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二刀流への応援歌  作者: 沢村俊介
13/26

特別メニューが特別扱いになるのか

 5月2,3,4,5,6日と、ゴールデンウィーク中、われらのチームは5連勝して調子がよかった。

 5月9日の18:00から、一軍はホームグラウンドで公式戦がある。

 この日、澤村選手と僕は二軍の球場で、ライト側からレフト側に向けて軽めのランニングをし、それから外野の芝生の上でキャッチボールを行った。やはり、外はいい。でも、この外でフリーバッティングを開始するには、もう少し時間が必要になる。球場から室内練習場に移り、マシンを使っての打撃練習となる。でも、澤村選手にとって、ブルペンのマウンドに立って投球練習がやりたいんだろうなと僕は察する。なぜなら、バットを振りながらも時々、スローイングのしぐさをしているからだった。打撃練習のあと、僕がマシンやボールの片づけをしていると、澤村選手はネットに向けてボールを投げていた。片づけの終わった僕は、ネットスローながら、澤村選手の投げる姿を見ている。僕は横から見ているのだが、とてもいいフォームで投げている。惚れ惚れとする。投げる、打つ。やはり、両方とも、僕の目には見事に映る。

 投げる姿をじっと見ていると、一球ごとに何か違うような雰囲気が僕には感じられる。つまり、一見同じような投げ方をしているように見えるのだが、一球ごとにやはり、微妙に何かを変えて投げているような気がするのだ。何度も詳細に見る。僕はしろうとだ。だから間違いかもしれないが、ひとつのフォームは、手首と指先を使って投げる球にスピンをかけているように見える。そして、もうひとつのフォームは、スピンをあまりかけずに、まるでボールをネットにぶつけるようにして投げているように見える。実際のところ、スピンをかけて投げている球は、ネットを少し上方向に巻き上げているようであり、一方、スピンをかけず、握りこぶし大の石を7メートル先の岩にぶつけるように、投げている球は、ネットを強く前方向に押し付けているように見えた。澤村投手は単純にネットスローをしているのではなく、色々と考えながらやっているのだと、僕には思えた。、

 僕は、澤村選手の、故障を起こさない、からだづくりのため、栄養のある食事メニューを開発したいと思っていて、まず、そのことを曾根チーフ・トレーナーに話した。チーフは、「俺には栄養学のことがよくわからない。でも、そういうことは球団事務所がちゃんと考えているはずだ」と言われた。そして、曾根チーフの話では、どうやら、うちの食堂経営については、外部の食品会社に委託しているらしい。その会社は、製造や営業などの社員のほかに、管理栄養士や調理員を抱えていて、自社の食材利用を中心に据え、管理栄養士たちがメニューを考え、そのメニューを基に、調理員たちが委託された食堂に出向き、その厨房で、実際の食事を作っている、ということだった。

 僕は球団事務所の予算担当のスタッフに電話をした。松尾氏が出た。彼も高校時代は野球をやっていた。球団事務所に行った時、近くの空き地でキャッチボールをやったこともある。

「おいおい、吉原。また、特別なことをやろう、ってかい。考えてみろや、澤村君だって自分が球団に特別扱いされているって、かなり周りの人間に気を使っているんだぜ。また、食事に他の選手たちと違ったものが出されてみろや。澤村君だってよけい、いやな気分になるだろうさ」

「しかし、澤村選手は今、二度目の負傷をしているんですから。これから先のことも考えなくては……」

「そりゃ、わかるさ。でもな、世の中、そんなに単純じゃないさ。みんながみんな、純粋な気持ちじゃ、見ていないってことさ。やはりアスリートだって、『あいつは、球団から、えこひいきされている』と僻みっぽく思うやつはいるからね」

「・・・・・」

 僕は、言葉に詰まっていた。(つづく)

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