無事契約
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「さて、契約だ。勿論だけど、そっちの意見も尊重するけど、帰れなくなるのは駄目だ。僕が帰らないと、精霊界も大変な事になるからね。まあ、そんなに短い期間しか居られないって訳でもないんだけど」
「えっと、グラーデン?」
「俺もこういう契約は初めてだ。だが、ある程度の契約は出来ると思うぞ。基本的にはアウスラリアが決めた方が良いとは思うが、無理そうなら考える」
「お願いしても良いですか?」
「仕方がないか。契約内容だが、使用者はアウスラリアに限るという制約も付けてもいいか?」
「良いよ。じゃあ、契約者が死ぬまでの契約って事でどうかな? それならそっちにも迷惑はかけないでしょ?」
「私はそれでいい様な気がしますが?」
「……いや、念のために保険をかけておきたい。契約者が死んだときも契約に含めるが、他者が使用した時も契約を解除できるようにしておく」
「ああ、なるほどね。それなら良いよ。こっちにしても有難い事だし」
「……どういうことなのですか?」
「仮に、貴族がアウスラリアから無理やり召喚石を奪い取った際に、精霊が逃げられるようにしておくためだ。アウスラリアが死ぬまでという制約のみだと、アウスラリアを殺さずに精霊だけが働かされるという可能性も無くはない。これは使用者がアウスラリアだけと決めていても、抜け穴が出来る。それで精霊の暴走を許すくらいなら、契約を解除した方が良いと判断した」
「……なるほど。それで保険ですか」
「僕は良いよ。契約者以外に使われるのも嫌だしね」
「じゃあ、その様に契約をしてくれ。アウスラリアもいいか?」
「はい。勿論です」
「じゃあ、契約しよう。風精霊シルエンディールは、アウスラリアを契約者として誓う。契約内容を違えることなく、命の許す限り戦おう。さあ、手と召喚石を」
「契約ですね。よろしくお願いします」
ネームドの話は聞いたことがあったが、まさかここまで出鱈目な存在だとは。召喚石から作り直させられるとは思いもしなかった。
これでとりあえずは安泰だとは思うんだけどな……。シルエンディールはアウスラリアを守ってくれるだろう。見た目は、緑の髪をしたエルフ並みの美形だったけどな。まあ、普通の人が見れば、明らかに人とは違うというのが解るはず。……解るよな?
とにかく滅茶苦茶な召喚獣を手に入れたことは確かなんだ。それだけ戦力が大きくなったという事でもある。……ただ、お守りとして召喚石を持っておくよりも、常に召喚していた方が良いとは思うが。想定以上に強い召喚獣が来てしまったが、仕方がない。アウスラリア以外に使う事が出来ないんだ。危険は薄いだろう。
ただ、護衛も兼ねて、アウスラリアの側に居て貰った方が良いとは思う。……どんなスタイルの召喚獣なのかが今一つ解っていないんだけど。
「……とりあえず、宿に帰るか。明日というか、今日は1日休みにして、夕方に冒険者ギルドで集合って事でどうだ?」
「そうしましょうか。それで、冒険者ギルドで、タールスエニスの町に行く商人の護衛をするって感じで良かったですか?」
「ああ、それで良い。ここから護衛をしながら10日くらいは進むだろうからな。移動を早くするのであれば、護衛依頼なんて受けずに、駆け抜けるのが良いとは思う。が、駆け抜けても5日はかかるし、野宿もしなければいけない。パーティーが6人以上居るならまだしも、2人では夜の番は厳しい。商人の護衛をしながら進むのが無難だとは思うぞ」
「ですよね。その方が冒険者ギルドにも貢献出来ますし。依頼は出来る限り受けておく方が良いんでしょうね」
「だな。冒険者ギルドの信頼が、そのまま仕事に繋がる事もあるし、何よりも冒険者ギルドと敵対する訳ではないからな。こういう所で点数稼ぎをしておいた方が良いとは思う」
