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馬車の中で

 ユーティスへ向かう馬車の中で、アリアは窓の外を見つめていた。

 初めて見る外の景色は何もかもが新鮮な驚きを与えてくれたが、アリアは車内の人たちが気になって落ち着かない気持ちが続いていた。

 特に、真正面に座っているエリシオンの視線が気になって仕方がない。


(このままじゃユーティスに着くまでもたない……)


 アリアは少しでも緊張をほぐそうと、竪琴を抱き締めたまま目を閉じた。

 そうしていると段々と落ち着いてきて眠くなってくる。


(少しだけ眠ってもいいかしら……)


 昨夜は不安で一睡もできなかったのだ。緊張のピークを過ぎたアリアの神経は疲れ果てて眠りを欲していた。




◇◇◇




 窓の外ばかり見ていたアリアが眠ってしまったのを見て、エリシオンは遠慮なくその寝顔を眺めることにした。


(本当によく似ている)


 銀の髪も、優しい雰囲気も、彼女はルシアンを幼くしたようにそっくりだった。


 巫女長に訊いたところ、アリアは捨て子で親は分からないとのことだったが、生まれ年はルシアンが死んだ年と同じだった。それを聞いて、まるでルシアンの生まれ変わりのようだと思った。

 ……そうでなくても、ルシアンの血縁であることは間違いないだろう。こんなに似ていて他人のはずがない。

 時を戻せるなら、赤ん坊の頃から育てたかったと思う。


(そんなこと不可能なのに)


 ルシアンが死んだ時、時が戻せたらと何度も思った。

 けれど、過去に戻れたところで自分はルシアンを守ることはできなかっただろう。


(アリアは私が守る)


 自分から彼女を取り上げられるような者には絶対に会わせない。

 守るためには側妃にしてしまったほうが都合がいいのだが……。


(本人が望んでいないようだし、仕方ないか)


 ただそばにいてくれればそれでいい。

 また昔のように、穏やかな笑顔を見ていたいだけ――。


 あまり寝過ぎると夜に眠れなくなるだろうし、しばらく経ったら起こそうと思いながら、エリシオンはアリアの顔を飽きることなく見続けていた……。

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