第85話 やったぞ! 斬り殺した!!
「ドンキホーテ!」
切られ吹き飛ばされたドンキホーテにレーデンスが近寄よろうとするがしかし、
「背を向けんなよ!」
ドンキホーテに気をとられ隙を晒したレーデンスにジュリスが襲い掛かる。
「ぐっ!」
ガキィンと金属音がなる、間一髪のところでレーデンスは自らの鞘でジュリスの剣を防いでいた。
あまりの瞬足ぶりに、レーデンスは剣を抜くことができなかったのだ。
だが、防いだ、ということには大きな意味がある。
「レーデンスよくやった!」
防いだとによってできた一瞬の隙は、ロンにとって大きなチャンスだ。
レーデンスによって止まったジュリスに向かってロンは右手の手袋を外しながら叫ぶ。
「黄金錬成!」
ロンの右の掌から黄金が枝木のようになって生えてくる。やがてその金は、瞬時に回転しながら一つの棒となりさらに、先端に刃を生成した。
それはまるで黄金のハルバートであった。
「覚悟!」
黄金のハルバートをロンは振り下ろす。ジュリスは咄嗟に攻撃の標的をレーデンスから危険度の高そうなロンヘと変え、レーデンスを蹴りで吹き飛ばした後、ロンヘと瞬時に向き直る。
「覚悟するのはテメェの方だろうが!」
ロンの一撃に対して瞬時に体の軸を変え避けるジュリス。
だがロンの一撃はそれで終わらない。
「甘い!」
避けられた瞬間、咄嗟にロンはハルバートの軌道を一瞬とめ、ジュリスの油断した腹にハルバートの刃をついてない部分を叩きつけた。
「がぁ!!」
メキ、と思い音がジュリスの体から響く。ジュリスの体は直線を描き飛び、火のついていない民家に激突する。
「ドラドスールいつまで固まっている!」
ロンの怒号がドラドスールを正気に戻す。
異常な状況により、さすがの騎士団員といえど唖然せずにはいられなかった。
「わ、わかっている!!」
腰から二つの剣を抜き放ったドラドスールもまたロンの加勢に加わる。
燃え盛る民家を背に2人の騎士は1人の大逆者と相対する。
「よっと」
ジュリスはめり込んだ壁から身を起こし、のらりくらりと笑い言った。
「はは、すげぇ全く怪我がねぇじゃねえか」
ロンは焦る、背後では今も背の高いアパルトメントが焼かれている。
このジュリスの目的は恐らく、火事を起こすことそれにより何を成すのかは知らないが、とにかくはやく捕縛しなくてはまずい、火消しの邪魔をされることは間違えない。
だからこそここは、
「ドラドスール、あいつは殺すな! 聞きたいことがある」
「しかし、この状況では! 殺すことも──!」
「ダメだ! 奴をここで殺せばさらに多くの民の命が奪われる!」
「それはどういう──! いや! わかった! 捕縛にしよう私も何かがおかしいと思っていた所だ」
ドラドスールは目の前のジュリスに視界に収め叫んだ。
「ジュリス! その訛りはなんだ!」
「はぁ?」
ジュリスは首を傾げる。
「その粗暴な訛り言葉はなんだと聞いた! 貴様が使うのはいつも宮言葉のはずだ!」
ジュリスはニヤリとほくそ笑む。
「へぇ、こいつ宮言葉なんて使うのか」
その言葉でドラドスールは確信した。
「貴様……! 何者だ!」
しかしジュリスは答えない。
「おい、騎士様方、お喋りもいいけどよ、火消し隊が来るまでの時間稼ぎにはならねぇぜ、来る前に火消し隊の屯所を一つ潰した」
ジュリスの口角が歪ませる。
「通りで……!」
ロンは歯噛みする。通りで遅いはずだ、火消し隊が。
こいつのやり方はあまりにも計画的すぎる。だが騎士団のエースという立ち位置を捨ててまでやりたいこととは思えない。
まるで別人。
やはりと、ロンは思った。
「レーデンスの勘は当たっていた!」
「どうでもいいんだよ! そんなこと! さあはやくやろうぜ!! 2対1でも俺は──」
次の瞬間、ジュリスは背後に気配を感じた。
咄嗟に剣を背後に向け、構える。
甲高い金属音が、衝撃波と共に鳴り響いた。
「回復完了!」
そう叫んだのはドンキホーテだ。
ジュリスの背後から奇襲に成功したドンキホーテはそのまま、剣を水平に薙ぎはらうジュリスあまりの膂力に耐えきれず。足で地面を抉りながら立った身で弾き飛ばされた。
「くそが! 斬り殺したと思ったのに!」
ジュリスは吐き捨てるようにそう言った。
「へっ! 治療ぐらいできるんだよ!」
「お待たせしました! お二人とも!」
啖呵を切るドンキホーテと共にレーデンスも姿を建物の影から姿を現した。
「よくやった! レイレイ、エヴァ!」
ロン達は確かに会話による時間稼ぎは確かに狙っていた。だが、それはドンキホーテの奇襲を成功させるためであった。
見事にその奇襲は決まり、ドンキホーテとレーデンス、ロンとドラドスールの4人で、ジュリスを囲むことに成功した。ロンは勝利を確信する。
「俺を捕らえるつもりか?」
ジュリスの言葉に誰も答えないただ、武器を4人とも構えるだけだ。
「そんなのなぁ──」
ジュリスは叫ぶ。
「──甘いんだよ!」
途端、ジュリスの足元に巨大な五芒星が現れた。それは模様からして魔法陣。つまり悪魔を召喚するものに他ならない。
「ヴァルファーレ!!」
ジュリスは叫ぶ、悪魔の名を。
そして激しい閃光が魔法陣から放たれ、その中から禍々しき、紅水晶の羽を持つ三つ目の白い獅子が、姿を現した。




