魔法使いは少ない
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「素材はこれだけ?」
「これだけだ。……そこまで難しい錬金術では無いんだ。もの凄く素材を要求されても困る」
「闇属性の魔石に、闇属性の素材を少しかー。これで良いなら、普通に量産できると思うんだけどな」
「ですよね? 結構難しいって話を聞いてて、召喚石を手に入れるのって難航するんですけど……」
「召喚士ギルドに納品している素材で足りないって事は無いだろうし、作り方から違うのかな?」
「そんな事を言われても知らんぞ? まあ、作り方というよりは、イメージがしっかり固まっていないというのが正しいとは思うが」
錬金術も魔法も同じだ。作るものを明確にイメージできるのかどうかで決まってくる。召喚石なんかは簡単な部類だ。召喚獣を封入するイメージをしっかりと固めれば問題ないからな。基礎的な錬金術だ。何も問題ない。
「これを属性を抜きつつ、中に召喚獣を封じ込めるだけの空間を作るイメージだ。魔法も錬金術も、イメージが重要。そのイメージ次第で難易度が大きく変わってくる。ある程度体系化されているとは思うが、作り方に関してはシンプルな方だ。段階的な構築もする必要が無いし」
「錬金術もイメージが大切ってのは解るけど、そこまで変わるもの? 召喚士ギルドの感じだと、もっと素材を使っていそうなんだけど?」
「変わるな。素材が10倍から20倍は変わる可能性がある。未熟な錬金術師であればの話だがな。囲っている錬金術師はそれなりの腕がある筈だ。召喚石以外のものを作らせているんじゃないか?」
「うーん……。どうなんだろうね? 基本的には召喚石だとは思うけど……」
「召喚士に必要なものといえば、召喚石なんじゃないですか? それ以外は聞いたことが無いですけど……」
「召喚士にはその他色々と必要だぞ。まあ、そんな事よりも先に召喚石を作るが」
イメージを構築。理論を形成。魔力操作を行い、属性を抜いていく。この時、単純に属性だけを抜くのは勿体ないので、闇属性の結晶を作る。後で召喚獣を呼ぶときの供物にすればいい。その他にも、錬金術での使い道があるが。属性金属を作るのであれば、大きな結晶を作っておくに限る。強力な属性を付けたければ、それなりの大きさの結晶が必要になってくるからな。
「これをこうして。……よし。これで召喚石の完成だ」
「ねえ、こっちは? 何か別の物も出来たけど?」
「闇属性の結晶だな。色々と使い道があるが、今回は召喚獣を呼ぶための供物にしようかとは考えているが」
「……そもそもなんだけどさ。錬金術で複数の物を同時に作るって有りなの? 詳しくは知らないけど、常識外れの事をやってないかな?」
「そうなのですか? 生産職については詳しくなくて……」
「うーん。解らないんだよねえ。僕も生産職については詳しくないけど、鍛冶師なんて顕著じゃない? 武器を作る時には、武器しか出来ないよ? 出来たとしても、屑が出来るくらいでさ。物を2つ同時に作るなんてありなのかなって」
「出来るんだから出来るとしか言いようが無いな。それに、今回は特別という事もある。普通は全部使い切るんだ。が、召喚石には属性が邪魔になる。だから魔力操作で属性だけを固めるんだ。副産物ではあるが、属性の結晶を専門に作るとなると、かなりの魔力を無駄にする。こういう時に貯めておく方が節約になる」
無制限に素材が使えるのであれば、こんなことをしなくても良いのかもしれないが、ソロで活動している以上、素材は節約しなければならない。だからこうやって涙ぐましい努力もしなければならないんだ。素材が沢山あって、捨てるだけあるって言うのであれば、こんなことはしなくても良いんだろうが。
「とにかく、これで召喚石問題は解決したようなものだ。実験を行う事は可能だろう」
