破格の装備品
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「それで、休みの日に作ったのがこれだ。これが今の限界点ではある。……足輪も作ることが出来るから、素材が手に入り次第、そっちも作ろうかとは思っているが、今はそれが限度だな」
「腕輪にしては、大きすぎませんか? これでは装備する事が出来ないとは思いますけど……」
「装備してみれば解る。大きさの自動調整付きだから。性能も十分なはずだ」
「……自動調整付きとは、もの凄いものですね。それで効果の方はどうなっているんですか?」
「1つ目は召喚獣強化の腕輪になる。召喚獣の能力が1.3倍くらいにはなる。詳しくは検証してみないと解らないが、大体そのくらいは強化されるはずだ。もう1つは召喚枠緩和の腕輪だな。召喚枠が+2されるはずだ。だから、3体までなら出せるはず。今回からは、3体の召喚獣を使いながら、戦ってもらう。俺の手助けは無しで問題ないはずだ。ノーライフエルダーリッチを使えるはずだからな。召喚枠の緩和は、召喚士は必ず行っておいた方が良いものだ。素材の関係で、+2しか無理ではあるが、それは数で補う事が出来る。足輪も候補に入れてあるから、それまでは3枠で戦ってもらう事になる」
「普通の召喚士は1枠しかありませんからね。これだけでも破格の装備品だという事は解ります。それに、召喚獣を強化できる方も凄いですね。これならどんな召喚獣でも強くなれます」
まあ、銀や金を使うから、そんなに量産は出来ないんだけどな。因みに、鉛では無理。鉄なら強化が1.1倍で、召喚枠が+1なら作れる。それも作る方がいいかとも思ったんだが、無駄になるからな。次に銀と金を仕入れたら、無用のものとなってしまう。それでは余りにも勿体ない。そんな訳で、作らないという選択肢を取った訳だ。
なお、これを大々的に売り出すのは、止めた方が良いだろうという事は解っている。召喚士の常識を変えてしまうものでもあるからな。数の暴力で何とでもなるというのであれば、その方が良いんだろうが、それで死にやすくなっても困るんだよ。出来れば、危険だという事もしっかりと認識してもらった方が良いとは思うからな。
まあ、そもそも錬金術師であれば、このくらいのものは作れないと話にもならない訳なんだけどな。錬金術師をしているのであれば、ある程度のものは作れて当然だろう。流れの錬金術師である俺に負けている様では話にもならない。生産職は意地を見せてくれよな。……当然だが、貴族は色々と知っているんだろうが。そうじゃないと色々とおかしい点があるはず。
そこまで文明的に育っていないのであれば、魔物に押し負けていてもおかしくないからなあ。それに、魔族もいるんだ。そっちに負ける様では話にもならない。魔王が居るのであれば、魔族もいて当然だろう。ゲームでは会話は出来なかったけどな。こっちではどうなんだろう。会話が出来るのであれば、してみたいって思うのが人情というものだ。
なお、ゲームの設定が生きているのであれば、魔族は魔王を復活させようとしているやばい連中なので、暗躍されると困る。クラスは基本的には人族側と一緒の筈だから、強さ的に魔族の方が強ければ、人族の国はもっと押されていてもおかしくない。だから、貴族は魔法とか、クラスに詳しいはずである。魔族に負けているなんてことになったら、面倒以外の何ものでもないからな。
「これを装備して、負けるわけにはいきませんね。……昨日は色々とありましたけど、切り替えていかないと」
「ん? どうかしたか?」
「いえ、何でもありません。これで負けられない理由が出来たなと思っただけです」
「当たり前だろう? 負けることは許されていない。負けるという事は、死ぬという事に近いからな。召喚獣が揃ってきたら、負けにくくはなる。が、負けないとは考えない方がいい。常に最悪は考えておくべきだ。最悪の状態から動かないといけない事もある。それは考えておく方が無難ではあるからな」
「そうですね。死ぬことは御免です。昨日は盾も買いましたし、これでもっと死ににくくなったはずです。そうそう簡単には負けてやりません」
「その意気だ。負けるなんて駄目だからな。今日は一昨日よりも厳しくいくぞ。まあ、余裕だとは思うけどな。休みの間隔を短くしつつ、どんどんと魔物を呼び寄せる。それで慣れるまで盾と魔法を使い続けるんだ。生き残ることを最優先に考えつつ、出来ることを出来るだけするのが良いだろう」
召喚士で一番困るのが、召喚士自体が戦えないって状況だからな。召喚士も戦えないと意味がない。ある程度は魔法で攻撃が出来ないといけないし、ある程度は近接も出来ないといけない。そのくらいは当然のように出来て貰わないと困る。
