処分と暗躍
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言っては悪いが、相手を襲うのであれば、もう少し準備をしていてもおかしくない。準備なしに襲い掛かったとしても、利益を得られない事の方が多いからな。PKとは情報戦だ。何をどれだけ出来るのかの情報が必要になってくる。だから、奥の手なんかは見せない方が良いんだよな。
それでも、襲い掛かってきた。ただの私怨だけなのか。そんな事で馬鹿な行動をするものばかりなのかと問いたい。普通であれば、かなり不味い事になることは解り切っている筈なのにな。
「聞きたいんだが、今回の18人はどうなる予定なんだ?」
「そうですね。そこははっきりさせておいて欲しいです」
「勿論ですが、罰が与えられます。今回の動きを、クレドンナ伯爵家への攻撃と見做すでしょう。今までの影響力工作もありますので、実行犯は死罪。関係する家に関しては、賠償金を支払えと言う事になるでしょうね」
「まあ、妥当な所じゃない? 本来であれば、クレドンナ伯爵家への攻撃って見做すことが難しいんだろうし、死罪に出来るだけでも十分だとは思うな」
「後腐れなくやってくれるのであれば、俺は文句はないな。アウスラリアは?」
「こんな事になりましたので、甘い処分では駄目でしょうね。そのくらいは要求します」
「その点は任せてください。クレドンナ伯爵家は、全ての召喚士を守るのが仕事です。召喚士を志す若者が減るのは望ましくありません。召喚士は有望なクラスなのだと知って貰わなければなりませんからね。アウスラリアさんが襲われてしまったのは、自らを律しられなかった未熟さ故。ですが、それで甘い処分をしていては、クレドンナ伯爵家が舐められます」
「僕でも同じことはしたかな。冒険者ギルドにそんな事をした人が居たら、ちゃんと処分しないといけないとは思うよ。それがザガット伯爵家との約束でもあるしね。貴族なんて舐められたらお終いなんてこともあるんだし」
まあ、それは解らないでもないんだよな。貴族は舐められたら終わり。特に平民から舐められるようでは話にならない。統治するのだって、税を集めるのだって、ある程度の恐怖が無ければ、無法な事をする奴らが増えるだけだ。
貴族家は、多少恐怖されているくらいで丁度いい。まあ、俺的には怖いとは思わないが。自分の利益のために動いている貴族家を怖がっていたら、錬金術師なんて出来ない。多少の貴族家を敵に回してでも、推し通らないといけない事もある。
ただ、それはゲームだったから良かったんだが、現実になると、慎重にならざるを得ない。デスペナで済んだゲームとは違うんだ。死んだらそれで終わりだ。多少は恐れた方が良いとは思う。
睨まれない程度に頑張るしかないか。俺だけならまだいい。今後はアウスラリアも巻き込む事になる。そして、パーティーを、クランを巻き込んでしまう事が考えられる。それでは不味いのだ。
出来る限り揉め事は少ない方が良いのは確か。……それでも、譲れないものはある訳なんだがな。そこは推し通らせてもらうつもりである。ある程度の秘密主義じゃないと、錬金術師なんてやっていられないからな。
「それよりも、徐々にエタニアス伯爵家が盛り返してきているのが気になりますね……。今回の事もそうですが、余りにも大規模に動いている。それなりの資金が必要な筈ですが、一体どこからその資金が出てきているのか」
「気になるよねえ。普通は商業ギルドを抑えているクレドンナ伯爵家には敵わないはずだし、冒険者ギルドだってザガット伯爵家が抑えているんだ。エタニアス伯爵家が抑えているのって、人間だけで構成された職人ギルドくらいだよね?」
「そのはずです。他のギルドもありますが、お金を産みそうなのは職人ギルドくらいなものです。ですが、そこまでの資金源が見つかったという報告は入ってきていませんね。そもそもですが、亜人種の職人ギルドはザガット伯爵家が抑えているはず。であれば、そこまでの技術格差が起きない限りは、大きな差など出ない筈なのですが……」
「それについては心当たりがある。職人ギルドでという事で思ったことがあるんだが、インゴットを作っているのも職人ギルドだな?」
「インゴットですか? それはそうですね。職人ギルドになります。錬金術師の多くは、召喚士ギルドが抱え込んでいますが、それでも職人ギルドにも居ない訳ではありません。鍛冶師のクラスもそうですし、金属を扱えるクラスはそこそこありますから」
「ならば、最近流れている金属の調査をした方がいいぞ。金や銀、鉄までも、鉛が混ぜられているからな。そんな合金では、価値なんて無いのも同然だ。だから、金属のインゴットを調べた方が良い」
「……インゴットに混ぜ物ですか? それはかなり問題ですね。この町で売られているだけならまだしも、外に出ていっているのであれば、大問題を引き起こしていることになります」
「大体ではあるが、金は90%が鉛、銀は80%が鉛、鉄も60%くらいは鉛だった。重さの違いで解る奴には解る。が、基本的にそんなものを確認する方が少ない」
「ちょっと待った! そんな粗悪な金属が出回っている? 今、冒険者の負傷率が上がってきているんだよね。なんでそんな事がって思っていたんだけど、武器が粗悪品に変わっているのであれば、納得が出来るんだよ。いつもよりも、ポーションの消費量が多いし、怪我人も増えてきた。何が原因なのかが解らないから、仕事が立て込んでたんだよね……」
「ポーションを作っているギルドは?」
「……薬師ギルドはエタニアス伯爵家が仕切っていますね」
「……ポーションも粗悪品が横行しているんじゃないのか? だから消費量が増えている。そんな可能性はないか?」
「無いとは言い切れません。そこまでの事をやらかしているのであれば、もの凄く不味いです。この町で作られていたことがしれれば、それこそ、この街が孤立しますので」
「不味いなんてものじゃないよね。エレナールさん?」
「ですね。動きましょうか。金属の不正と、ポーションの不正をしているのであれば、大金が入り込むのも解ります。鉛なんてものは、そこまでの価値が無い金属ですから。使い道は多くあれど、鉄や銀、ましては金なんかとは価値が全然違います。資金源になっている可能性は十分にあり得ます」
「こっちもザガット伯爵家に報告しないとなあ。色々と悪事を働いている、エタニアス伯爵家を取りつぶすくらいの事はやって貰わないと」
「ですね。この機に大きく勢力を削ぎ落とすというよりは、国家反逆罪などで、処分してしまった方が良いですね。……上が何処まで問題を認識してくれるか、ですけど」
「認識はしてくれるんじゃないかな。金属の混ぜ物なんて、やってはいけない事だよ?」
だろうな。金属の混ぜ物なんてやったら、価値が変わり過ぎる。ある程度は仕方がないんだ。純粋な金属を作るのは技術が必要だから。少しばかり混じってしまうのは仕方がない事ではある。
が、意図的に混ぜたのであれば、話が変わる。混ぜ物なんて許していたら、金属の相場は下がり続ける事になるだろう。粗悪品のせいで、正規品まで価値が下がっては、商売が成り立たない。そうなってくれば、もっと粗悪品が横行する事になる。
そういうことを防がないといけない。冒険者ギルドも召喚士ギルドも動くだろう。もっと言えば、上にいるザガット伯爵家とクレドンナ伯爵家が動くことになるだろう。動いてくれないと問題が大きくなりすぎるんだ。隣の町まで取引してみろ。貴族同士の対立が起きて、下手すれば内乱だぞ? マジでそんな事にはなって欲しくないんだが。




