基礎訓練の重要性
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死ぬんじゃないかと思った。それがパーティーの最初の言葉だった。……この程度では死なない。簡単には死なない。けど、無限に襲い掛かってくるんじゃないかって思ったのは良い事ではある。実際はそんな事はないんだ。魔物は有限である。無限に湧いて出てくるかもしれないが、無限には襲い掛かってこない。
でも、これで解っただろう。前衛が魔法を使っても良いのだ。タンクが魔法を使っても良いのだ。後衛が盾を持っても良いのだ。ヒーラーだけは何としてでも守らないといけない事も解ったはずだ。
今日の戦闘で得た知識は大きいはず。明日は休みにするから、皆休養を取って、必要だと思うものを揃えて欲しい。何が必要なのか、解っただろうからな。
生産職にも話をしにいかないといけないだろうし。これが訓練の序章だ。まだまだこんなものでしかないんだ。次はもっと苛烈に行くからな。
死なないための訓練だ。死んでは元も子もない。死んでしまえばそれでお終いだ。だから死なないようにするために、訓練をしている。必死になって覚えて貰わないといけない事ではあるんだ。
「グラーデン。ちょっといいか?」
「クレイスか。何かあったか?」
「ああ。今回の乱戦ではっきりした。前衛の基礎がまだまだ育っていない。実戦訓練も大切だが、基礎の訓練も必要だ。その動きがまだまだ染み付いていない」
「……流石に貴族だけあって解るか。そうだな。基本的な動きがなっていない。だから無駄に体力を使うし、余裕がない。基礎訓練もするつもりではあったけど、もうしたいってか?」
「そうだ。明日は休暇で、その次の日にはまたあの訓練だろう? それの予定を変更させに来た」
「基礎訓練をした方が良いと?」
「ああ、そうだ。……レベルが上がれば、感覚が狂うのも解っているが、それでも先に基礎を叩き込んだ方がいい。特に足さばきだな。その辺は教えた方が良さそうに思える」
「なら、基礎の訓練の時間も作ろうか。明日は休み。それは変わらない。明後日は基礎の訓練。基礎の訓練をするのであれば、エルト平原の方が良いだろうから、そっちに皆を連れて行ってくれるか?」
「ん? グラーデンはどうするんだ?」
「俺はタールスエニスの町に行って、新しいクランメンバーを見つけてくる。そうだな。大体10人くらいは入れる予定だ」
「なるほど。基礎の訓練だけなら俺だけでも教えられるか」
「だろ? それなら俺は別行動をした方が良いとは思う。クランメンバーも増やしていかないといけないし。追いついてこないと、他の奴らがやる気にならないだろう?」
「抜かされるって思いが無ければ、難しい事もあるか。……魔法はどうするんだ?」
「教えやすい幻属性を使ってもらう。まあ、タールスエニスの町で訓練をするのは自分たちでやって貰わないといけないけどな。頑張ってレベル30くらいまでは上げて貰わないといけない」
「新人には中々に難しい課題になりそうだな」
「でもそのくらいの課題を熟せないと後がないだろう?」
「それは言えている。上を目指したければ、あの訓練は絶対に必要だからな」
「乱戦の立ち回りを覚えないと、遅かれ早かれ死ぬからな。何をしたらいけないのか。何をすれば正解なのか。それを覚えてもらう必要がある。後は、魔法使い系のクラスでないと、魔法を使ってはいけないって認識から変えてしまわないといけないとは思っているが」
「その認識から抜け出すのは難しい。俺も苦労をしている。まさか剣を抜くとは思わなかったからな。貴族として、剣は最低限扱えるが、それでも魔導爵家の出だからな。魔法が当たり前だと思っていた。それで何とかするのが当たり前だと思っていた」
「生き残るためには、何でもやらないといけない訳だ。魔法使いだって、射線を通すために移動をしないといけない事もある。待っていても時間の無駄だからな。自分から動いた方が早い。しかし、それをするにしても、前衛の動きをある程度覚える必要がある」
「全くだ。だが、それをするにも、足捌きを覚えないと読みにくい。誰しも癖はあるが、ある程度同じような動作をしてくれた方がまだマシだ」
