銀の髪の楽士
奉納祭の最終日。
エリシオンは神殿楽士が来るのを待ちながら、ルシアンのことを考えていた。
エリシオンが物心つく前にも、母とともに奉納祭に行ったことがあるという。その時自分がとても喜んだので後に楽士たちを招いて、それがルシアンを側仕えにしたきっかけだったと聞いている。
(……今日訪れる楽士が私の好む音を奏でてくれるなら、側仕えとして召し抱えようか?)
そんなことを考えながら待っていると、楽士が到着したとの報せがあった。
楽士のいる部屋に入り、その少女を見た途端、エリシオンは凍り付いたように動きを止めた。
(ルシアン……?)
その少女は記憶の中のルシアンにそっくりだった。
(私は夢を見ているのか?)
エリシオンの視線の先で、少女は戸惑ったようにこちらを見ていた。
「あの……殿下?」
領事のダフスがエリシオンに声をかけた。
その声にハッとして、エリシオンは「何でもない」と答えて席に着いた。
しかし視線は少女へと向かってしまう。
彼女は居心地悪そうに身動ぎして、助けを求めるように隣に立つ年配の女性に視線を向けた。
その女性は巫女長のマーナと名乗り、楽士の少女はアリアという名だと言った。
(アリアというのか……)
アリアの演奏を聴きながら、エリシオンは彼女を見つめ続けた。
(私は明日には帰らなくてはならないが……アリアをそばに置きたい)
彼女を側仕えにできるだろうかとエリシオンは考える。
駄目ならいっそのこと側妃として召し上げてしまおうか?
エリシオンは彼女を手に入れることしか考えられなかった。
ルシアンにそっくりな容姿と、よく似た竪琴の音。
きっと彼女はルシアンの近親に違いない。
(ルシアンの代わりに幸せにしてみせる)
そう決意して、彼女を連れて帰ることだけを考えていた。
アリアが神殿の外に出ることを望んでいないことなど、知るよしもなかった。




