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第1話 旅立ち(家出)

「ねぇ、母さん魔法を教えてよ!」 男の子が言う。男の子は7歳で短めに切られた赤い髪が目立つ。活発そうな見た目とは裏腹にオドオドとしていて、顔や動きの端々に幼さが残っている。


「アリオあんたまたそんなこと言ってんのかい。馬鹿なこと言ってないでさっさとそれを父さんのとこに届けてきな!」女性がボウルで生地を捏ねながら呆れた様子で言う。女性は二十代後半と見え、


「馬鹿なことなんかじゃないよ。母さんだって父さんだって、村のみんなだって使っているじゃない!それに魔法を使えばもっと手伝えるかもしれないよ。」アリオが反論する。


 ガンッ!と女性はボウルを叩きつける。

「何度も言ってるだろう。これは10歳になって街の学校に入って12歳になってから学べるもんなんだよ。魔法っていうのはね、使い方を間違えれば危ないんだよ。」


「で、でも、簡単な魔法ならいいじゃない。母さんがよく使ってる火種を出す魔法とか水球を出す魔法とかなら使っても危なくなんかないよ。」アリオは食い下がる。


「あんたが勝手に火の魔法を使ってもしそれで、家や納屋に火がついたらどうしてくれるんだい。それにね、あんたは魔法を便利な道具だと思ってるみたいだけどね、魔力が無くなっちまえば死んじまうかもしれないんだよ。あんた自分がどれくらい魔力を持ってるかなんてわからないだろう。私や父さんだってあんたがどれくらいの魔力をわからないんだからね!」女性のこめかみがぴくぴくと動いている。


「で、でも•••」

「でもじゃない!まだわからないってんなら今夜は飯抜きだ!」しつこく言い募るアリオに女性が怒鳴る。女性の怒りはとうとう爆発したようだ。


「ぼ、僕は諦めないよ。母さんたちが教えてくれないって言うならこの村を出て行ってやる!」アリオは怒鳴られたことが効いているのか、涙目である。


「はんっ、あんたなんかが家出できるわけないだろう。やれるもんならやってみな!」女性は鼻で笑う。女性はアリオに家出をする勇気はないと確信しているようだ。






「アレスタ、アリオはどうしたんだい?部屋に閉じこもっているみたいだけど。」男性が言う。アリオが食卓にいないことを不思議に思っているようだ。


「それが、••••••ってことがあったのよ」アレスタは日中のアリオとの出来事を話した。


「なるほどなぁ、それで今日はアリオが来なかったわけか。」男性が納得していると、ギィと音がした。音のした方をみると木の扉が少し開きそこからアリオが覗いていた。


「あ、あの、僕の分の晩ご飯は•••」アリオが控えめに問いかける。


「晩飯抜きって言っただろう。これに懲りたらもう魔法を教えてなんて言うんじゃないよ!」アレスタはきっぱりと言う。アリオは涙目で男性を見る。男性は少し考えて言う。


「アレスタ何もそこまで言わなくてもいいんじゃないか?」

「あんたね、こういうのは一度痛い目見ないとわからないのさ。あんたがいつもそうやって甘やかしているからアリオがこんなに我儘になったんだろう。」アレスタの矛先が男性にも向かう。アレスタに睨まれた男性はすごすごと引き下がっていった。アレスタがもう一度アリオを睨みつけるとアリオは慌てて自室に戻って行った。






「魔法をもっと知りたいっていうのの何がいけないのさ!」

アリオは自室でぶつくさと呟く。アレスタたちはアリオがどれだけ魔法を学びたいと熱弁しても、一向に聞き入れてくれない。


(そうか、母さんたちは魔法が嫌いなんだ。そうに決まってる。このままじゃ僕はずっと魔法のことを知ることができないじゃないか。)


 アリオの頭の中からは、アレスタが言った魔法の恐ろしさや12歳になったら魔法を学べることは消えているようだ。アリオはさらに思案を巡らせる。


(そうだ。この村を出ればいいんだ。村を出て、どこかで魔法に詳しい人にお願いして魔法を教えて貰えばいいんだ。でも、僕にできるかな•••。)


 弱きになり決心が揺らぐアリオだが、そんな時昼間にアレスタから鼻で笑われたことを思い出す。思い出してアリオはムカムカしてきた。


(そうだ、やってやる。僕だってやればできるんだ!)


 アリオは村を出る決心を固め、計画について考え始めた。


(どうしたらバレずに村を出られるだろうか。母さんたちが寝ている間に出発するとして•••。村の門から出て行けばすぐに追いつかれてしまう•••。そうだ!森から行けば•••。森なら見つかりにくいし、村の人が入らないから気づかれにくい•••。)


「よし!森から行こう!」名案につい大きな声が出てしまい、アリオは慌てて口を手で覆った。






 アレスタたちが寝静まった真夜中アリオは行動を開始した。まずは持って行くものの確認だ。剣(ナイフ)、ロープ、毛布、、、リュックにそれらを詰め込み、廊下をそっと歩いていく。


(危ない、食べ物を持ってない持っていかないと。)


 アリオは台所からパンと干し肉、水筒を一つずつ持ち出しリュックにいれた。準備を終わらせたてアリオは家を出る。空の端はすでに白み始めている。


(日が登ったら母さんたちが起きてきてしまう)


 アリオは急いで森へとかけて行った。

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