クランハウスを見に
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ギルマスから話を聞いた限りでは、危険な依頼ではあるが、こちらもメリットがあるというか、やっておかないと物流が死ぬというか。そういう訳だから、受けないって事はあり得ない。受けて解決してしまった方が良い。
それと、一応ではあるが、クランハウスも確認しておかないとな。色々と仕込んでおきたいし、クランハウスの場所は確定しておく方がいい。……例のものも設置しておかないといけないからな。
「クランハウスを見に行くのですか? 確かに確認は必要ですよね」
「確認は必要だろうな。まあ、滅多に使う事は無いんだが。安全度で言えば、高級宿の方が高いからな。アウスラリアは狙われやすい。高級宿に籠っていた方が良いとは思うが」
「まあ、ここの町ではそうですよね。クランハウスで寝泊まりするよりは安全でしょうし……。でも、クランハウスもある程度は安全にするんじゃないんですか?」
「ある程度はな。ある程度の攻撃には耐えられるようにしておかないといけない。強硬手段に出られても、ある程度はもつようにしておかないと駄目だろうな」
「……言っておいてなんですが、本当に襲撃なんてあると思いますか?」
「無いだろうな。わざわざ狙う事は無いと思う。そうだろう? エタニアス伯爵家が残っているのであれば、考えないといけなかったかもしれないが、追い出せるんだ。兵士も亜人差別をする様な奴らは首になるだろうし、心配する事は殆どないはずだ」
「後は嫉妬に狂った冒険者くらいの話ですか……。まあ、最近はそれも薄れてきましたけどね」
「自分が追い抜かれると思うと、嫉妬もあるだろうが、追い抜かれたならもうどうする事も出来ないからな。諦めが付く奴らも居るという事だ」
嫉妬で怨まれているのであれば、圧倒的に抜けてしまえばいい。それで大体の奴らは黙るからな。
それでも嫉妬をしてくる奴らは、どうしても嫉妬するんだ。どうする事も出来ない。それなら放置するのが一番簡単だ。
そもそも1度町から移動をするからな。アウスラリアの話も一度途切れれば、忘れる奴らも出てくる。それに、ずっとこの町で燻っている奴らを敵にしたところで、そこまで苦労する訳でもない。
皆、成長して、この町を出ていくんだ。それが1年後なのか2年後なのかは、努力次第である。他人の事を考えるよりも、自分の事を考えた方が有意義なんだがな。
そんな感情をぶつける相手が居なくなれば、ある程度は忘れてくれるだろう。なんでまた返ってきたんだとは思われるかもしれないが、いい方向に解釈してくれればいいとは思う。
まだ先では通用しない程度のレベルだったのかと思われると、非常に楽でいい。そうする事で、嫉妬は和らぐからな。まあ、ただパーティーを組みに行っただけなんだが。
そんな訳で、クランハウスまでやってきた。……見た目は本当に普通だな。セキュリティも普通な感じなんだろうな。特に色々とやっておかないといけない部分は、壁と屋根か。柱も強化しておかないといけないだろうし、やることは沢山ある。
「これがクランハウスですか。……何というか、何とも言えない場所にあるんですね?」
「まあ、それは仕方がない。合鍵は作ってある。クランメンバーになる奴には渡せるだけの数はあるはずだ。無理ならまた作ればいい。鉄で作るだけだし、魔道具でも何でもないからなあ」
「そもそも魔道具の鍵って知らないんですけど?」
「一応あるぞ。セキュリティをしっかりとしたければ、魔道具の鍵を使う方が良い。まあ、鍵をどうのこうのするよりも、壁をぶち破る方が早いんだが」
「……物騒ですが、その通りではありますね。壁を壊されると、どうしようもないです」
「だから壁は強化しておく。鉛が大量に手に入っているからな。それを使って、ある程度の強化はしておくべきだ。ただ、それだけだと柱が持たないだろうからな。柱も強化する必要がある。その辺は俺がやっておくから」
