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6話 調べよう

あっという間に7月18日になってしまった。

彼鉈は15分前に着いてしまい、退屈な時間を持て余している。

周囲を見るとまだ朝というのもあり、社会人や部活の学生などで賑わっている。

夏真っ只中とはいえ、ハチ公前ではやはり待ち合わせをしている人が多い。


家から持ってきたペットボトルのキャップを開けて、水を飲む。

すると。


「おはよう」

振り向くと、水色の髪。


今日は白いベレー帽ではなく、薄いベージュ。

私服で、昨日より少しラフな格好だった。


「お、おはよう」


「また早いね」

看空は左手を上げて挨拶した。


「いや」

「家出るのが早かっただけだよ」


「チーバくんの下らへんだもんね」


「...一本乗り遅れると結構変わる」


「あら大変」


軽く笑う。

昨日より、少し自然だった。


「......今日はどこ行くの?」


「まず図書館」


「王道だぁ」


「そうだね」


「何かあるかな」


「...なかったら困るよ?」

看空の眉が下がり、少し困る表情をしている。


「確かに」


「じゃあメトロ乗ろ」

看空に案内されながら、彼鉈は地下鉄の改札へ向かった。



──ガタンゴトン。


地下鉄に二人で並んで座る。


「東京って」

「人多いね」


スマホを膝に置き、急に話しかけてきた。


「いや」

なぜか笑みがこぼれてしまった。


「それ東京の人が言う?」


「あ」

「そうだった」


「普段は車移動が多いからさ」


「そうなんだ?」

他愛もない話をしているうちに、あっという間に最寄駅に到着した。



図書館は割とエキチカでおしゃれな空間だった。

見せ物なのかはわからないが、螺旋階段まで設置されている。


「空賀さん、呆気にとられてる?笑」


「いや、そりゃこんなおしゃんな図書館見たことないし...」


「都会ってすごい、ね」


「ね〜」


いや青凪さんは東京住んでるだろ、と心のなかで彼鉈はツッコんだのだった。


「探すならどこを探せばいいのかな...?」


「確か、NDCが使われてるからそこから探そっか」


「え、えぬーでぃーしー?」


「NDC、日本十進分類法って言ってね。大体の図書館は0〜9で本のジャンルが整理されてる」


「はえ〜」

全然知らなかった。本を読むことはあるけど、図書館まで足を運んだことはあまりない。



そこから歴史、自然科学、技術や産業などに目を通してみるも、新たな発見はなかった。

近くに置いてある新聞に目を通してみても何もない。


「もう1時間くらい経つけど......」


「ないね」

痺れを切らしたのか速攻で、ないと言い切った。


「都市伝説も」


「ない」


「民俗学も」


「ない」


「オカルト」


「……ない」


「全部ないね」


「当然、ネットで検索しても出ない」


「当たり前か」


「流石に疲れたね」


「私も」


「休憩しよっか」


「賛成〜」

お互いの状態を確認しつつ、コンビニでアイスを買うことに決めた。



「やっぱコンビニ入るだけで涼むね〜」


「外暑いからね」

今日の気温は32度。かなりの猛暑日で、少し歩くだけで汗が滲む。


アイスコーナーまで行き、PALMを手に取る。


チョコレートのアイスだが、中にバニラが入っていて2つの味を同時に楽しめる。自分は甘党というのもあり、たまらない味。


「それ、なぁに?」


「PALM」


「ぱる...?」


「うん」


「それ食べたことないかも」


「まじか。人生損してるね」


「そんなに?」

一本渡す。


「はい」


「え」


「おごり」


「片道千円の人に?」


「……」


「返して」


「やだ〜」

結局奢ることはせず、ちゃんと二人で分けて支払いを行った。


「ケチ」


「知らないなぁ」


コンビニの外で、二人でアイスの袋を開ける。

お互いにPALMを一口食べる。


「あ、美味しい」


少しだけ目を細める。

看空の溶けたチョコレートが口元についたのを気づいたのだった。


「あ」


言おうとしたが、彼鉈はやめた。


「……」


その横顔が、夏の日差しより眩しく見えた。


「ん?何かついてる?」


じっと見つめてしまったことに気づいて、横を向く。


「なんでもない」


「そ?」


「てか安いね」


「いや割と高いと思うけど...」


これが庶民と裕福な家庭の違いか。。。

お金持ちはアイスの値段なんか見ないんだな。


時刻は13時になり、もう一件の図書館に向かうらしく看空の隣を歩く。


「……空賀さん」


「ん?」


「本当に諦めないんだね」


「ここまで来たし」

「片道千円だし、元を取らないと」


「そこなんだ」


「重要です」


二人で笑い合う。


「そういえば」


「青凪さんって、本好きなの?」

歩きながら、看空に問いかけた。


「うーん」


「読むというより、調べる方かな」


「企業なら経営の本とか?」


「……そういうのも」

少しだけ表情が曇っていた。キャッチボールを間違えただろうか。



図書館二件目。古い郷土資料館と併設されているらしい。

せっかくだから郷土資料館の方にも足を運んでみる。

そこで、ある古本を見つけた。


『昭和46年 都市伝承』


内容は奇妙な絵とともに、口裂け女、怪奇現象、人面犬など都市伝承というか、都市伝説に近い言い伝えみたいなものだった。情弱人間には一瞬騙されそうだな、と思った。


「この絵こわい」


「おわっ」


軽く息が触れるくらい近くに、青凪さんの横顔があった。

甘いシャンプーの香りがふわっとした。


「あれじゃない、よくある都市伝説のテレビとかで...」


「違うなぁ、惜しい」


「惜しくはないかな」


真顔で言った渾身のボケが跳ね返されてしまった。


「空賀さん、これ」


青凪さんの手招きで側に行くと、そこには昭和40年代のスクランブル交差点が映っていた。


「……あれ」


そこに一枚だけ、白飛びしている写真。

交差点の真ん中だけ白飛びしている。

説明には撮影時のフィルム異常、とだけ書かれている。


「偶然かな」


「......そうだと思う」


図書館の方にも、目立ったものはなかったため白飛びしている写真以外、収穫はゼロと言っても過言ではない。悩んでいると、気分転換に近くにある博物館に行こうという話になった。

お読みいただきありがとうございます!

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