亜人差別
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クレマグリッドの町まで3時間くらい歩いた。……ゲームだったら5分もかからなかったんだけどな。その辺はフィールドが広くなったという事ではあるんだろう。それが普通だよな。魔物が近くにいる環境の方がおかしい。魔物は畏怖すべきものである。一般人にとっては危険でしかない。
魔物が居る場所の近くに住みたいかって話だよな。俺なら住みたくない。危険な場所だって事だし。幾ら貴族の私兵が町を守っているからといって、近くに魔物の巣があったら嫌だろう?
……ただまあ、クレマグリッドの町であるなら、召喚士が居てもおかしくはないんだよな。召喚士が一番初めに滞在する町といえば、クレマグリッドの町だし。
クレマグリッドの町の西側が暗闇の森になる。が、反対側の東側にはデボン高原の手前に星見の塔がある。召喚士なら1度や2度は使ったことがある施設だ。まあ、俺も使ったことはある。何をする場所かと言われたら、召喚獣を召喚する場所だ。
一応ではあるが、魔法陣を描いて行えば、何処でも構わないんだが、星見の塔は魔法陣を使わなくても召喚獣を召喚できる。契約できるかどうかは別問題ではあるんだけど、召喚されてくる召喚獣は基本的には人類に友好的なので、召喚石に入ってくれる場合が多い。
特に星見の塔は、供物を与える事で、より強い召喚獣を呼ぶことが出来るのだ。供物には色々とあるが、多いのは属性関係の素材だったり、加工物だったりする。だから、錬金術師の俺が呼び出したこともある。……召喚獣は売買が出来たからな。クラス召喚士でしか、召喚獣は扱えない。が、召喚して契約するだけなら、どんなクラスでも可能ではある。使い手を制限してくる召喚獣も居るので、そういう時は送還するしかないんだけど。
「止まれ!」
「身分確認だな? 済まないが身分証が無い。1000ジェルで頼む」
「いや駄目だ。呪人だろ? 最低でも150,000ジェルは貰わないとなあ」
「は? ふざけてるのか?」
「呪人でも通してやるって言っているんだ。感謝されこそするだろうが、恨まれる事はしていないが?」
「ふざけていないで1000ジェルで通してください。それとも、上に話を通されたいですか?」
「これはこれは獣人の小娘。召喚士ギルドから目を掛けられているからと調子に乗るなよ?」
「……あなたはそれでも貴族に雇われた兵士ですか? 150,000ジェルなんて大金を渡す規則なんて無いはずですが?」
「調子に乗るなよ、亜人風情が。ここを通さないって言っている訳じゃない。ただ、金を支払えと言っているんだ」
バン バン バン バン バン バン バン バン
なるほど。人間以外を亜人として差別していると来たか。アウスラリアもそれ関連で何かしらあるのかもしれないな。……まあ、こっちには関係ない話だな。話が出来ない奴が門番に居るのだから、替えを用意するまでだ。
何、特に問題はない。風属性魔法の応用だ。音だけを出している。……それなりの大きな音だからな。衝撃波は半端じゃないとは思うが。特に町の外壁の中に居るのであれば、とてつもない音が響いているとは思う。
「な、なんだ!? なんだ!?」
慌てているな。まあ、当然ではある。急に爆音が鳴り出したら異常だと思うのが普通だ。当然のように、待機している奴らが出てくる。
「何が起きた!?」
「何事だ!」
「魔族の襲撃か!?」
そうなるよな。そうしたら、こいつはどう出る? どう動く?
