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深淵に住む魔女 ―アノンノア天則―  作者: 久和調


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第19話「震えた手と、届いた声」

 目が開いた。


 石の天井が見えた。——知っている天井だ。遺跡の上層。灯りが揺れている。オリーゼさんが置いた蛍灯だ。


 横になっていた。硬い床に、何かが敷いてある。外套だ。——自分のではない。もっと大きい。オリーゼさんのだ。


 頭が重い。体の輪郭がぼやけているような、自分が薄くなった感覚がある。指先が冷たい。手が震えている。——止まらない。


 横で丸くなっている影があった。鱗の光沢。——リュートだ。低い寝息を立てている。


「起きたか」


 声がした。ヴァンさんだった。壁に背を預けて座っていた。見張りをしていたのだ。


「……ヴァン、さん」


 声が掠れた。自分の声が遠く聞こえる。


「どのくらい」


「四時間くらいだ。オリーゼさんが上の階で壁の文様を調べてる。すぐ戻る」


 四時間。——あの後、四時間も眠っていたのか。


 起き上がろうとした。——腕に力が入らない。肘が滑って、また横になりかけた。


「無理すんな」


 ヴァンさんが腕を掴んで支えてくれた。大きな手だ。膝を立てて、こちらに身を寄せている。


 壁に背を預けた。呼吸が荒い。こんなに体が重いのは初めてだ。


「……何が、あったんですか」


「覚えてないか」


「……あの霊珠を、受け取って。それから——」


 断片的な記憶がある。頭の中に何かが流れ込んできた感覚。怒りと——もっと長い、ずっと長い何かの感情。待っていた。誰かが、ずっと。


「……頭の中に、誰かが語りかけてきた。すごく——怒っていた。でも、待っていた。……それだけしか、分からない」


 ヴァンさんが少し黙った。


「お前の姿が変わった」


「——え」


「髪の色が変わった。顔も。別人になった。数秒だけだけど」


 ——自分に、あの霊珠の霊魂が。


「……何に」


「男だった。灰色っぽい白い髪で、お前より年上の——たぶん、あの霊珠の霊魂だと思う」


 霊珠を見た。——手の中にない。周りを見る。ヴァンさんが懐から出して見せた。


「落としてたから預かってた」


 受け取ろうとして、手が震えて掴めなかった。ヴァンさんが手のひらに乗せてくれた。冷たい。静かだ。あの時の、あの強い反応が嘘のように。


「戻ってきたぞ」


 ヴァンさんの視線を辿ると、入口にオリーゼさんが立っていた。片手に水筒を持っている。


「起きたのね。——顔色は、まだ戻っていないわね」


 オリーゼさんが膝をついて、額に手を当てた。冷たくて気持ちがいい。脈を診ている。


「霊素をかなり消費してそうね。命に別状はないけれど——この子の輪郭が揺らいでいる。回復には時間がかかるわ」


 オリーゼさんが水筒と、小さな瓶を出した。


「養霊酒よ。すぐには効かないけれど、飲んでおいて」


 手が震えて瓶を持てない。オリーゼさんが口元に運んでくれた。苦い。舌の奥に甘みが残る。


「……オリーゼさん。さっきの——ヴァンさんが言っていた、僕の姿が変わった、って」


「顕霊よ。霊珠の中の霊魂が、あなたの体を通じて顕れた」


「けん、れい」


「祈祷も何もなしに、霊珠に触れただけで起きた。普通はありえないわ。——あなたの三霊紋と、あの霊珠の間に、よほど強い共鳴があるのね」


 もう一度、手の中の霊珠を見た。青白い、丸い石。——この中の人が僕に。


「……あの人は、何かを伝えようとしていた。——もう一度呼んで、オリーゼさんに聞いてほしいんです」


「……何を聞くの?」


「なぜ僕を呼んでいたのか。——あの怒りが何だったのか」


「……分かったわ。でも今のあなたの体では無理。村に帰って、きちんと休んでから」


 オリーゼさんが立ち上がった。


「帰りましょう。この子をこれ以上ここに置いておくのは良くないわ」


 ◇


 遺跡の門を出た。


 ルカはまだ自分で歩けたが、足元がふらついていた。階段ではヴァンが肩を貸した。薄い。肩に体重がほとんどかからない。


 外に出ると、空氣が変わった。冷たい風が頬に当たる。湿った土の匂い。あの生臭い匂いはもうない。遺跡の奥——あの有機物の層は、もう脈打っていない。今頃ネズミが群がっているだろうか。


