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二刀流への応援歌  作者: 沢村俊介
10/26

チームのために役立つことをする

 僕は精神科医などで決してない。しかし、選手のみんなに、心のケアについて、メンタルヘルス(精神的な健康)について話ができたらいいだろうなと思う。

 僕は通勤電車の中でも、アパートに帰って夕飯を作る時でも、選手の心の悩みを解消させてあげる方法とは何だろうと考えていた。方法はたくさんあるだろう。でも、自分にできる方法には限りがある。自分にできる方法とは一体何だろうと考えるのだ。

 僕はベッドに横になりながら、昔のことを思い出していた。中学校の野球部の時代は楽しかったと思う。暗くなるまで野球をやっていた。たまには紅白試合で、仲間同士、アウトかセーフで口喧嘩になるのだが、試合が終わって帰る頃になると、もうケロッとして元通りの仲良しになるのだった。

 高校の野球部の時代は、正直、楽しくなかったなと思う。おそらくレギュラーになれなかったからなのだろう。紅白試合をする時だって、僕は試合に出られなかった。一塁の審判をやっていた。

 僕が高校二年生のときだ。忘れ物をして部室に戻った時だった。三年生が野球部の監督に訴えている場面に出くわしたことがあった。三年生は、監督に対し、しきりに『今度の大会、一年のあいつがなぜベンチに入って、俺たち同級のAやBが入れないんですか』と訴えていた。その時、僕はスポーツの場合はやはり実力主義で行くべきで、先輩たちの抗議はあまり納得できなかったような気がする。でも、この野球の世界でも、年長者が能力のある年少者にやきもちを焼くことはあるのだなと思ったことも事実だった。

 もっとも、この野球センスのある一年生の子について言えば、『おまえのおかげで俺たちは甲子園に行けるかもな』と言いながら、レギュラークラスの三年生が、猫なで声になってこの下級生にすり寄っていく場面を見たこともあって、この時はさすがに僕も、やはりこの世界は実力だけが物を言うんだな、と嫉妬の気持ちを覚えたこともあった。

 今、澤村選手の場合、どうなのだろうか。やはり先輩たちにすれば、毎日疲れる試合をこなしている中で、開幕8試合が終わったばかりの時に戦線離脱をし、約2カ月程度の調整に入らせてもらっている後輩に対して、うらやましい気持ちを持ったとしてもおかしくはない、と僕には思える。とすれば、やはり澤村選手としても、そういう先輩たちや同僚たちの気持ちは忖度できるかもしれない。

 でも、そこで萎縮してしまったら、それこそ才能を伸ばしていけなくなる。小さいことに気づきながらも、進むべき時には周りのことは気にせず、大胆に一歩を踏み出していかなくてはならない。

 確かに理想は、周囲の雑音、マスコミの報道は無視して自分の選んだ道をひたすら突き進む、そういうことだろう。だが、人間、そのように単純にはいかない。一体僕は、どういうサジェスチョン(示唆)ができるのだろう。

 僕は寝付かれない夜もあった。しかし、高校の野球部の時代、つらい時ばかりではなかったような気がした。僕はレギュラーにはなれなかったが、三年の夏の甲子園県予選の時まで、ずっとフリーバッティングのピッチャーを務めた。みんなから感謝された。僕もうれしかった。試合には出られなかったが、チームの役に立ったという気持ちは持てたと思う。

 そうだ、自分もチームの何かに役に立っている、そういう実感こそが大切ではないかと僕は思った。(つづく)


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