でグラスを掴もうとしたが
汗で滑らせ床に落としてしまう。
パリン!という甲高い音が室内に響き渡った。
だがすぐに静寂に包まれる。
ゆらゆらと揺れるランプの光がなぜか
僕を焦らせた。
呼吸が浅くなる。
この音が鳴っても依然スズ=タケがあらわれない。
全く…どこへ行ってしまったのだろう。
仕方がなく
ガラスの破片を拾おうとした所で
指に痛みを覚える。
指を切ってしまったようだ。
そこからぽたりぽたりとしずくが滴り落ちる。
ああ…。
ぐらりと気が遠くなる。
やっとのことでスズ=タケが僕の名前を呼ぶ声が遠くから聞こえてきたが
もう立っていられない。
割れたガラスの破片の上に倒れこみそうなところで
スズ=タケが体を支えてくれた。
だが…しかし…
なぜ僕を止めたんだとスズ=タケを責めたくなった。
もう…僕には…
この先がないような、そんな気がしたのだ。
だったらいっその事…
いっその事、
楽になってしまいたい。
ガラスで切った指を見る。
ぽたりぽたりと、
依然血液は流れてとまらない。
色素を失った透明な血液は
なにを語っているのだろう。
僕は…
あと、
どのぐらい持つのだろう…




