保存食を作る
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皆が基礎の訓練をやったり、乱戦の訓練をしたりとしている間、俺はひたすらに保存食を作っていた。それが俺の役目でもあるんだからな。
トーラスとメイラにも手伝ってもらっているが、マジでまともな保存食が欲しい。今回直ぐに必要という訳ではないけど、次の魔境に挑戦する前には何とかしておきたい。
「うーん。まあ、これは及第点だよな。干し肉って感じの保存食だけど。ジャーキーって感じで美味しい事は美味しい。……けど、結構食べないと腹には貯まらないからな。費用がそれなりにかかる」
「とは言ってもですよ? こっちは青草粘土よりはマシですけど、味がしないですよ?」
「これもあんまりです。食べたいとは思いません」
「だよなあ。料理をそのまま保存食にするのは駄目だという事が解っただけでも収穫か。それじゃあ料理の材料を用いて料理をイメージしながら保存食を作る形で試してみよう」
「僕はそこまで料理は得意じゃないんだけど?」
「私もあんまりですね」
「俺も似たようなものだ。……だが、料理をどうやって作っているのかの見学はした方が良さそうだな。厨房に行くぞ。イメージをしっかりと固めないといけないからな」
そんな訳で、厨房へ。今は昼飯を作ってくれているはず。使用人の料理スキルは中々に高い。結構美味しい料理を作ってくれている。……朝ご飯の時に、作って貰った料理からでは保存食は作れなかった。それなら素材というか、材料というか、そこから料理を組み立てるように、保存食を作ったら良いのではないか。そう思う訳だ。
そして、料理を見学した訳なんだけど、中々に凄いな。錬金術に近しいものを感じる。工程をしっかりと頭の中に描きながら、素材を処理していく。そして、最後にはそれらを1つの料理へと組み込んでいく。
料理は錬金術に似ている。そう思った。これなら何とかなるんじゃないか? イメージがしっかりとしているのであれば、錬金術は割と何でも作ることが出来るんだ。
まあ、イメージがしっかりしていないと、何が出来上がるのかが解らないんだけど。けど、料理の風景をみたら、錬金術と似ている。そう感じることが出来た。ならば、料理の様に錬金術で保存食を作れるかもしれない。
そんな訳で、試してみた。麦をすりつぶし、野菜をカットして、錬金釜で煮る。そんな感じで、よく解らないものが出来上がると。何が出来たんだろうね? まあ、それよりも美味しいかどうかなんだけど。
「……どうだ? 割とマシになったんじゃないかとは思うが」
「美味しいとは言えないですけど、青草粘土よりは大分マシじゃないですか?」
「旨味が感じられないですけど、食べられるだけマシというか……。けど、目的の物じゃないのは解ります。これじゃない感が凄いです。これなら普通に料理を持っていくのと変わらないと思いますよ? マジックバッグの容量を食ってでも、料理を入れた方がマシです」
「だよなあ。なんでこうなるんだ?」
「解りませんが、錬金術と料理は似ているんですから、料理人にアドバイスを貰うのはどうでしょうか?」
「料理人にアドバイスを? ……割とありか?」
「ありじゃないですか? 何というか、作り方は料理に近い訳ですし、何かしら思う所はあるんじゃないですかね? 感じたままに言ってもらえればとは思うんですが」
「そうしてみるか。それじゃあ使用人を集めるぞ」
そうして、使用人を集めて錬金術をして、保存食を作る。使用人には、思った時に口出ししてもらう事にした。
こうした方が良いんじゃないか。この工程を挟んだ方が美味しくなるんじゃないか。そもそもこの工程は必要ないんじゃないか。そんな感じでどんどんと口に出してもらった。
何度も何度も言われながらも錬金術を続けた。……耐熱煉瓦の粘土を作る時とは違って、爆発はしない。その分、出来上がることは解るんだけど、どうしても味がな。
と、思っては居たんだが、3回目、4回目と回数を重ねていくうちに、どんどんと味が良くなっていく。必要な工程は多くなる一方だ。だけど、それでも美味しい保存食が出来上がりつつあるというのが素晴らしい。
