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第五十三話 満喫

 階段を上って三階に来た。右手側が二年生、左手側が三年生の教室らしい。

 左から凄い悲鳴が聞こえるので、まずは三年生の演し物から見に行こうか。


 ……そう決めて、後悔した。


 まず来たのは三年一組。というか、三年生のフロアは三年一組しか演し物がない。というのも、二組はグラウンドで焼きそばを作っているようで、三組は体育館で劇をしているらしい。

 というわけで、三年一組が三つの教室を独占していた。

 そしてその内容が。




「お、お化け屋敷……」


 三つの教室のそれぞれから物凄い悲鳴が聞こえる。余程恐ろしいのだろう。ぶるりと体が震えた。


 そして受付には花園くん。彼は中学生ながらモデルをこなしている美麗な子で、そのファンらしい子たちが黄色い悲鳴を上げていた。


 二色の悲鳴を聞きながら、僕は恐る恐るお化け屋敷に足を踏み入れた。




「ひぎゃーッ!」


「ぎゃぁーッ!」


「ひっ……ひ……おぎゃあーッ!」




 結果は散々だった。

 特に、最後の教室で待ち構えていた月城くんには滅茶苦茶に驚かされた。最後の悲鳴はそれだ。

 井戸を模した造形物から、ずるりと這い出てくる様子は、正にお化け。


 脅かした相手が僕だと気が付いた月城くんは満足そうに笑っていた。

「腰が抜けなかっただけマシですね」と言っていたのは冗談だったのか、本気なのか。


 ……そういえば、出口の近くに担架を持った生徒が数人待機していたな。もしかして……。


 …………考えないようにしよう。




 切り替えて、次は二年生の教室へ。

 二年一組は外でタピオカを売っているらしく、無人。

 二組は回遊型の謎解きだった。僕が(一方的に)知っている生徒には、皇くんと静島くんがいた。どちらもサッカー部員だ。


 普段使わない部分の脳みそをフル回転させたせいか、とうとう頭痛を覚え始めた僕を見かねて、静島くんが近寄ってきた。


「ここは魚をテーマにしている謎解きなので、今までに出てきた答えから魚を見つけ出して当てはめて読んでみてください」

「な、なるほど? 魚、魚……ああ、なるほどぉ!」


 最後の答えがわかったときの爽快感と言ったら、もう!

 ほとんど答えを教えてもらったような形だけれど、それはそれだ。僕は乗り越えたぞ! ふふん、あとであやめちゃんに自慢しよう。




 二年三組はカジノをしているらしい。入り口で何枚かのチップを貰って、足を踏み入れる。


「おお、内装もそれらしい」


 というか、学生がカジノを経営(?)するのはいいのだろうか。文化祭なら許される、のかな?


 一枚のチップを片手で遊ばせながら、案内された席に着く。そこではブラックジャックをしていた。ディーラーは快野くん。

 隣の席では神風くんもディーラーをしていた。二人とも黒い衣装がよく似合っている。




 結果から言おう。滅茶苦茶白熱した。


 というのも、快野くんがすっごく強かったのだ。そして僕も運がいい方で、お互いに二十一ピッタリを揃えたり、ギリギリを狙ったり、狙いすぎて超えてしまったり。

 そんなことを繰り返してチップが増えたり減ったりするのを眺めながら楽しんでいると、いつの間にか周りにギャラリーができていた。あと神風くんは黒板消しをマイク代わりに実況していた。どうして?


 今は普通のブラックジャックでなく、よりエンタメ性を求めた、最初に配られた一枚目以外を相手に見えるように表向きに机に置く形式で対戦していた。

 僕の手元には六のトランプ。卓上には三と四、そして七。合わせて二十だ。


「追加で引きますか?」


 快野くんの言葉に首を振る。

 これで一が引ける可能性は限りなく低い。変に足掻くのは怖いんだ。


「では私は一枚引かせていただきます」


 そう言った快野くんの机には、二のトランプ。手札はこれで四枚になった。


「……私はこれで勝負させていただきましょう」

「僕もこれでいいよ」


 快野くんの感情は読み取れない。

 はたして二十一を超えたのか、はたまた――。


「僕は二十。きみは……」


 目の前の彼は、ふっと笑った。


「――二十一。ブラックジャックでございます」


 わっと歓声が上がった。

 僕は掛けていた手持ちの全チップを快野くんに明け渡し、清々しい気持ちで教室を出た。


 どうやらチップがあれば出口でお菓子と交換できたようだが、僕はそういうのに興味がない。紅茶やお酒があったなら話は別だけど。


「あーあ、負けちゃったー!」


 でも何故か、悔しくない! 何故なら楽しかったから!




 三年三組の劇を観に、体育館に来た。

 席に座ればすぐに劇が始まる……が、どこか可笑しい。

 演目は『不思議の国のアリス』。だというのに、アリスは男の子(しかも雷電くん)が演じているし、白うさぎや帽子屋、チェシャ猫は女の子だ。後に出てきた赤の女王も男の子(こっちは白亜くん)だったし、恐らく、というか確実にこれは、男女逆転劇だ! 僕が大好きなやつ!


「王様! あたしは何もしてないんだ! じゃない、のよ!」

「女王様とお呼び! この雌猫!」


 しかも独特のギャグ要素と展開まで差し込まれており、笑いありハラハラありの、もう滅茶苦茶に面白い演劇だった。

 最後のカーテンコールでは盛大に拍手をしておいた。本当に滅茶苦茶面白かった!


 ……今度、性別逆転の薬剤とか作ったら、あやめちゃん、飲んでくれたりするかな。確実に怒られるしタンコブもいくつか作られるだろうけど、やるだけタダ、だよね!

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