「……思ったのですが、ここで召喚石を量産しておくべきなんじゃないでしょうか? 出来るのであれば、した方が得策だとは思います。召喚士ギルドから召喚石を購入するのだって、結構な値段がしますから」
「確かに。ねえ、どのくらい作れそう?」
「依頼という形で出してくれるなら受けるぞ。1つにつき500ジェルでどうだ? 素材はそっち持ちで頼むが」
「……安すぎませんか?」
「安すぎるねえ。召喚石の値段を聞けば、驚くよ?」
「召喚石なんて2000ジェルも出せば買えるんじゃないのか?」
「召喚士ギルドが作っている召喚石の値段は100,000ジェルだよ。だから冒険者の召喚士が困っているんだ。召喚石が足りなくて、満足に召喚獣を手に入れられないんだよ」
高すぎるだろう……。何ぞその値段は。手間賃を入れても2000ジェルくらいのものだろう。……いや待て。素材が高騰している可能性があるのか。そうなってくると、話は大きく変わってくる。
「素材の値段はどのくらいなんだ? さっき召喚石を作った素材でどのくらいの金額になる?」
「買取価格で良いなら3000ジェルくらいだね。売価は倍くらい。だから2000ジェルは安すぎるんだよ。最低でも8000ジェルくらいで売らないと。そうなってくると、作成費は1個当たり2000ジェルくらいが妥当だと思うよ?」
「……それでも安いですけどね。そもそも召喚士ギルドで100,000ジェルを出しても、在庫がないなんて事もありますし」
「召喚士って人気なクラスだからねえ。商人なんかに多いし」
「……ああ、そう言う事か。単純労働力が使える商人に人気なのは解る」
「それだけじゃないんだよ。冒険者にも人気なんだよ。ただ、召喚石が足りないから、仕方がなく他のクラスを選んでるってだけでさ」
「何故そうなる? 召喚士はどうしても運に左右される。それなら普通に獣戦士やソーサラーになった方が良いとは思うが?」
「誰だって死にたくないからだよ? 普通は錬金術師で冒険者になるなんてありえないんだし。死んだら終わり。けど、召喚獣は死んでも12時間すれば使える。誰だって安全を選ぶと思うけど?」
……なるほど。死んだら終わりだから召喚士になる、か。確かに現実になったのであれば、そういう選択肢を取ってもおかしくはない。だが、疑問はある。死にやすいのは前衛職だ。後衛職は守られるように立ち回るんだし、死ぬ要素はあまりないというか。召喚士と同じく、前衛が死んだら後衛も終わりってパターンになりがちだしな。そこまで大差が無いとは思う。
「というか、アウスラリアもそうだったが、召喚士でも自分で戦うのがセオリーでは無いのか? 召喚士だって武器を使おうと思えば使えるし、魔法を使おうと思えば使える。戦力として余らせておく理由がないとは思うんだが」
「前衛は死にやすいってのは解るよね? 真っ先に攻撃を受けるのが前衛だし。だから、それを嫌って召喚士になるんだから、前衛なんて選択肢は初めから無い訳。そうなると、後衛職になるんだけど、殆どがアーチャーだよね。ソーサラーやウィザードは少数派だよ」
「……理解が出来ないんだが、魔法職を選ばない理由は何なんだ? 前衛が魔法を扱わないなら、アーチャーよりも優先して魔法を使えるクラスを選ばないと、パーティーとして機能しないだろう?」
「まずだけど、認識が間違っているんだと思うよ。魔法を扱えているから勘違いしているとは思うんだけど、魔法って誰から教われば良いと思う? 冒険者が冒険者を教えるのだって、お金が発生するんだよ? そもそも生産職も同じ。普通は弟子入りしたりして教えてもらうんだ。初めから魔法を使える人なんて、殆どいないんだよ?」
あー。そうか。基礎的な教育を受けていないから、魔法と言われてイメージが湧かないのか。俺は高校まで義務教育で理科の教科である程度は習う。魔法に関しても、漫画なんかで知る。だが、こっちの世界の人は、見た目だけの魔法しか知らないのか。確かにそれなら、上手くイメージが出来ないのも納得だ。




