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第十一章:【夢】幻想の花

-1-

なんて…

なんて綺麗なんだろう。


なんてきれいな…さくら。


さくら、

さくら


さくら…


さくらが散っていくよ。


なんて…なんて綺麗なんだろう。


なんて綺麗なんだろうね。


ほら、


さくら、

さくら、


さくらが散っていくよ…


さくらが散っていくよ、

なんて綺麗なんだろうね…


-2-


「狩りへ?」

驚いてアルテミスは目を丸くしてみせた。

その様子がまた愛らしく僕は優しく微笑んで見せた。


「はい。

僕もご一緒させていただきたいのですが…」


月の宮殿。

アルテミスの庭で僕はオリオンと3人でお茶をしていた。


今回、イネ=ノはいない。

オリオンに月へと連れてきてもらったのだ。


もちろんイネ=ノにばれたら大事になるので内緒だ。


「それは…かまいませんけれど…イネ=ノの許可は取ってらっしゃるの?」

「それには及びません。オリオンがサポートしてくれますから。ね?」

そう言ってオリオンを見る。


「こいつがどうしてもってわがまま言い出して聞かないからさぁ、

仕方がなく俺が付き添ってやることになったんだよ。

ま、大したことなんて出来ないだろうがな。」

「な!僕にだって頑張れば獲物取れるって言ってくれたじゃないか!!」

「何言ってるんだよ。本気にしてたのか?

やれやれ…。これだから子供は困るんだよ。

大人の話を理解できないくせによくもまぁついてきたもんだ。」


「ちょ!!話しが違うじゃないか!!

また守護石投げつけるぞ?!」

「アルテミスぅ~!聞いたかい?

こいつちびのくせに俺を脅すんだよ!

こいつ神の資格ないよ。神権、剥奪しましょうよ!は・く・だ・つ!」


「何をおっしゃるの二人とも。」

アルテミスはそう言ってちょっと困りながら微笑んで見せた。


「良いこと?オリオン。

キク=カは由緒正しき蠍族の王なのですよ。

いくら歳が若いからと言ってからかうのはおよしなさい。

それから、キク=カ。

本当に良いのですか?

私はイネ=ノではないからあなたの体調を詳しくはしらないの。

走り回ったりできるの?」


「あ…はい。あまり激しい運動はできませんが…後を付いていくことくらいは」

「おいおい、だからぁ、激しい運動ができなきゃ意味ないって言ってんだろ?

やっぱり連れてきた俺が間違いだったかな?

狩りを口実に月に連れてきてやったのによぉ。」

「そ…そんな…僕だって狩りがしてみたい!!

ねぇ…」

そういいながらせがむようにオリオンを上目遣いで見つめた。


「そ…!そんな顔したって無理なものは無理なんだよ!」

「大丈夫よ。獲物を見つけたらあとは弓で狙うだけですから

それならキク=カにでもできるでしょ?」

「さすがはアルテミス。名案ですな」

ちょっとえらそうにしてオリオンは笑って見せた。


「え…あ…はい…」

と鈍く返事するも思わず困惑した表情になる。


「おい…もしかして…お前…

弓できないんじゃ?」


目をぎゅっと瞑りゆっくりと頷いて見せた。


「おいおいおいおい!

話しにならねーじゃねぇかよ!!

だったらよぉ、獲った獲物運ぶくらいしか出来ないんじゃね?」


怖くてアルテミスの表情を見ることができなかった。

きっと呆れかえっているに違いない。


ただただ“狩りがしたい”と頭だけで判断して

何も策略を練ってこなかった僕が悪くて当然だ。


「キク=カとは狩りではなく花見をご一緒したいわ」

突然ぽんとアルテミスが言い出した。


「え?」

驚いて顔を上げる。


「キク=カは花にお詳しいのでしょ?

私も花が大好きなのだけれどあまり詳しいわけじゃないの。

良かったら色々と案内していただけると嬉しいわ。」


急に光りの筋が降り注いできたような感覚を覚える。


わ!!

僕にも出来ることがあったじゃないか!!


嬉しくてとびきりの笑顔で僕でよければ!と返事してみせた。


「けっ。男の癖に花ねぇ。」

オリオンが嫌味っぽく言う。


「アルテミス、花なんかでよければ僕が毎日摘んで持ってきて上げますよ。

この前も言っていたでしょ?

