歌音さんは心配症
謙信神社の春先の光景です。
謙信神社の朝は早い。アリアが出かけるのはいつものこととはいえ、来月にはもう、謙信祭、なのよねえ。いろいろ面倒だわ。以前ほどには力も使いづらいし、明さんもいつ帰るんだか。聖歌ちゃんは戻ったみたいだけど、何か忘れている気がするのよねえ。アリアが帰ってきたら、しゃくだけれどしっかりと相談しなきゃ。そうこうしているうちに規範さんがお勤めを終えて帰ってくる。私も妻として、謙信神社の巫女としてしっかりしなきゃね。台所で考えに耽っていると、犬神2柱が報告に来る。
雷牙「姫様。主様はもうすぐお帰りにございます。」
雹牙「今ほど息子らがお伝えした次第にございます。主様。」
「そう、ありがとう。では朝餉の用意ね。あなたたちも社殿でお休みなさい。・・・権禰宜殿は?」
雷牙「今しがた居間にお戻りですよ。」
雹牙「姫様も少しはおくつろぎになっては?」
そうかもしれない。メイ君たちの進級のお祝いもしなければだし、私も少し落ち着こう。そろそろあの娘も忙しく、と言うか大変になるだろうし。私ぐらいは
余裕を持ってなくてはね。まずは朝ご飯を用意して・・・焼き魚でいいかしら。お味噌汁はあさげで誤魔化して。居間に入っていって、
「お疲れ様、規範さん。」
少しくらいはこの人に甘えてみてもいいのかも、ね。
家に戻ってご飯を食べて、学校の準備をしているうちに出掛けなきゃならない時間になってしまった。制服に着替えて鳥居前に行くと、まだ巫女服姿の都さんが箒で参道を掃いていた。
「都さん、もう登校の時間よ。着替えて一緒に行きましょう。」
声を掛けられた、私と同じアルバイトの巫女である都さんが、挨拶を返す。
「お早うございます、アリアさん。もうそんな時間?でもメイさんの姿が見えませんけれど。」
都さんは私やメイちゃんと同じ舞沢高校の2年生だ。それに、私や歌音さんとは浅からぬ因縁があるし、メイちゃんとも、2年前、中学校の時にちょっとした関りがあったけれど、今はまあ、普通に仲良しだ。だけど、ちょっと考えるそぶりをした後で、
「先に行ってて。すぐ行くから。今日は荷物も少ないし、何か黒も落ち着かないの。」
「黒」とは都さんに憑いている猫又だ。悪い子ではないのだけれど、時々予想できない行動を起こす。
「大丈夫?」
「うん、何かムズムズするだけみたいだから。私ひとりで問題ないよ。だから行って。私は自転車で行くし。始業式の挨拶もあるでしょ、会長。」
そう語る言葉に疲労も憂いも無さそうだ。
「じゃあ、行くね。」
見送られて鳥居をくぐって歩いてもそう遠くはない学校に向かう。都さんは箒を片付けて社務所に入っていったようだ。学校に着いたら、まず職員室に行って先生と本日の次第の確認を行って、校門で生徒たちの挨拶を受けて、そうそうメイちゃんのお弁当と着るものも持っていかなくちゃ。思いにふけっているともう8時。生徒会一同は8時半まで学校集合。、10時からはいよいよ始業式だ。今年度はどんな一年になるのかな。
次のお話がちょっと長くなりそうなのでこの辺で切ってあります。




