全ての魔物の母
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そして、魔法陣が一気に集束し始める。星見の塔の直径よりも少しばかり大きいくらいで止まると、金色に輝き始めた。
そこから、出てくる。蛇の様な召喚獣。大きい。ラミアに近いものを感じる。人間の体に、足が蛇の様な感じ。ただ、胴回りが5mくらいはありそうな大きな体だ。
どんどんと蛇の部分が出てくる。そして、100mくらい出てきただろうか。そのくらいで止まる。
召喚獣は星見の塔に巻きついて、こちらを見てくる。怖い。召喚獣は基本的にこちらに友好的な存在しか出てこないはず。だけど、恐怖を感じる。
何を呼び出したんだろうか。全ての魔物の母とあったんだ。魔物を作ったのはこの召喚獣なんだろうとは思う。それは神では無いのか?
魔王の可能性もある。魔物と魔王は別枠として考えても良いはずで、魔王が魔物を作ったとしてもおかしくはない。
ただ、魔王は敵側なんだよな。そんな事はないと思いつつも考えてしまう。そのくらい飛びぬけておかしな存在でもあるから。
「妾を呼んだのは其方達か。妾の所まで届く供物を作り上げ、祈りを捧げたのは大したものだ」
「召喚をしたのは私です」
「……小娘か。どうやらレベルはそこまで高くは無い様だな。そこの錬金術師が供物を用意したか」
「そうなります。供物は用意してもらいました。ですが、グラーデンのみではなく、私たちのクランの生産職が総出で用意したものです」
「そうかそうか。……普通はレベルが足りんはずだ。何故呼び出せる? 妾とて安くはない。そこそこの強さの複製体で来れたと言う事は、それなりの供物を用意したという事よ。錬金術師。何故に供物を用意できた? 貴様のレベルでは不可能に近いはずだ」
「レベル不足なのは認めるが、不可能ではない。理論を知り、実験を繰り返した成果だ。それはレベルで計れるものではないと考える。世界の理を理解できたのであれば、その程度の供物を作るのに、十分なレベルであると認識している」
「人類が世界の理を理解するものではないはずだ。そこまでは文明が進んでおらん。後10万年は時間がかかるものだ。世界の理を、どのようにして理解した?」
「初めからある程度は知っていたと言えば伝わるか? それをネームドである精霊から知識を補完して、今の理論に至った。そこまで来れば、俺の方である程度のものは作れる。正しい理論を理解してしまえば、魔力的な何かを理解してしまえば、供物作りはそこまで難しいものではない」
「……そうか。魂の浄化から漏れたものか。何処から来た? それ次第で大きく変わる」
「地球と言えば、伝わるか?」
「ああ、伝わるぞ。創造神が初めに作った世界だ。……なるほど。そこは文明的には育っている。ただ、世界の仕組みが異なる。それを精霊の知識で補完したか。上手く自分の中で落とし込んだのだな。そこまで出来るものは少ない。浄化の漏れはある意味で意図的に作られたものだ。文明を進化させる為には、ある種の天才を用意しなけらばならない。そうでなければ進歩はない。この世界はどちらかといえば、失敗に近い。文明が育ちきる前に、魔王が封印されてしまった。機能不全を起こしている状態だ。しかも、魔王を封印した文明は滅びてしまった。今残されている文明では、魔王は封印できん。魔王の封印を解くことをしなければ、世界は発展せんのだ」
「まあ、俺の場合は抜け道みたいな所を通って来た訳なんだが。まさかそうなるとは思っていなかった。この世界についてよく知っていたんだ。知識はある程度あった。レベルもある程度はあった。そこからまるで呼び出されるように飛ばされたんだ」
「ふむ……。確かに。ああ、そういう事か。魂の浄化の漏れでは無いのか。次元の魔王アーゲルローシエが関与している。良質な魂を飛ばしたか。しかし、呪人であることはおかしい。何故そうなる? 地球は人間しかいなかったはずだ。……妾が知らんことがあるらしい。魔王が文明を発展させるために呼び寄せたか」
「……その魔王は知らないな。そんな魔王がいるのか」