色々と装備を整えていけば、最適解が見つかるとは思うが、アウスラリアにとっての最適解と、他人の最適解は似て非なるものになるのが当たり前だ。似てくるのは仕方がない。けど、得意な事も違えば、体格なんかも違う。出来ることを出来るだけとは言うが、猫獣人であることは変わらないからな。回避型や連撃型が望ましい所ではあるんだけど、それは死なない事を前提にすれば、の話である。死ぬこともあるって事を考えると、盾を持ったり、魔法で攻撃したりが当たり前になってくるとは思うんだよな。
それで、道中は幻属性魔法の訓練をしつつ、暗闇の森に向かった。魔法の精度はまずまずである。攻撃力的には、もう少し欲しい所ではあるが、魔法の習得は焦ってはいけない。理論のほぼ要らない幻属性魔法から覚えて貰っているが、出来れば、色々と属性を扱えた方が便利なんだよな。その内、色々と理論を覚えてもらうのも良いとは思う。まあ、修行あるのみだけどな。実戦で磨かれるというのもあるとは思うし、どんどんと魔物を倒してもらおう。慣れが一番だし。魔法に慣れてくると、発動までの時間がもの凄く短くなってくるからな。
戦闘に使えるというだけでも良いんだよ。牽制なんかでも使えれば、幅は広がっていく。教えられることは教えていくし、出し惜しみをしても意味がない。強くなるように、俺もしっかりと鍛えていかないといけないとは思っている。
「ぜえ……ぜえ……ぜえ……ぜえ……。な、何とか終わりですか?」
「そうだな。今日はこんなものでお終いだ。結構倒せたし、連戦もちゃんと熟せていた。お金稼ぎ的にも、結構な金額になるだろうし、申し分ないとは思うけどな」
「あ、ありがとうございます。……けど、色々と余裕が無いですね。召喚獣が強くなったのは良い事ではありますし、3体出せるのも大きい。……けれど、それでも多勢に無勢ですからね。私も含め、4人では限界があります」
「当然だな。限界を知ることは大きい。途中でシャドーサーペントを引っ込めて、サイレントプラントに変えたのは良い判断だ。ノーライフエルダーリッチが居るのであれば、足止めの方が強力だからな」
「そうですね。ダストエイプを止められないのが辛い所です」
ダストエイプは木を伝ってくるからな。暗がりリスもそうだし、キラースネークもそうなんだけど、暗闇の森は、木の上を移動してくる魔物が多い。それが一気に襲い掛かってくると、どうしても上を取られてしまう。シャドーサーペントは、大きな体を使う事が出来るが、本来であれば、影に潜んで奇襲をするのが得意な召喚獣だ。受けて立つ場合で、大量の相手をしなければならない場合は、奇襲よりも、安定して足止め出来る方が有利である。
その点、サイレントプラントは、待ち伏せ系の召喚獣であり、バインド系統の使い手だ。処理をノーライフエルダーリッチとヒポポライノに任せるのであれば、足止めが出来る方が強力だ。それを悟って、召喚獣を交換したのは良い判断だ。
シャドーサーペントはレベル40、サイレントプラントはレベル30。レベルが高い方が有利なのには代わりがないが、状況判断は必要だ。手札があるという事は、それだけ使い手が判断する余地があるという事でもある。まあ、召喚獣も時と場合に因るという事なんだよ。……特に、こういう環境では、大型の召喚獣は使いにくい。木々が生い茂っている場所で、ドカンとデカい召喚獣を出す訳には行かないからな。使い道を考えろと言いたい。
召喚士の手札の多さが、生き残りやすさに直結する。本当であれば、どんどんと召喚獣を召喚してもらった方が良いんだが、それだけでも駄目なんだよな。最低限度の編成で、どのくらい出来るのか。その辺もしっかりと考慮に入れないといけないし。動きは把握しておかないといけない。召喚獣との連携力も、召喚士の実力の内だからな。
「じゃあ、今日の所は帰るか。また換金で色々と言われそうだが」
「でしょうね。ですが、素材は集まった方が良いでしょうし、良いのではないでしょうか?」
「それはそうなんだけどな。……色々とギルマスも大変になるかもしれないなとは思うが」
「それは仕方のない事なのではないですか?」
「まあ、それはそうなんだけどな。色々と配慮もしてもらっているだろうし、こっちが迷惑だけをかける訳にもいかないとは思うが」
色々と迷惑をかけているとは思う。……まあ、それも良しとしておかないといけないのはそうなんだけど。迷惑をかけた分、依頼で返ってくる事になるだろうしな。どんな依頼になるのかは解らないが、非常識な依頼を出してこない事を祈るしかない。




