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二刀流への応援歌  作者: 沢村俊介
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食事と運動のバランスをどう取っていくのか

 食品会社の管理栄養士の内村さんは、東北大震災のあと、三陸沖の漁獲高が落ち、良質な魚介類や海藻類が十分確保できていないと話される。それに関東・東北の山地におけるキノコ類も需要に合った生産量が追いついていないのだという。もし、今の食堂のメニューで足りないものがあるとすれば、魚介類、海藻類、キノコ類に含まれているビタミンD、ミネラルだと言われた。

 営業担当の高田氏は、ただ一人の特別メニューのために生鮮食料品を確保するのは、現状ではかなりコストがかさむと言われる。調理長の梅本氏も、最近は人手不足でパートの調理員すら採用がむずかしいし、大量の食材で大量の料理を作る、われわれの食堂で個人用のメニューを扱うのは無理だと言われた。

 僕は何とかしたかった。

「例えば、特別メニューを調理場の隣りの部屋で提供できないですか」

 と梅本氏に食い下がっていた。

「なぁ、吉原さん。あんたの気持ちはわかる。だがなぁ、食事というのは、みんなでわいわいしゃべりながら、同じ物を食べるのがいいんじゃないか。世間じゃ、よく言うじゃないか。『同じ釜の飯を食った仲』とか、『うまいと思って食ったものこそ、滋養になる』とかさ」

 梅本さんの言葉で、僕は我に返った。確かに梅本さんの言うとおりだ。澤村選手自身が、個人用の特別メニューというものをことわるだろう。みんなと同じものを一緒に食べることに意義があるのだ。僕はそういうことに気付かなかった自分が恥ずかしくてたまらなかった。

 5月19日のことだった。おととい、澤村選手はタクシーで都内の病院へ行き、検査を受けたのだが。その結果がわかって、僕もそれを教えてもらった。澤村選手は左太腿の肉離れを起こしていたが、やはり運動不足のせいで、左足の筋肉の現在量は、肉離れを起こした直前の時に比べ、40%近くも減っていた。左足を負傷して約6週間近くというもの、一生懸命回復をめざしてやってきたのに。僕はショックを受けた。

 振り返ってみれば、かつて、ろうそくは空気中では燃えるが、水の中に入れたら消える。そういう固定観念があったから、ろうそくが液体酸素の中で燃え続けた時、僕はひどく衝撃を受けたものだ。また、人間の呼吸においては100%、酸素は口や鼻から肺に入ると思っていたので、肺呼吸は95%で、あと5%は皮膚の穴から酸素を取り入れている、と知った時も驚きを隠せなかったものだ。

 そして、今回、人間の筋肉はただ牛肉や豚肉を食べればそれでつく、というものではなく、食事と運動の両方が相まってこそのものであるということがわかって、ショックを受けたのだった。

 下半身に問題がある場合、運動に対する制限をどう考えたらいいのか、機械的な栄養管理だけでなく、おいしい食事の在り方はどうすればいいのか、そして栄養物を口から摂取することだけでは足りないとすれば、どのようにして体重管理をしていけばいいのか、僕は迷路の中に入り込んだような気がした。(つづく)




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