星見の塔
OFUSE始めました。
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ただまあ、指名依頼を出すにしても、距離があると面倒なんだけどな。……まあ、錬金術師である手前、その辺はある程度楽にできる所ではあるんだけど。レシピが確立されていない物の中に、便利なものがある。それを作るだけの素材があれば、ある程度の問題は解決するんだ。
「指名依頼は受ける。どんな依頼でも良いから出してくれれば受ける」
「有難いね。……でも、本当に良いのかな? 僕は君よりもレベルは下だよ?」
「……何がいいたいんだ?」
「レベルが下の人の命令を聞く必要があるって事。君が実力を示せば、クレマグリッドの町の冒険者ギルドのギルドマスターになれるんだよ?」
「……ああ。そう言う事か」
「そう言う事。で? どうする?」
「興味がない。組織運営は面倒だ。組織が欲しい訳でもない。……クランを作るなら別だけどな。冒険者ギルドのギルドマスターがダークエルフなんだ。貴族も亜人がクランを作ったところで、反発はしてこないんじゃないか? ……ここの貴族だけかもしれないが」
「あはは。興味が無いか。なら仕方がないね。……でも、クランは止めておいた方が良いかな。クレマグリッドの町の統治形態は知ってる?」
「いや、知らないな」
「なら話しておいた方が良いかもね。クレマグリッドの町は、3つの貴族家で管理されている。ザガット伯爵家、クレドンナ伯爵家、エタニアス伯爵家の3つだよ。その内、エタニアス伯爵家が反亜人、亜人種は排斥した方が良いって考え方なんだよ。冒険者ギルドは今はザガット伯爵家が一番強くて、割と緩めだから許してくれているけど、エタニアス伯爵家が冒険者ギルドを握ったら、亜人は排除されるだろうね」
「クレドンナ伯爵家はどうなんだ?」
「あそこは召喚士ギルドと商業ギルドを押さえているよ。特に召喚士ギルドに力を入れているね。エレナール=クレドンナさんが有名でしょ? あそこは召喚士ギルドの支部長に娘を送り込んできているし」
「……なるほどな。それでもエタニアス伯爵家の影響を消せない。だから変に亜人差別があるのか」
「そう言う事だね。全くの影響なしには出来ないのさ」
話がややこしくなるな……。反亜人なのは勝手にしろとは思うが、こっちに関与してくるのは面倒だ。クランを立ち上げるのは、もう少し慎重にならないといけないだろうな。……ただ、星見の塔があるから、クランは作り得だとは思うんだよな。誰にも管理されていない施設なんだし。……というか、召喚士ギルドがちゃんと管理しろよな。最重要施設だろうが。クレドンナ伯爵家もあんまり頼れない感じか。
「まあ、そんなの関係ないって作っても良いんだけど、その代わりグラーデン君がここを離れられなくなるよ? 君の影響力は凄いとは思うけど、それもこの町に居ればって事になってくるだろうし」
「……そうなるか。クランを作るならここが一番やりやすいんだがな」
「おや? どうしてかな?」
「星見の塔を独占できるからだ。あれは冒険者ギルドで押さえておいた方が良いぞ。本来の価値に気が付いたら、召喚士ギルドが寄越せと言ってくるだろうが」
「星見の塔? あそこを欲しがるところは今の所は無いけど、そんなに重要な施設?」
「重要も何も、召喚士には絶対に必要な場所だ。召喚獣の召喚は何処でも出来る。が、魔法陣が必要だ」
「そうだね。魔法陣を使わないと召喚は出来ない。それは当たり前の事だよ?」
「何にでも例外はある。星見の塔の頂上では、魔法陣は必要ない。当たり前のように召喚が出来る」
「……え?」
「……本当かい? 俄かには信じられないんだけど?」
「本当だ。それと、召喚獣の上限も撤廃できる」
「ん? 上限?」