冒険者ギルドとは敵対するようには動かない。当然の事ではあるんだけどな。冒険者は冒険者らしく、依頼を受けて移動をするものだ。……急いでいたり、そもそもそういう必要がなくなったりすれば、考えれば良いだけの話である。まあ、まだ言わなくても良いとは思うんだよな。ものだけは作ってあるけど、夕方からクランハウスを見に行って、そのまま登録すれば良いんだから。
そんな訳で、夜遅い時間に、星見の塔を後にした。この時間しか召喚出来ないんだから仕方がないんだよな。もうちょっと調整できたら良かったんだろうに。まあ、現実でもこのルールだからなあ。ゲーム時代はそれなりに回転率が良かったけど、現実だとこれで1日使うもんなあ。次の日に直ぐに冒険なんて無理だ。そんな時間から活動しているんだから、休まないといけない。
ゲームって凄いよな。気が付いたら時間が過ぎているんだもの。まあ、こっちの現実になってからは、マジで1日が早いんだけどな。仕事も何にも無いからなあ。いや、冒険者活動は仕事なんだけど、仕事って感じが薄いから。ゲームをやっている感覚に近いものがあるんだよ。
時間が過ぎて、宿屋に帰ってきた頃には、もう太陽が登り始めていた。朝は早いなあ。今から寝るんだけど。食事もいいや。起きてからで。まずはぐっすりと寝ようか。夕方に冒険者ギルドにいかないといけないんだから、逆算すると、昼過ぎには色々と作らないといけない。
必要なものは作っておかないとな。ちゃんと便利なものだから安心して欲しい。……ちょっと使用するのにあたって、必要な魔力量が多いだけだ。便利でしかないものだからな。作っておいて損はないというか、当たり前のように作れる俺がおかしいだけではあるんだけど。便利なものは、作って使わないと損だし。
という事で、宿屋に帰ってきてぐっすりと寝た。アウスラリアは何をしているのかは知らないが、多分寝ているだろう。結局召喚獣を召喚しようと思ったら、こういう生活になってしまう事もあるからな。慣れて貰わないと。
そんなに頻繁に召喚獣を呼ぶことは無いとは思うけどな。供物も揃えないといけないし。失敗も考慮したら、色々と準備をするのに時間がかかる。召喚なんて、月に1回すれば多い方だとは思うしな。頻繁に召喚しても、召喚獣を使い切れないだけなんだ。
ただ、手札が多い事には、困ることは無いんだけどな。十分な手札を用意しておけば、緊急時にも対応が可能になる。緊急事態なんていつ起きてもおかしくないんだから、召喚獣は多いに越したことはない。が、使わなければ、宝の持ち腐れだからな。
好みはあるとは思う。俺は必要以外の召喚獣は、送還しても良いとは思うんだよ。譲渡しても良いんだけど、召喚獣がそれを許すのかって事があるからな。基本的には、使わなくなった召喚獣は送還してあげた方が良いとは思う。
ゲーム時代には、召喚獣を召喚して、契約して、売り払っていた俺が言う事でも無いとは思うがね。召喚獣は良いお金になったからな。特に供物が必要な召喚獣は、結構人気があったというか、運しだいで出るか出ないかだからなあ。召喚士は少なかったけど。
相対的にもふもふした召喚獣が一番強かった思い出。金策には便利だったよ。大体は副産物での召喚が殆どだったけどな。まあ、金策をしても、一瞬で溶けてなくなるんだけど。お金なんて錬金術をしていたら、一瞬でなくなるんだよ。貴重品も直ぐに錬金術に使ってしまうんだし。
錬金術は儲けようと思えば、もの凄く儲かるんだろうけど、それよりも、自分の研究が第一だからなあ。そんな事をしていると、溶けるようにお金がなくなっていく。金属を買い漁り、素材を買い漁り。こっちでは売っていない様なものも、プレイヤーから購入したりもしてな。そして、素材を無に帰すと。研究ってそんなものだからな。必ずしも上手くいくとは言えないんだ。




