第83話 再び遊ぼうじゃないか
「カールランドさんが無罪!?」
ドンキホーテの声が騎士の駐在する館にこだまする。
「落ち着けエヴァ、あくまで可能性はあるという話だ」
「そっか……」
「だが、その可能性は高い、ここにいるレイレイのおかげでな」
「そうなのか?!」
ドンキホーテはレーデンスを目を輝かせながら見つめる。
レーデンスは少々照れ臭さを感じながらもしかし自身を持って頷き言った。
「安心しろ、必ず助け出せる」
ドンキホーテの目はさらに輝いた。
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力を持つものは恐ろしい、それが道徳心のないものならなおさら。
王都エポロ地下、犯罪者特殊収容区画、別名「ソウルウォッチャー」それは闘気に、つまり常人の域を超えた身体能力に目覚めた者が犯罪者となった時のための檻として用意された、監獄である。
この地下の監獄は、監獄自体を囲むように地中には魔法陣が張り巡らされており、この中にいる罪人は、常人がいれば歩けないような負荷を魔法によってかけられる。
それにより脱走を防いでいるのだ。
そして今、その地底から1人の男が面接室へと通された。
面接室は魔法陣の外、地上にある。負荷の魔法の効果を脱した男、カールランドは驚く。
「ようカールランドさん」
ドンキホーテは戸惑っているカールランドにそう挨拶する
さらに目の前には、ドンキホーテのほかに、レーデンスともう1人は見覚えのない男、しかしまさかパーティメンバーよりも先にこの2人と会うことになるとは、思いもよらなかったのだ。
「ドンキホーテ、レーデンス、なぜ……? 頼む帰ってくれ話せることはもう何も……俺は何も覚えて──」
「いや、話せることはあるはずだカールランド君」
唐突に話しかけてきた、見知らぬ男、ロンにカールランドはたじろぎつつ聞き返す。
「貴方は……?」
「君には質問がある、まあほら入ってきてばかりだろう座ってくれ」
面接室にはただ机とその机を囲む椅子4つだけがあったそんな簡素な空間はただ無機質的であった。
カールランドは言われるがままに座る、カールランドを連れてきた看守は入り口のそばに立ったままだ。
先に座っていたロンはカールランドが座った瞬間に、時間がないと言わんばかりに話し始める。
「私は、ロン。カールランド君、もう一度昨日の出来事を話してくれないか」
「何をいっても……同じだ」
「なんでもいいんだ同じことを話してくれ」
「何も覚えてないそれだけだ、騎士様」
「ふむ……」
そこでロンは黙り込むそしてしばらく考え込んだ後、カールランドの目を真っ直ぐ見て言った。
「昨日、見知らぬ場所で目を塞がれ縛られていなかったか?」
「え……?」
カールランドの心に再び動揺が走る。そしてその動揺が希望に変わった、もしかしてわかってくれているのか今の状況を、カールランドは身を乗り出す。
「そうなのです、私は昨日どこかも知らぬ場所で身を縛られ身動きが取れない状況で……! 目を塞がれていたかどうかはわかりませんが、とにかく暗くて、そして次に目を覚ました時には監獄に」
「嘘つきめ」
看守がボソリと毒をつく。しかしギロリとロンの近くに立つドンキホーテがはなつぶち殺されんばかりの殺気だった目線に怖気づき、わざとらしい咳をした後、物置と化した。
「やはりな」
その言葉を聞いたロンは頷き、看守に話しかける。
「看守殿」
「は、はいロンさん! なんでしょう!」
「この都市に駐在する、クラス1の魔法使いを寄越してくれ」
「はぁ? そ、それはしかし……」
「ここの魔法陣のメンテをしている魔法使いを寄越せと言っているんだ、頼む、この男は無罪が確定するかもしれん、司法官も頼む、この事件やばいぞ」
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ロンの鶴の一言で、ソウルウォッチャーの管理人たちは四方へと飛んだ。ある者は魔法使いへと至急連絡しに、あるものは司法官にやがて騒ぎを聞きつけた国家憲兵の第二騎士団の一部の団員までもが看守と共にソウルウォッチャーへと戻ってきた。
ソウルウォッチャーの会議室にて、ロンは頭を抱えた。
「なぜ第13騎士団如きが、この問題にか変わっている! これは私たちの、第2騎士団の問題のはずだ!」
黒い山羊髭を備えたスキンヘッドのメイスを腰に携帯した男が吠える。
「ドラドスール、落ち着け何もお前を邪魔しようと言うわけじゃない」
ロンは半ば呆れかけながらも、いまも吠え続ける、山羊髭男のドラドスールに宥めようとしている。
しかしそのロンの落ち着き具合が、逆にドラドスールの癪に触る。
「きさま! 我が部下たちも暇ではないのだ! こうして貴様が罪人を動かそうとすれば私たちも動くということを忘れるな」
「いい加減にしろ、ドラドスール、純貴族ではない、我々第13騎士団が気に入らないのはわかるが、そこまで躍起にならなくてもいいだろう、罪人をどうこうするつもりはない、その証拠に、ここソウルウォッチャーで全ての事を済ませようとしてるだろう?」
「だまれ! だいたいそういう報告は我々に──」
くだらない口論に水をさすようにガチャリと会議室の扉があく。
「ロンさん、あと少しで魔法使いの先生が来るってよ!」
ドンキホーテが勢いよく中に入ってきた、するとドラドスールはあんぐりと口を開けた、それは他でもない、ドンキホーテが勢いよく中に入ってきたからだ。そうドンキホーテが。
「おおおお、お前は私を殴ったぁぁ! 従騎士!!!」
「んあ? 誰だ?」
誰、誰……誰…………ドラドスールは今でも思い返せる。自分が新人騎士の叙任式のことオークなどという汚らわしい種族がいたのでドラドスールは罵った。
次の瞬間、歯が2本ぶち飛んでいたのだドラドスールの歯が。およそ半年くらいまえのことだった。
未だにドラドスールはそのことを覚えていた。その犯人、下民のドンキホーテを。
「貴様私の歯を折っておいて!!」
掴みかかろうとしたその時だ。
再びガチャリと扉が開く。
「騎士の皆様!!」
息を切らしながら看守の1人が入ってくる。
「どうした!」
ロンが駆け寄ると、看守は切れる息を必死に整えた後言う。
「殺人です!」
その場にいた全員が、驚く、この短期間で再び殺人がこの平和な王都で起こったのだ、誰もが思った。
異常だと、さらに異常だったのは、
「それだけではありません! 犯人が家々に火を!」
それが、大量の死者を産むほどの犯行であったからだ。
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