側仕え
領事館での演奏を無事に終えて、神殿に戻ったその日の夜――
「なぜ……!?」
アリアは動揺して小さく叫んだ。
たった今、巫女長から思いもよらないことを聞かされたのだ。
「アリア、驚くのも無理はありませんが……ユーティスの王子は本気であなたを望んでいるようなのです」
「断ることは……」
アリアは泣きそうな声で巫女長に問うた。
「殿下は側仕えを断るなら、側妃として召し上げると仰ったそうなのですよ」
「側妃なんて……」
アリアの目に涙が滲んだ。
「側妃が嫌なら、側仕えの話を受けるしかありません」
巫女長はアリアを宥めるようにそう言った。
けれどどうあっても断ることができないと悟ったアリアは、震える声で「側仕えになるしかないのですね……」と青褪めた顔で呟くだけだった。
「側仕えなら、数年で神殿に戻されるかもしれないから」
だから元気を出してと、巫女長は慰めるようにアリアに言った。
しかしその言葉を聞いたアリアは、数年は帰れないと心に刻んで悲しくなった。
「……王子様のところで、私は何をしたらいいのですか……?」
アリアは巫女長に問い掛けた。
「ただ竪琴を弾くだけでよいと仰せですよ」
「……本当に、それだけでよいのですか?」
「ええ。あなたの竪琴をとても気に入っておられたようでしたから、大丈夫ですよ」
そう言われて、アリアは少しだけ安心した。
側妃にと言われたので、女として望まれているのかと怯えていたのだ。
「大丈夫。ユーティスの神殿に、時々様子を見に行くように手配しておきますから。何かあったら私に報せが来るようにしておきます。それと、何もなくても毎月手紙を送りなさいね」
巫女長はアリアを励ますように言ってくれた。
アリアはまだ不安な気持ちでいっぱいだったが、数年で帰れると信じて王子の側仕えとして隣国へ向かうことを承諾するのだった。




