目立つ殺気
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結局あの後、オパールを研磨して、魔境に狩りに行った。……昨日も大量の魔石と素材をゲットしたので、大量に納品したのである。お金は潤沢になってきた。まあ、冒険者の稼ぎとしては多すぎる方だな。……それでも、物価が高いとは思うけど。もうちょっとどうにかなって欲しい所だな。物の価値に対して、値段が高すぎる。銀なんか殆ど鉛だし。金はメッキのものも売られている。……そんなのをかき集めないと、装備品にもならないんだけどな。マジでもう少しマシなものをだな。
ゲーム時代に貯め込んでおくんだった。そうしたら持ち込めたのに。……大体は拠点の倉庫に片付ける習慣がついていたからなあ。インベントリの中は、基本的な装備と錬金術を何処でも出来るようにするための簡易設備しか入れていなかったのが災いした。もっと詰め込んでおけば、無双できたものを。……まあ、売らないけどな。そんな大切なものを売ってたまるかって話である。
で、今日は珍しく、アウスラリアも市場を見たいと言うので、一緒に買い物をしている。……アウスラリアのマジックバッグも作ってあげたいんだけど、優先順位が低い。俺がマジックバッグを持っているので、パーティーに2人もマジックバッグ持ちは必要ないだろうという事になるからな。ゲーム時代は、それとは別の理由でマジックバッグ持ちしかいなかったけど。ソロプレイヤーが野良でパーティーを組むんだ。マジックバッグを持っていない人の方が珍しかったからな。
「アウスラリアは何を買うんだ?」
「短剣をと思いまして。解体の手伝いが出来ない事に気が付きました。いつもはやって貰っていますが、余裕が出てきたので、やろうと思ったのですが、解体用のナイフがない事に気が付いて、それならいっその事、攻撃も出来る短剣を買おうとなりまして」
「なるほどな。そうなると、軽戦士の方向に伸ばしていくのか。猫獣人だからなあ。魔法を伸ばすよりは現実的だな。別に魔力が少ないからって、魔法使いに成れない訳ではないんだけど」
「手数が多い方が良いでしょうし、短剣を選ぶつもりです。最悪は投げて牽制にも使えますから」
「……成長したなあ。初めて会った時は、ヒポポライノに指示を出していただけだというのに」
「私だって色々と考えます。……あそこまでの魔物に囲まれることもあるんだと思い直しました。召喚士だからって、後ろで立っているだけでは駄目なのだと」
「そういう事だな。……ただ、召喚獣の指揮も執らないといけない。近接は最終手段というか、出来れば、他の人に任せて、魔法で何とかした方が良いとは思うがな。他にも後衛が入ってくれば、話は変わってくるけど」
「ですね。……これなんてどうですか? そこそこの短剣だとは思いますが」
「うーん。このくらいの長さが良いのか? ちょっと振らせてもらった方が良いんじゃないか?」
「そうですね。店主、構いませんか?」
「おう。だが、傷つけるんじゃねえぞ?」
そんな感じでアウスラリアが短剣を振るう。……ちょっと予想よりも遅いな。となると、重いのか。多分だが、鉛が結構含まれているんだな。鉄と鉛を混ぜるメリットがあまり無いんだが……。鉛の方が安いんだろうな。鉄に比べて。だから、鉛で誤魔化していると。そういう事なんだろう。
「思ったよりも重いんじゃないか?」
「……そうですね。ちょっと重く感じます。別のにした方が良さそうですね」
「仕方がないさ。自分に合う武器を探すのは難しいからな。な、店主」
「そうだな。そもそも自分に合うって解る奴の方が少ないがな」
「それもそうだ。また見せてくれよ」
「おう。次は買ってくれると助かるぜ」
鉄の武器が欲しいのに、鉛の武器を売られたら堪らない。鉛は加工がやりやすい分、柔らかいからな。鉄とは比べられない。それに重さも重い。鉄の方が軽くて頑丈なんだ。
「グラーデンが口を出すとは思いませんでした」