キク=カに花を持っていけって。

あの言いつけをずっと僕は守り続けてキク=カに毎回綺麗な花を届けてあげてるんですよ。

今は本当に綺麗な花が僕の国にたくさん咲き誇っています。

よければご一緒しませんか。案内しますよ。

あ、もちろん二人きりで」


「ちょ!ちょっと!!僕は?!」


「何言ってるんだよ。本当は城を抜け出すこと事態NGだっていうのに

今日は城の奴らだましてお前をここに連れてくるだけでも大変だったんだぞ?

さすがに今回だけで勘弁してくれよ?

でないとイネ=ノに殺されちまうよ。」


「な…」

思わず涙目になる。


わざわざ月までこれたというのに

何の収穫もないどころか

僕の役割までオリオンに奪われてしまうなんて!!


急にオリオンが憎らしくなる。


オリオンが…

憎らしい。


憎らしい!


憎らしい!!



『よせっ!!』



突然イネ=ノの叫び声が聞こえたような気がして

はっと我にかえる。


「どうしたの?」

僕の様子をみてアルテミスが小首をかしげた。


「あ…いえ…なんでもないです」


何事もなかったかのように軽く咳払いをする。


しかし…今のは…。


「じゃ、そろそろ連れて帰りますかな?」

「え?」

思わず心臓がドキリとなる。


「ちょ…待って。まだ来たばかりじゃないか…」

「何を言ってるんだよ。お前一応病人だろ?

俺だって医者じゃないんだ。

もしお前に何かあったらイネ=ノが黙ってないぞ。」


「大丈夫だよ!!

僕今日は特別体調がいいんだ!

だからもう少し居ようよ!!」

オリオンにせがむ。


「けどなぁ…」

目を細めながらオリオンは嫌味っぽく僕を見下ろした。


「頼むよ!」


「やっぱ帰りますわ。なんかこいつ体調悪そうだし」


「ええ!!」


「それにおれはアルテミスと花の散策に行く約束もしたから

とりあえず今日はこれで大収穫だしな」


ひどい!!


僕を口実にアルテミスと一緒に出かけたかっただけなんだ!!


許せない!!


頭の中で沸々と何かが沸き起こる感覚を覚えた。


頭の中がざわざわとざわめきだし

体が熱くなる。


手のひらが汗ばみ始める。


「キク=カ!」

突然名前を呼ばれ心臓が止まりそうになる。


「なぜここにいるんだ!!」

顔を上げるとイネ=ノとスズ=タケがこちらへと駆け寄ってきた。


「城に居ないので驚きましたよ、一体どういう事なんです!!」

スズ=タケが眉間にしわを寄せて僕を思い切り睨み付けた。


「僕の断りもなしに勝手な事を…。

何かあっては遅いんだぞ?!」

イネ=ノも珍しくかんかんになって怒った。


「アルテミス…失礼したね。

なんの取り付けもなく勝手にキク=カをよこしてしまって…。

僕の責任です」


「イネ=ノ、いいのよ。

キク=カはわざわざ私に会いたくて嘘までついて来てくれたのよ。

そうよね?」

そういいながらふんわりと優しく微笑んだアルテミスの笑顔がまぶしすぎて

思わず泣き出しそうになるところをぐっとこらえた。


「俺もすっげー無理やり連れて行かされて大変だったんだよね」

「ちょ!!話しが違うじゃないか!!」


思わずオリオンに怒鳴る。


「もういいから!」

イネ=ノが声を上げた。


「もういい。分ったよ。

二度目がないように僕がしっかり見張ってるからね。

とにかく帰ろう。」


「あ…待って…!!だって…まだ…!!」

一緒に花を見に行く約束をしてない!!


「そ、お子様は帰った帰った。おかげで俺は良い土産ができたしな!」


オリオンが意地悪そうに思い切り目を見開いて笑って見せた。


その笑顔が瞳に焼き付いて離れなかった。


僕をだましたのか?!


僕をだましたのか?!


友達だと思っていたのに!!


僕を!!



「キク=カ!」

またイネ=ノの怒鳴り声が聞こえる。


「オリオンのいう事に乗ってはいけない。

さぁ、落ち着いて!


帰るよ?!」


そういうと半馬人の姿に変え、僕をその背中に乗せた。


僕は悔しくて悔しくて…

イネ=ノの背中でそっと涙を流していた。


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