「何もない。そうだろう? こっちは1000ジェルで通行しようとしているんだ。それで不満は無いだろう?」
「……呪人か。珍しいな」
「まあ、通行料を払うなら問題ないだろう」
「それで、音はどうした?」
「音は俺が出したんだ。出した理由については――」
「いや! それは俺が説明しておく! おまえらはさっさと通行料を支払って通れ!」
「だそうだ。アウスラリア、頼む」
「では、きっちり、1000ジェルです。確かに渡しましたよ?」
「ああ! 早くいけ!」
どうせもみ消すんだろうが、まあいい。通れればこっちのものだからな。……亜人差別か。面倒だな。貴族が絡んでいるのか、それとも。
「グラーデンがやったんですよね? どうやったんですか?」
「風属性魔法だ。ただ音を出すだけの魔法だ。魔物を意図的に呼び寄せたりするときに使う魔法でもある。もっと衝撃波を出すなら、嵐属性でも良かったんだがな。流石に外壁を壊すわけにはいかないだろう」
「流石にそれは不味いですね。……魔法の腕も良いとなれば、何で冒険者じゃないのかが気になるんですが……。普通は身分証を持っていますよね?」
「村から出なかった。それだけだ。村である程度の事は出来たからな。……実験に失敗して、暗闇の森に飛ばされたんだが」
「実験に失敗? 何かの魔法でも研究していたんですか?」
「複合属性金属の研究だな。……何で失敗したのかなんかは解らない。成功する見込みでやっていたんだが」
「? 金属? クラスは魔法使い系の何かでは無いのですか?」
「違うな。俺のクラスは錬金術師だ」
「……え?」
「ん? 何かおかしいか?」
「錬金術師って、生産職ですよね?」
「そうだが?」
「……何で戦えているんですか?」
「自分の武器や防具は、自分で揃えられた方が良いだろう? 他人の力を頼りにするのであれば、クランを立ち上げるなどしなければならない。ソロでやっていくのであれば、自分で何もかも出来なければ意味がない」
これは本当にそうなんだよな。俺が錬金術師をしているのは、自分の装備を他人に作ってもらうというのが出来なかったからだ。自分が他人の装備を作るのも微妙だったんだけどな。ノルマなんて無い方が良いし。必然的に腕の良い生産職は、クランに抱え込まれる事になるし、戦闘職にしても良い武器を回してもらえる可能性は上がるんだけど。結局、自分に合うかどうかは使ってみないと解らないからなあ。それなら自分で作った方が早いってなるし。
選択肢としては、属性特化の魔法使いよりも、どの属性も使えるソーサラーやウィザードが良いんだろうけど、そうするとクランに所属しないといけなくなるし。生産職は生産職でノルマがあるんだけど、戦闘職もノルマがあるんだよなあ。1週間に5回以上のインをしなければならないとか、最低3時間はプレイしなければならないとか。場合によっては、仕事を休んでイベントを熟さないといけないとかあるので、非常に面倒なんだよ。
「クランですか……。私も縁遠いものですね。……普通なら入った方が良いのかもしれないですけど、私は獣人なので」
「まあ、門で亜人差別に遭ったばかりだからな。何と言うか、それが普通なのか?」
「冒険者ギルドはそうでは無いですよ? ですが、冒険者がどうなのかまでは解りませんから」
「……だからアウスラリアもソロだと?」
「私の場合はもう少し別の理由もあるのですが、まあ、大まかにはそうです」
獣人だとクランにも入ることが出来ないと。というか、亜人でクランに入ることが難しいんだろうな。……そうなると、生産職なんかの繋がりが利用できない。それで召喚士のソロは辛い所がある。召喚士はソロ向きではないんだよな。装備が揃わないと厳しいクラスではあるから。
「他の亜人たちとクランは組めないのか?」
「出来ない事は無いです。ただ、クランは貴族様にも目を付けられるので……」
「……ああ、その制限があったか。貴族がどっちの立場なのかが解らないのか……」
「そうですね。結果、今まで誰も作っていないという事になります」
「だが、パーティーは別だろう? そっちは冒険者ギルドまでで止まるはずだ」
「組む相手が見つかっていないのはそうですね。……冒険者として活動し始めてから日が浅いので」
「……なるほど。それでも暗闇の森である程度はやれたんだから、そこら辺の連中と組めれば話は大分変わってくるんじゃないか?」
「他の人は私を入れてくれないと思いますよ。同じ亜人でも、です」
何かとあるんだろうな。……まあ、パーティーが組めない訳では無いとは思う。色々とあるとは思うが、俺と組めば解決するだろうし。俺だって現実になったからにはパーティーを組みたいからな。ソロだと限界があるのは解っていることだ。錬金術師を止める事は無いだろうけど、それでも、安定度は増すからな。




