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第84話 怖がれ! 怒れ! 死ね!

 紅い火の粉が空を舞う、焼ける人肉の匂いと共に。


「誰かぁ!! 息子が! まだ家の中にいるの!」


 悲鳴に似た母親の声が木霊する。


「奥さんいけません! 死んでしまいます!」


 その、悲鳴をあげる母親を、衛兵の1人が必死に抑えていた。

 泣き叫び始める母を前に、周りの民衆は何もすることができずただ固唾を飲み、騎士団と火消し隊がくるのを待つだけであった。


「あはっ! アハハハァ──!」


 笑う声が火の粉舞う四階建てのアパルトメントの屋上から木霊した。


「おい! クソアマ! お前の息子ならもう焼け死んだぞ!!」


 その屋上の声の主を一斉に民衆が見る。男だった、そいつはマントを身体に纏う騎士の、男だった。

 泣く母親がその言葉を聞き、崩れ落ちる。

 その途端に野次馬からの罵声が上がる。

 クズめ!

 恥を知れ!

 その他諸々の似通った言葉を男は体全体で味合うようにして感じながら、煙を吸い込むのも構わないで叫んだ。


「さいっこうだ!!!!」


 男はそのまま叫ぶ、言葉にならない雄叫びを。

 それはまるで、何かに勝ち誇ったかなかような、復讐を果たした瞬間のような、達成感からくる喜びの叫びのようだった。

 それがまた民衆の癪に触る。

 しかし男はそんなことは気にもせず、ちょうどいい風向きのお陰で黒煙が自らにまとわりつくことも無くなった結果ただ笑みを浮かべ民草を見下ろした。

 このまましばらく見ているのもいいか。

 そうタカを括っていると男はふと気がつくいつのまにか民衆が道を作り始めている。

 なんだと思う前に馬に乗った何人かの騎士たちが、男の眼下に躍り出た。

 男はその集団の中にみしった顔を見ると思わず口に出してしまった。


「またあった……」


 その男の発言には気づかなかったが、邪な笑みと視線にドンキホーテは勘づく。


「俺を……みた?」

「貴様! そこで何をしている!!」


 ドンキホーテの言葉を遮るようにして第2騎士団のドラドスールが大声を出す。


「ジュリス! なぜお前が!」

「知り合いか! ドラドスール!」


 ロンの声にドラドスールは「知り合いどころではない!」と怒鳴る。


「彼は、第2騎士団所属の……! くそ! 呼びかけに応えないと思ったら! それよりも消火だ! 火消し隊は!」


 ダン!


 石で舗装された地面が砕かれる。ドンキホーテ達の目の前に、ジュリスと呼ばれた男が屋上から舞い降りた。


「ぐ! 本当にお前なのか! お前がやったのか!」

「そうだ! この俺がやったんだよ! 状況から読めねえのか? この馬鹿が!」


 ドラドスールの問いかけに、嘲笑うジュリス、ドラドスールはただ唖然とした。ロンはドラドスールの代わりに声を上げる。


「この人数を相手に、勝てるわけがない! 落ち着け! エヴァンソとレーデンス、ドラドスールと私でこいつを捕らえる! 他の者は──」


 閃光が走る。轟音と共に。

 ジュリスは闘気による、三日月の光線を剣を振るうことにより放出していた。

 燃え盛るアパルトメントに向かって。

 炎により脆くなっていた建物はジュリスの三日月の光線によりあっという間に壊される。

 そして光線の直撃と、爆発により火のついた瓦礫が多方面に散乱した。


「な──!」


 ロンは思わず絶句する、一瞬で周りの家に火が引火したのだこれでは、消化が間に合わない。


「お前! 何を! 他の者は火消し隊の援護を!」


 ロンはそれでも必死に指示を出す。

 そしてロンの指示により、騎士達はその場にいた騎士達方々に散る。


「ドンキホーテ、ドラドスール、レーデンス! こいつはなんとしても捕らえなければいけない! いいな」


「分かっています!」とレーデンスが言った瞬間だった。


「くたばれぇぇ!!」


 ドンキホーテはジュリスに向かって突進していった。


「馬鹿者!」


 ガキン、と剣と剣がぶつかり合う。それと同時にジュリスとドンキホーテの間に剣がぶつかり合うことによって生じた衝撃波が、走り、それが周囲にも走る。

 近くにいた野次馬はその衝撃で押され尻餅をつくものさえいた。


「ドンキホーテ、何を!」


 レーデンスの叫びにドンキホーテは答える。


「こいつ相手に4人もいらねぇだろ! せいぜい2人で充分! みんなロンさん達も消火作業に──!」


「ダメだ──」


 ドラドスールのその怒鳴るようにして言葉を捻り出した。


「──ジュリスは我が団のエースなのだ!」


「ガッ……!」


 その言葉と同時だった。

 ドンキホーテはジュリスの斬撃によって吹き飛ばされる。

 ドンキホーテの革鎧は粉々に砕け、下の皮膚までに達したその怪我は出血を伴った。


「まずは1人だな」


 ジュリスはほくそ笑んだ。

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