クランの名前
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「まあ、それも大切な事だが、それよりももっと大切な事があるだろう?」
「大切な事? これよりもか?」
「ああ、クランの名前だ。グラーデン、お前、研究に没頭しすぎて忘れたんじゃないだろうな?」
「あ、ああ。完全に忘れてた。……何にしようか?」
「お前なあ。俺をパーティーに誘った時、クラン名も考えておけと言っただろう?」
「言っていたな。……どうするか。何かいい名前はないか?」
「こういうのはクランマスターが決める事だ。構成員に決めさせることじゃない」
「……そう言えば、クランクランと言っていましたが、名前をどうするのかって決めていませんでしたね?」
「命名が苦手なんだよ。さっきの属性だって、とりあえず火水属性にしておこうって言ったばかりだろ? 割とそんなのしか思い付かない」
名前を付けるのってマジで面倒なんだよな。キャラクター名であるグラーデンですら1時間くらい悩んだんだぞ? それでもこの程度だ。この体たらくだ。どうしろって言うんだ。
クランの名前なあ。かっこいいのが良いよなあ。言葉の響きがかっこいいのが良い。何が良いかな……。
「普通はどんな名前にするのが一般的なんですか?」
「そうだな。一番多いのは目標を掲げている所が多い」
「例えばどんなものがあるんですか?」
「知っているものでいけば、夢幻剣士同盟、クラス大剣豪、魔法研究会とかだな。目標や何をしたいのか、それが明確になっていることが多いな」
「夢幻剣士同盟は、幻属性を使う剣士の同盟って意味でしょうか?」
「いや、違う。昔に居た夢幻の剣士という異名を持った人が由来だ。剣士というクラスでありながら、大剣豪を超えた強さを持っていたとされている。デカルデント王国の王都にある、結界を維持している魔石を入手した人物だな」
「……結界を維持しているという事は、精霊の魔石だな。精霊の魔石は特殊だから」
「だね。精霊の魔石は魔力を吸収する特性を持つ。だから魔力切れが起きない。僕も倒されたらその魔石を落とすはずだよ。まあ、召喚獣になっているから、それは契約が終わってからの話だけどね」
「その特性を応用した魔道具も存在する。まあ、作るのにかなり苦労はしたが、研究した甲斐があるってものだ。……もっとも、精霊の魔石ほど吸収はしてくれないが」
「全く、人間は直ぐに真似て作ってしまう。いや、君だけが特殊なのかな?」
「さあ? でも、発想力の源は、現状にあるものだからな。精霊の魔石がそんな特性をしている方が悪い」
「……一部の貴族でしか知らない話なんだがな。魔石が魔力を吸収するというのは。基本的には魔導爵家か公爵家しか知らないはずだ。古い貴族家なら可能性はあるが」
「この2人に常識を問うても無駄ですよ。何故かよく知っているグラーデンと、喋る精霊のシルエンディール。この2人は特殊なんです」
「まあいい。それよりもだ。クランの名前だ。それを考えない事には話は始まらない。俺たちのクランの事を聞かれた時に、何といえば良いのかが解らないだろう? まだ名前がないというのも変な話だ。何のために集まったのかが解らない」
「うーん。目標といってもなあ。最強になることと、時間の魔王ルーレンディーレを倒すことくらいしかないんだよな。後は、亜人のクランってくらいか?」
「亜人のクランを連想させる何かが良いんじゃないですか?」
「うーん。デミとか?」
「デミって亜人の蔑称ですよ? 流石にそれは無いでしょう」
「お前、本当にネーミングセンスが終わっているんだな」
「放っておいてくれ。マジでこういうのは苦手なんだ」
本気で苦手なんだよなあ。こういうのって。研究は好きでやっているから良いんだけど、研究成果に名前を付けるのはマジで無理。
苦手なんてものじゃない。新しい商品の名前を付けるだけでも嫌なのに。商品開発部じゃなくて良かったって思ったことがある位には。
何かかっこいい名前は無いかな。大体ドイツ語にすればかっこよくなる説って聞いたことがあるけど、ドイツ語なんて殆ど知らない。
無駄にかっこよくなるんだよな。英語でも良いんだけど、ドイツ語の響きがかっこいい。何とも言えない響きがあるんだよ。
