生産職の梃入れ
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普通は知らないだなんて思わない。全員知っている事だと思っていた。アクセサリーなんてあり得ないって思っていたのかもしれないが、れっきとした装備である。
普通は、枠があったら埋めるんだ。例えば、魔法使いが剣戟が1.5倍になる腕輪をしていても意味はないが、何も持っていないのであれば、それをするくらいには常識だった。
ゲームでは当たり前だった。装備枠が空いている状態で放置するくらいなら、何かしらを埋めた方が良いんだ。その方がステータスが伸びるだろうし、何かしらの効果があれば、それで良いんだから。
こっちの世界だとそれが知らない事になっているんだ。あり得ないだろう。何のために生産職たちに色々と作って貰っていると思っているんだ。狙った効果のある付与をしたり、細工をしたりしていると思っているんだ。全部効果があるからに決まっているじゃないか。
「はあぁぁぁぁぁぁ。て事は? ある意味悪趣味にアクセサリーをジャラジャラしているのも意味があるって事?」
「貴族がしている装飾品には装備の効果は無いんだろうな。ただの飾りだろう。そうではなくて、ある程度の付与を施したり、細工をしたりして、狙った効果を出すようにするんだ。剣で戦うなら、剣戟の威力が1.5倍になる装備なんてものもあるんだぞ?」
「……知らないって、怖いね?」
「ああ、怖いな。他の冒険者を見ていて違和感しかなかったからな。具体的に何かが足りていないとは認識していなかったが、違和感は感じていた。それが明確に理解できたのはつい最近だ。そう言えば、そんな装備をしていなかったなと」
「そりゃそうだよね。していて当たり前だと思っていたんだろうし。普通に町中を歩いているだけなら、隠しているのかなとか思っちゃうだろうしね。……そっかー。そんな装備もあるんだねえ」
「というか、俺やアウスラリアと会っていて、それを感じなかったのか?」
「ああ、それなら、アウスラリアさんもアクセサリーに興味が出てきたんだなって、ほほえましく思っていたよ? 今だと当時の自分が忌々しく思うけど」
「だろうな。その時に聞いておけば、もっと早くに教えられたんだろうし」
「だよねえ。うん、もういいや。今回聞けたから良しとしようかな。それで? そこまで話をして、何もなしだとは言わないよね?」
「何もなしでは話にならないだろうからな。……俺たちのクランで抱え込んでいる生産職を、冒険者ギルドの指定した所に修行に出すってのはどうだ? それで技術交流といこうじゃないか」
「具体的にはどの生産職か聞いてもいい? それで行先が変わるとは思うし」
「鍛冶師2人、細工師2人、付与師1人だな。というか、付与師になっている奴っているのか?」
「いるには居るよ? ほら、指輪とか腕輪って、サイズが合わないと無理じゃない? それを何とかするのに付与師を抱え込んでいる所はあるよ」
「そうか。その効果は絶対に付けておいた方がいいから、教えないといけないのか? とは思っていたから良しとするか。……それ以外が全然ダメなんだが」
「だよねえ……。因みに聞いてもいい?」
「なんだ?」
「アクセサリーって鉛でも大丈夫?」
「鉛でも大丈夫だ。強化率が低いだけで、効果はある。鉄だと1.3倍くらいになるかなって所ではあるが、鉛だと1.1倍が精々だろう。まあ、ものによっては効果が無いものとかもあるんだが。前に召喚獣の枠の緩和の話をしただろう?」
「そう言えばしたね? それも腕輪とかそういう感じの装備?」
「そうだ。アウスラリアがしているのがその装備だ。召喚枠緩和と、召喚獣の強化が出来る代物だ。大体は強化の方に振っているから、……今のアウスラリアの召喚獣は常にレベルが5倍くらいにはなっているんじゃないか? 詳しく計算したことはないが」
「ちょーっと待ってくれる? あれ? アウスラリアさんの召喚獣って、飛びぬけてレベルがおかしかったよね? それが5倍?」