「言われなければもう少し先でと思っていたんだが、言われてしまったのであれば、先に熟そうか。その辺は任せてもいいか?」
「ああ、任せておけ。基礎の訓練はこっちでやっておく。……グラーデンは良いのか?」
「俺は貴族とは違うかもしれないけど、ある程度の基礎は出来る。そうじゃないと死んでいただろうしな。その辺は独自でやっていたが、覚えることは出来ている」
「そうか。連携についても言わずもがなか」
「即興で合わせることは可能だ。まあ、ある程度のレベル帯になってくれば、俺も訓練に参加するけどな。その時には、誰が入っても問題ないくらいの連携力にはなっているとは思う」
「それもそうか」
そういう事だな。という事は、基礎訓練に1日を使う事になる。思ったよりも早くに基礎訓練をすることになったな。もう少しレベルが上がってからでもいいかとは思っていたんだが。
レベルが上がると、身体能力も多少は変わってくる。限度があるけどな。それでも感覚としては研ぎ澄まされて行くんだ。だから、基礎を教えるにも、ある程度のレベルが欲しかったんだよな。
貴族みたいに、じっくりとやる余裕は無いから。ある程度動けるようになった方が、基礎も覚えやすいとは思うんだよ。
俺はゲームで覚えた。誰もが初めから戦闘が出来ると思ってはいけない。ゲームにだってチュートリアルがある。そこで動きの基礎を学ぶんだ。
初級がクリア出来れば、後は自分で色んな場所に行って、実力を磨けとは言われるんだけど、更に中級、上級、超級まで基礎の訓練がある。ソロプレイヤーの俺は、超級までの基礎を終わらせているんだよ。というか、多くの人は超級までやっているとは思う。
そうじゃないと途中で厳しくなってくるからな。どうしても動きに無駄があるんだから、勝てない敵も出てくる。そういう時は基礎からやり直せって事ではあるんだよ。
だから誰もが基礎をやっている筈である。天才? 知らないなあ。そういう才能がある奴らも居るとは思うけど、多くはない。絶対に基礎を学び直した奴が殆どのはずだ。天才であれば、そんなに苦労はしなかっただろうな。
割とガチの訓練をやらされる。寸分の狂いなく、体を動かすことを要求される。超級とはそういうレベルの基礎だ。脳で理解させ、体で理解させる。癖も矯正される。まあ、二度とやりたくないとは思うんだけど、一度はやっておけって感じなんだよ。
後は先読みの精度が何処まで上がってくるのかだけどな。先読みをしないといけないのは、前衛も後衛も同じだ。先読みしやすいように、前衛はアーツを中心にして組み立てていく方が良いんだけど。
対人戦をやる訳でもないんだ。魔物戦ではアーツを使いこなさないといけない。その辺もしっかりと覚えて貰わないといけない。アーツも脳で覚えて、体でも覚えないといけない。その辺はやり込み要素としてあるんだよ。
後は魔法だな。魔法も曲射なんていう芸当を身に付けないといけない訳だ。真っ直ぐにしか飛ばせない訳じゃない。誘導弾は難易度が高いが、曲射くらいは出来ないといけないんだよ。
障害物で魔法が通りませんなんて話にもならない。だから暗闇の森で訓練をしている訳だし。多分だけど、その内誰かが気が付くとは思う。
そうやって自分で気が付いて、自分で考えないとものにならないってのもあるんだよな。全部を教えていては、育たないって考え方もあるんだ。
俺はその口である。何もかもを教えていては、身に付かない。いざという時に出来ないって判断になってしまう。どうにかして何とかしないといけないって状況に放り込まないと、人間って成長しないものだと思っているから。
それでも成長しない人は、そこが限界値なんだろう。まあ、教えたらその分は進むのかもしれないけど、レベル150以上からは通用しないんじゃないかなとは思う。そのくらいで頭を抑え付けられるとは思う。
その時に切り抜けられるのかどうかというのも、見極めていかないといけないんだよな。ゲームは楽しいから試行錯誤をする。今は現実になった。そうすると、生き残るためにやらなければならなくなるんだよ。状況は悪化している訳なんだけど。