「あれは鉄じゃないからな。鉛だ。鉄よりも柔らかく、加工がしやすい分、耐久性に難がある。それでいて、鉄よりも重い。買うなら軽い方がいいぞ。その方が鉄で作られている可能性が高い」
「……妙に詳しいですね?」
「俺も銀や金が欲しいんだが、鉛が混ぜてあったり、そもそもがメッキだったりしているからな。南のジュレム山脈では、鉛の鉱石が拾える。それを加工して、誤魔化しているんだろうとは思うが」
「……武器屋なのにですか?」
「まあ、そこまでの武器が必要ないと思われているんだろうな。冒険者の質もそこまでだし。……アウスラリア」
「……気が付いています。流石にあそこまであからさまに殺気立っていれば、私にも解ります」
「そりゃそうか。……人目がない方向に移動する。仕掛けてくるのが早かったら、市場の人たちを巻き込んでしまう」
「ですね。もう少し短剣を見ていたかったのですが……」
仕方がないからな。市場を後にする。そして、人目の付きにくい裏路地に入って行く。この辺は人間の住んでいる住宅地の筈だが。詳しい地図が頭の中に入っている訳ではないからな。
路地をどんどんと奥へと入って行く。……ついてくる人間が増えてきたな。大体15人から20人と言ったところか。召喚獣で索敵しながら進んでいる所を見ると、召喚士か。という事は、あの件の1派だろうな。エタニアス伯爵家に関係のある奴らか。
「どうしますか? 狙いは私だとは思いますけど……」
「話し合いで解決できる雰囲気では無いだろう。殺気を殺して近づいてくるならまだ話し合いの余地があるが、あれでは駄目だ。戦闘になる」
「ですよね……」
戦闘は避けられないだろうな。……ただし、まともな戦闘になればの話ではあるが。まともな戦闘になるのかねえ? 多分だけど、呪い返しが決まっているはず。そうなると、碌に魔法も使えなくなっているとは思うが。呪い返しの性質上、そうなる。まともに魔法なんて使えないとは思うぞ。そうなってくると、近接攻撃でどうにかしないといけないんだろうが、召喚士が近接攻撃の訓練なんて行っているのかどうかだ。召喚獣? 雑魚はどうとでもなるし、召喚獣には手加減する必要が無いからな。そっちの方が楽だ。
「さて、それじゃあこの辺で迎え撃つか。召喚獣はシャドーサーペントにしておいてくれ。逃げ場を無くす意味でも、大きな召喚獣の方が助かる」
「解りました。来い! シャドーサーペント!」
「ちぃ! 気が付かれているじゃないか!」
「そんなの関係ねえ! いけ! コボルト!」
「ゴブリン! 突撃だ!」
「スカイホーク! 上から急襲しろ!」
殺気をあれだけ出しておいて、気が付かれていないと思っていたのか? あり得ないだろう。意味が解ってないなあ。ここに誘い込まれてしまっているという事に気が付いていないらしい。
ここは大体人が住んでいないであろう区画だ。人間の区画は広すぎるからな。人口比から考えると、この辺には人は住んでいない。だったら、多少は暴れても良くなる。壊してしまっても、困る人はそこまで居ない。こんな所に住んでいる人の方が悪い。まあ、出来るだけ壊さない様に戦うけどな。とりあえず、レベル10までの召喚獣ならどうとでもなる。
「シャドーサーペントには退路を塞がせるんだ。前衛は俺がやる。アウスラリアは、魔法で何とかしてみるか? 訓練の成果も兼ねて」
「そうしましょうか。それでは、的になってくれる彼らに、目にものを見せてやりましょう」
戦闘が始まった。アウスラリアの魔法が連打される。……連射って、結構な高等技術なんだよな。デュアルマジックを既に習得しているって事でもある。魔法は基本的に、1つずつしか発動できない。が、何事にも例外というものがある。デュアルマジックという技術は、2つ以上の魔法を繰り出すことが可能だ。……まあ、普通にノーライフエルダーリッチがそういうことをするので、アウスラリアも出来ると思ってやっていたらしい。見本があるって素晴らしいな。