「お願いします。頼ってばかりですが」
「何、錬金術師の本領発揮という奴だ。それじゃあ中に入るぞ」
中に入る。普通の建物とは違うのかと思いきや、そんな訳でもなく。まあ、食堂や居間みたいな部屋が広かったくらいで、後は小部屋が幾つかって感じだな。3階建ての建物ではあるんだが、横にも縦にも広めに作ってある。……が、一部大きな種族を加えるなら、この拠点じゃあ駄目だろうな。
そうして、小部屋の1つを、例の場所にしてしまう。
「それは何ですか?」
「これはホームストーンと呼ばれる魔道具だ。これをこの拠点に設置しておく。そうすると、魔力が供給される仕組みになっている。……まあ、魔石は交換しないといけないんだが、それはまあ、何度も何度も使えばどうしても交換しなければならないんだ。周囲の魔力を取り込むようにも出来るが、それには素材が足りなかった」
「そうなのですね。これでセキュリティが確保されるんですか?」
「いや、これはセキュリティに関係するものではないな」
「……それじゃあなんで設置するんですか?」
「ホームストーンは、魔力を登録しておくことで、別のホームストーンの所まで転移が出来る。それなりの魔力量が必要になるが、便利なものだぞ。移動の手間が少なくなる」
「……それは、そもそも発表しないと不味いものなのではないですか?」
「いや、多分だが貴族やその手の連中は知っているだろう。俺のオリジナルって訳でもないんだしな。ある程度の奴らは知っているとは思うが。ギルマスは流石に知らないかもしれないが。まあ、便利なものではあるんだが、管理は必要だ。魔力も多く使うし、魔道具の維持にも魔石を使う。頻繁に移動する様なものでも無いんだ。そうだな。1日に10人くらいまでしか使えないと思った方が良いとは思う。その度に魔石を交換しないといけないからな。魔石さえ交換すれば、1日に1000人2000人と使っても良い訳だが。コストはそれなりにかかる」
周囲の魔力を取り込むようにした場合でも、結構人数制限はあったりするんだよな。共用のホームストーンも存在したが、有志が各地点においてくれてあるってだけだし。普通は個人で使うものだ。拠点なんかに飛ぶために使うものだしな。……しかも、魔力登録が必須なので、行った事がない地点には飛べないって縛りがある。ゲーム内では、規格が違ったものにも飛べなかったから、プレイヤーは皆同じ規格で作っていたんだよ。
そうしないと不便だからな。誰かが設置したホームストーンを使う事が出来ないってなると、非常に面倒だ。規格を同じにして、皆で共用にした方が便利ではあったんだよ。……勿論だけど、機密を管理したい人たちは、別の規格で作っている人も居たけど。何かしらの手段で、飛んだことがない場所に飛べるようになっても困るからな。
「本当に非常識ですね。こんなものが広まれば、色々と悪用が出来てしまいます」
「だろうな。だから貴族なんかも公開していないんだろうし。特に急ぎの用事が無ければ、これを使う事も無いとは思うが、念のためにな。何かあった時のために、拠点にはホームストーンを置いておきたい。……本当は魔境の近くにも設置したいんだがな」
「それは流石に無理でしょう。価値を知っているものからすれば、盗みをするのは当然ですし。知らなかったとしても、魔道具であることは解るのですから、回収して売り払うなんてこともあり得ます。その辺にしれっと置いておくことは難しいでしょうね」
「だよなあ。暗闇の森に設置しておけば、狩りの時間も増やせるんだが……」
普通に野ざらしは駄目だろうからなあ。そうやって置いておけば、他の人も使えるんだが、何せ規格を統一しないといけないからな。そんな面倒な事をするのかって話もあるし。貴族が隠しているのであれば、更にややこしい事になってくるし、こっそりと使うしか無いんだろうなって。