「大体だぞ? それにレベルが上がったからといって、弱点が緩和される訳ではない。どちらかといえば、長所を伸ばす感じの強化になる。だから、打たれ弱さはそこまで改善していないし、倒そうと思ったら倒せるくらいでしかない。……タンク系統の召喚獣の場合は、耐久力が酷い事になるんだがな」
「長所が伸びる? ……それって手が付けられる?」
「シルエンディールとエキドナに限るのであれば、手が付けられないな。今の俺でもどうしようもない。まあ、どうにか出来るだけの戦力が居るとは思えないが」
「ある意味、召喚士には必須の装備じゃないさ……」
「そうだが? だから俺だって驚いているんだが?」
「あの時にどういう装備か聞いておけば良かったと心底思うよ。杖か何かをイメージしてたからさ」
「杖でも付与出来ない訳ではないが、勿体なさすぎるからな。杖なら別のものを持った方が良い。腕輪でカバーできるんだ。杖にはもっと別の効果を付けた方が良い。因みに、アウスラリアは短剣と盾の装備だ。その方が生き残りやすいという事で、本人がその装備をしている」
「……頭が痛くなってきたよ。という事は何かな? 冒険者の質の話がある程度は解決するって事で良いのかな?」
「ある程度は解決するだろうな。鉛でも1.1倍程度は強化出来るようになるんだから。1.1倍でも幾つも重ねれば、そこそこの強化具合にはなるはずだ。まあ、鉄の方が良いし、銀を使った方が効果は伸びるが。金の装飾も付けると、効果は伸びる。色々と試してみるといいぞ。金だけだと、割と難しいから、銀と金の合金を使った方が良いとは思うがな」
金に付与するのは難しいんだよな。オリハルコンにするのだって、銅を噛ませるわけだし。金って割と取扱が難しい。装飾には使えるんだけどな。
なので、銀がおススメだ。色々と試してきたが、特殊な加工を必要としないだけで、割とよさげな能力が付いてくれる。銀と金の合金を作れる錬金術師がいるのであれば、それを作らせた方が良いけどな。その方が強化率は高くなる。
アクセサリー装備をするだけで、戦力の底上げが出来るんだ。やらない理由はない。冒険者だって強くありたいだろう? 武器と防具だけで満足していたら駄目だ。その他の装備品にも色々と効果があるんだから、試してみないといけない。
冒険者が強くなることは良い事である。何も悪い事はないんだよな。俺たちの秘密がバレる? バレても良いじゃないか。寧ろ今までアクセサリー装備を封印していた方が問題がある。
ある程度は強くなってくれないと、素材の値段が下がらないんだよ。入手するのに結構な金を積まないといけないんだよな。それは避けたい。
出来れば安値で売って欲しい所ではあるんだけど、流通の兼ね合いで高いのは仕方がないからな。現地で買えば安くなるから、全部の町や村に拠点をってなると、今度は維持費の方がかかってくるし。
他の冒険者ももっと強くなってもらわないとな。強くなって、色んな場所を攻略してもらいたい所ではある。そうすれば、素材も沢山入手できるはずだから。
「うーん。契約はどうする? どのくらいの時間が必要だとは思う?」
「そうだな……。初期から教えても、大体2か月もあれば十分だとは思うが?」
「そのくらいの期間で大丈夫? 短くない?」
「短いだろうが、後は研究を重ねて貰わないといけないからな。あくまでも基礎を教えるだけだから、応用は自分たちで何とかしてもらわないといけない。要は魔法陣と一緒だからな。個人である程度の模様の差は出てくる」
「あー……。そう言えば、錬金術師の時もそうだって言っていたっけ。魔法陣と同じかあ。……それって効果を確認するのって大変じゃない?」
「大変だぞ。装備した時としていない時でどの位変わったのかを検証しないといけない。因みに俺たちは検証したからな? そのくらいはやってもらわないと困る」
「まあ、そうなるよねえ。基礎で何処まで周知できるのかだなあ」
「とりあえず、職人を1か所の鍛冶場に集めるところから始めないといけないだろうな。……反発するやつらは放置で良いし」
意に沿わないのであれば、放置で良いとは思う。その分出だしが遅れてしまうだけだ。まあ、致命的ではあるとは思うが。基本的にスタートダッシュはしなければならない。生産職なんてそれが当たり前だからな。