ゲームでも聞いたことがない魔王だ。魔王も何体も居るから、覚えていないだけって事はないとは思うけどな。次元の魔王に呼ばれたのか。文明を進化させるために。
まあ、そこまで進歩させても良いものなのかが解らないんだけどな。俺が飛ばされたのは、魔王の仕業だったと。……再現性は皆無だな。錬金術師であのゲームをやっていて、あの手の実験をしていない人を探す方が珍しいという感じだし。
というか、創造神が地球を初めに作ったとかは良いんだよ。転生ってあり得るように作ってあるのか。魂の浄化の漏れとか、いかにも転生ですよと言っているようなものだ。
もしかしたら、転生者とか結構いるんじゃないか? ただ、このゲームを知らないから、常識的なものが抜け落ちているだけで。ある程度は何とかしようと頑張ったんじゃないだろうか。
……その結果が古代文明なのかもしれないが。時間の流れが同じだとは思わない方が良いんだろうし。地球とこの世界の時間の流れが捻じれていないという確証も無い。
その辺は創造神にしか解らないんだからな。まあ、俺の存在はそれだけイレギュラーと言う事なんだろうけど。ある程度は文明を進歩させないといけないのかもしれないが、知った事ではない。
俺は俺でこの世界を楽しみ尽くすのだ。魔王の思惑なんか知った事ではない。
「俺は文明を進歩させる気なんて無いけど、良いんだろう? 俺の周りだけに影響を与えていけば」
「それで十分に進歩はするのだ。役目は特に無い。別の世界から来たとしても、文明を進めることが出来ない存在も多くいるのだ。それだけの役目を背負っている訳ではない」
「だよな。別に進歩させなくても良いよな。……他にやらないといけない事は無いよな? 俺は俺で生活していれば良いんだよな?」
「好きに生きよ。それで周りが影響されれば、十分に文明は進化する。何、難しい話ではない。どうせそういう奴ほど周りに影響を与えるんだ。簡単にはいかずとも、それなりの影響が出てくるものだ。それを目指して文明は発展をしていく。道しるべを作るだけでも十分だ」
「出来るだけ好きに生きさせて貰う。まあ、影響は出てくるとは思うけど、そこまで大きな影響を与えることは無いと思うし」
「ふん。妾を呼んだだけでも十分に影響が出ているだろう。それだけの事をやらかしておるのだ。その分だけ人類の進歩はあるはずだ。全てを秘密主義で済ますのであれば、文明は進まぬかもしれん。が、残したものを目標に、文明は歩んでいく。貴様のせいで、文明は進む。それだけの影響力があることをしているという自覚を持て」
「知らんね。まあ、ある程度は進むんじゃないかな。秘密主義にしている訳ではないし。レベルを上げて、ある程度の生産品を作れるようになれば、色々と出来ることは増えていく。生産職はそうやって経験値を稼がないといけないんだからな。誰に言われずとも、俺は前に進む。それだけだ」
「それで良い。……では小娘。契約といこうか。召喚石は用意しているな?」
「一応2種類用意してあります。1つは普通の召喚石です。もう1つは契約内容が白紙の召喚石です。どちらの方が良いんですか?」
「勿論だが、白紙の方だ。その方がそちらにとっても都合がいいだろう」
「……何故ですか? 普通なら契約で縛った召喚獣の方が使いやすいとは思いますけど」
「召喚獣が召喚石に入るのは良いな? それで言う事を聞かなくなる召喚獣もいる。それはどう対処する?」
「そうですね……。契約を解除するしか無いとは思います。扱いが悪いとそうなりやすいとは聞きますね」
「そうだ。妾とて、簡単に使われるのは癪に障る。自分にとって納得のいっていない契約を押し付けられるのだからな」
「……なるほど。自分で契約した場合は、納得の上で従っていると。そういう事ですね?」
「そういう事だ。人類がどう考えているのかは知らんが、召喚獣とはそういう間柄であった方が無難ではある」
それは一理あるな。無理やり契約をさせられるよりは、自分で契約内容を決められるようにした方が良いだろう。召喚獣に取って、その方がやりやすいのは確かだろうし。こんなクラスの召喚獣くらいしか、契約の内容を決めることは出来ないんだけどな。普通の召喚獣では不可能だ。