「具体的な名前を考えようとするから難しいんだ。別に抽象的な名前でも良いんだぞ?」
「目標を入れずとも、何かしら意味のある単語でいいのでは?」
「それでも良いな。単語1つで解りやすい。単語を選べば良いだけだ」
「ナーセンシュライムとか?」
「……なんて意味なのですか? 知らない言葉ですけど」
「鼻水」
「流石にそれは……」
「馬鹿にも程があるだろう……」
「いや、流石に冗談だからな?」
「当たり前です。鼻水クランといわれて、入りたがる人が居ると思いますか?」
「最強を目指すのであれば、そんな名前にはしないだろうな」
そらそうよ。でも、最強って言ってもなあ。最強ってパワフルとか? ストロンゲストとか? そういうのだとなあ。微妙感があるじゃないか。
かっこいい響きで、何かしらいい意味の単語は無いものか。
「最強同盟とかどうなんですか?」
「既にあるクランだな。……まあ、最強にはほど遠かったが」
「あるんですか……。しかも最強では無いんですか?」
「この町にあるクランで、歴史の古い所ではある。昔は最強を目指していたらしいのだが、今はこの町で最強になれば良いらしい。……この町が何と言われているのか知っているか?」
「この町は初心者の町だとか」
「そうだ。初心者の中で最強と言っても馬鹿らしい。俺も気になって調べてみたが、レベル40程度しかない。それで、他の町に行かずに、最強と名乗っているんだ。馬鹿だろう? 上を目指すなら、そんな所では駄目だ」
「ですね……」
「しかも、最強というのは結構多い名前でもある」
「そうなのですか?」
「ああ、最強同盟、最強会、魔法最強同盟、最強の斧、レベル最強戦線、なんかが挙げられる」
「割とあるんですね。最強を付けた名前が」
「ああ、まあ、何処も昔に付けられて、今は名前負けしているという感じだな。昔は強かったんだろう。とは思う。そこまでは知らない。興味が湧かなかった」
「まあ、今強くなければ意味がないですしね……。昔強かったという事は、人間のクランですか?」
「人間限定のクランだな。亜人限定のクランは珍しい。基本的には人間至上主義派が貴族に居るからな。そういったクランは潰されやすい。最近はあまり良い噂が無いが」
「人間至上主義派にですか?」
「そうだ。一部から黒い噂が出てきている。何でも本気で亜人を排斥する様な動きを見せようとしているらしい。嘆かわしい事だが」
「……それは」
「事実、それで町を追われた連中も居るらしいからな。普通はそんな事までしない。亜人種の方が優れている所もあるんだ。追い出したりせずに、適材適所で共に歩めれば良いんだがな」
「そうですね。そんな自由が無い場所は流石に嫌ですね」
「おし、決めた。これなら良いだろう」
「……なんだ? 一応聞いておこう」
「リベレーションズ。これでどうだ? 自由とか解放って意味だ」
「ふむ……。響きは悪くはない」
「意味も悪くはないですね」
「だろ? 亜人を解放していくんだから、この名前で行こう」
「亜人の解放か。まあ、貴族には成らん方が良いだろうがな」
「昔で懲りたんでしたか。寿命が長いせいで、誰も貴族になりたがらなかったと」
「そうだ。人間でも辟易とするんだぞ? それ以上に寿命の長い種族は本当に面倒だと思うだろうな」
まあ、貴族になんてなろうと思っても成れないだろうし、なりたくもない。統治とか面倒で嫌だ。そんな事をする暇があるなら研究をしたい。
まあ、色んな枷から解放されて行けば良いんだ。まずは常識からだな。
ある程度の研究を進めていけば、どうしても常識にぶち当たる。それを破るためにも、自由が必要だ。そこからの解放が必要なんだ。
だからリベレーションズ。皆で解放されて自由に生きよう。自由を謳歌しよう。そんな意味だ。俺は自由が良い。不自由は困るんだよなあ。研究が出来なくなるし。
さて、これでクラン名は決まったも同然だな。この2人くらいだろう。拘りが強いのは。後の連中はそこまで気にしていない気がする。普通の名前なら何でも良いんじゃなかろうか。
まあ、普通の名前が難しいんだけど。今回だって漸く捻り出したんだぞ。……それでもまだダサいと思うんだよな。もう少しかっこいい響きのクラン名を思い付ければ。そう思っている俺だっているんだよ。