10回目には、普通に食べて問題ないというか、あ、これなら食えるなって思えるものになってきた。この調子でどんどんと味をつけていきたい。
2日目、3日目と、何度も何度も口を挟んで貰いつつ、今度は料理の解説もしてもらった。こういう行為には、どんな意味があるのか。この工程を挟むことで、こういう風な味になるとか。
色々と口出しを受けた。錬金術師3人では、思いも付かない事も工程に挟んだ。何故に磨り潰すのか。何故に大きく切るのか。それに関してはそもそも切る必要が無いんじゃないか。
色々な意見が飛び出した。それと、味見をしてもらっていて一番感じ取れたのが、調味料が圧倒的に少ないという事だった。錬金術での料理は、通常の料理よりも調味料が多く必要になることが解ってきた。全体的に薄味なんだよな。
そして始まったのが、調味料を作る工程を挟むこと。先に調味料を作ってしまうのだ。それによって、味に旨味が乗るようになり、料理と同じような味がする様になってきた。
5日目の夜。遂に保存食が完成した。味は20種類を用意。カロリーメイトの様にブロックになったそれは、様々な味がする。
何の料理かと言われると、ちょっとよく解らないが、それでも美味しいと思えるだけの保存食は作ることが出来た。
「納得のいく味になったな……」
「何とかですね……」
「こんなに時間がかかるとは……」
「さて、今度はこれを量産してもらわないといけない。確実に売れるからな。今までの保存食しか無かったところに、これを売り出せば確実に売れる」
「それはそうでしょうね。……ですが、問題もあります」
「錬金術師不足、ですね。2人ではどうしようもないです」
「その辺は任せておいてくれ。明日からは錬金術師を探しに行く。訓練も兼ねて色々としないといけないだろうが、まあ、2週間もあれば使い物になるだろう。そこからはトーラスとメイラが育成していってくれ。保存食を錬金術で作れるというのは大きい」
「僕たちが育成をするんですか?」
「とてもじゃないですけど、自信が無いですよ?」
「大丈夫だ。何とかなる。教えることも自分の上達に繋がる。理解できていることを言語化することによって、新たな深みに到達できる。錬金術は進歩していくものなんだ。教えて初めて解る事もある。因って、頑張ってくれ。人数は揃える。というか、生産職を大々的に募集する。まあ、探しに行くんだけどな」
そんな訳で、色んなところを探し回って、13人集めてきた。錬金術師が6人。鍛冶師が2人。細工師が2人。付与師が1人。服飾師が1人。革職人が1人だ。錬金術師が多いのは、それだけ重要だと思ったからだな。他は見つけた良い感じの人を引き抜いてきた。
これで何とかなるだろう。生産職も19人まで増えたんだ。色々とやれることが多くなってくるはずである。錬金術師でも出来ることは多いが、専門職には勝てないからな。それだけの生産職が揃ってきたという事でもある。中々に良いんじゃないかな?
そして、クレマグリッドの町に帰って、皆に保存食を食べて貰った。……まあ、見た目は青草粘土と同じような感じだからな。戸惑いはするだろう。
だが、味は全く違う。普通に美味しいと思えるまでに仕上げたのだ。自信作である。……特殊な効果なんかは無いかもしれないが、それでも良いんだ。
保存食にまで、特殊な効果を求めるものじゃないし。色々と付与できるかもしれないなとは思いはしたが、それをしてどうなるというんだ。
味は変わらない。満腹度合いも変わらない。だったら、特に意味はないとは思う。食べたら5時間くらい攻撃力が+30されるとか、そういったものであれば効果はあるんだろうけど。
流石にそこまでのとんでもない効果は付かないと感じた。良くて10分程度の物だろうな。食事をして、即戦闘しなければ意味のないバフだ。
そこまではしなくても良いだろうと思う。食事は食事であるべきなんだ。……青草粘土から目を逸らして。
まあ、美味しい保存食が作れるって事になるんだから、クランとしても儲かるとは思う。保存食を貯め込んでいるのは何処の商人も同じだろうしな。不足の事態には備えているとは思うぞ。