「召喚獣のレベルだ。魔法陣を使用した場合、召喚獣のレベルは150を超える事は無い。が、星見の塔で召喚した場合、レベル150の上限が撤廃される。理論上、どんなレベルの召喚獣でも召喚できる。……まあ、その代わり、時期を見計らわないといけないが」
「時期ってどういうこと? 星見の塔だから、夜しか駄目とか?」
「そうだ。夜の23時から25時の間の2時間のみ。それに1日1回が限度だ。それに、星見の塔の最上階には供物台がある。供物を捧げれば、ある程度の方向性を決められる。……場合によっては、望んだ召喚獣を得る事も可能だ」
「最重要施設じゃん! 召喚士の常識が変わるよ!?」
「あの……。望んだ召喚獣って、そんな事が可能なんですか?」
「方向性を決められるからな。10回やれば、5回は当たりを引ける。……問題は供物を何にするのかなんだがな。ある程度は予測が付くが、それでも召喚獣について詳しく知らなければ、供物を選ぶことも出来ない」
「研究しないといけないって事だね? これは冒険者ギルドで管理しないと駄目かな?」
「駄目だろう。召喚士ギルドが何か言ってくる前に抑えておいた方が良い。冒険者にも召喚士は居るだろう? 冒険者の質にかかわってくる」
「そうなるよねえ。こっちで確保しないと駄目かあ……」
星見の塔は召喚士にとって最重要施設だ。あるのと無いのとでは話が違う。召喚獣のレベルに大きな差が出てくるし、完全ランダムの魔法陣式から、ある程度の傾向を見いだせるだけでも大きな進歩だ。
ゲーム時代は、それはもう取り合いだった。星見の塔自体は他の町にもあるにはある。それでも、召喚士の数が少なかったから、需要と供給のバランスが取れていただけだ。……この世界にはどのくらいの召喚士が居るのかは解らないが。
「試しに今晩、使ってみるのはどうだ? アウスラリアも召喚獣を補充しておいた方が良いとは思うが」
「ですが、召喚石が無いんです。召喚石を作ることが出来るのは、錬金術師の人だけですから。殆どの錬金術師は、召喚士ギルドに抱え込まれていて、私が入手できる召喚石は、今の所ないんです」
「ならば作れば良いだけの話だ。俺が錬金術師なのを忘れていないか?」
「……忘れていました。そうでしたね。作れるのですか?」
「当たり前だ。魔石も素材も持ち合わせで何とかなる。持ち合わせが無いのであれば買えば良い。錬金術に必要な素材は、冒険者ギルドで取り扱っているだろう?」
「そうだね。素材に関しては集まるよ。でも、錬金術師の工房を借りないといけないんじゃない?」
「いや、この場で作れる。錬金術に工房が必要なのかというのは、まあ、必要ではあるんだが。だが、簡単なものについては工房が無くても作ることが出来る。工房があった方が、色々と補正を受けられるというだけだからな。難しい錬金術を試すのであれば、必ず必要になってくる。ただ、召喚石くらいであれば、この場でも作れるぞ」
「じゃあ見せてもらっても良いかな? 場合によっては、冒険者ギルドから依頼を出したいし」
「解った」
そんな訳で、錬金術を開始する。召喚石の様な簡単な錬金術なら、場所は何処でも良い。錬金術師の良い所は、物資の補充を現地で出来る所でもあるからな。例えば、ポーションなんかも補充できる。そこそこの品質のポーションであれば、簡易の錬金術で何とかなる。……錬金術にも難易度はあるんだ。簡単なものについては、その場で出来る。
魔力操作をしっかりとしないといけないがな。その位は常識的な範囲ではある。そもそも錬金術師は色々と作れるんだ。ポーションや魔道具を作るのには、他にもクラスは存在するんだけどな。ただ、召喚石は錬金術師しか作れない。専売のものはどうしても出てきてしまう。それでも、錬金術師が一番多く、色んなものを作れるんだけどな。
さて、そうなってくると、暗闇の森で採取したものが役に立つ。品質を気にしなくても良いから、召喚石の作成は楽で良い。これで品質を問われるのであれば、色々と工夫をしなければならなかったが、気楽に錬金術をすれば良いだけだ。