 歩いた。遺跡の残骸を横目に村の方へ向かう。リュートが先を行く。尻尾が低い位置で揺れている。疲れているのだ。全員が。


 サータス村が見えた。


 石の基礎。低い木造の家。燻した木の匂いがする。——帰ってきた。


 村の入口に人影があった。


 ヨルガだった。


 杖を突いて立っている。——ルカを見た。


 長い沈黙があった。


 ヨルガの目がルカの顔色を見ている。蒼白い顔。震えている手。それから、ヴァンの肩に縋っている姿。——全部見ている。


「怪我は」


「——ないです」


「……そうか」


 それだけだった。


 ヨルガの目に何かが動いた。——安堵だ。一瞬だけ。すぐに消えた。


 ヴァンとオリーゼに目を向けた。


「世話になった」


「世話になったのはこちらも同じよ。ルカがいなければ、あの中で何も見つけられなかった」


 オリーゼが静かに言った。嘘ではない。ルカの霊法感知がなければ、あの迷路のような遺跡の中で最奥にたどり着く事はできなかった。


 ヨルガが短く頷いた。


「——休め」


 ルカに言った。


 ◇


 ルカを寝かせた。


 村の一角、ルカの住んでいる小さな木造の部屋。簡素な寝台と、壁に掛けた布。窓は小さく、光が細く差し込んでいる。


 ルカは横になった途端に眠った。顔色はまだ蒼白い。——回復には時間がかかるだろう。


 オリーゼがルカの額にもう一度手を当てて、何かを確かめていた。


「明日までは動かさない方がいいわ。明後日——もう少し顔色が戻ったら、話をしましょう」


「何の話を」


「霊法術よ」


 オリーゼが霊珠を見た。ルカの手のすぐ横に置いてある。


「あの霊珠の中の霊魂ともう一度話をするには、顕霊をもう一度やる必要がある。でも今度は暴発させちゃいけない。——この子に、安全なやり方を教えるの」


「ルカに? オリーゼさんがやるんじゃなく?」


「あの子の三霊紋との共鳴が強すぎるのよ。第三者がやるより、本人がやった方が接続が安定するわ。——私は横について見守る」


 オリーゼが立ち上がった。


「二日、休ませましょう。それから始めるわ」


 ◇


 二日が過ぎた。


 曇っている。風がない。湿った空気が肌に張り付く。——ここの朝はいつもこうだ。


 ルカの顔色は二日で少し戻った。手の震えは止まっている。——まだ万全ではないが、動ける程度には回復している。


 村の外れ、低い石壁に囲まれた広場。ヨルガの家の裏手にある、日当たりの悪い場所だ。人が来ない。


 オリーゼがルカの前に座っていた。ルカは霊珠を両手で握っている。


「いい? 難しく考えなくていいの」


 オリーゼが手のひらを開いた。掌の上にはノクタが寝ている。革と藍布のツギハギの小さな体。とんがり帽子。張り付いた笑顔の刺繍。


「声で語りかけるの。霊魂に届く音を出す。——こう」


 オリーゼが低い声で短く唱えた。言葉ではない。音だ。喉の奥から出る、柔らかい響き。——ノクタの身体がふわりと光った。体が動いた。掌の上でくるりと回って、オリーゼの指先に登る。


 ——と思った瞬間、ノクタがオリーゼの指先から跳んだ。真っ直ぐヴァンの方へ。


「クー」


 短い拳がヴァンの顎を打ち抜いた。——小さい。が、重い。骨に響く一撃。


「——っ⁉」


 ノクタはそのままオリーゼの肩に飛び移り、短い腕を組んだ。張り付いた笑顔の刺繍のまま、ふんぞり返っている。


「……ずっと寝かされてた件、怒ってんのかあいつ」


「ええ、たぶん。——留守番は嫌いなの、この子」


 笑顔のまま微動だにしない。——あの顔で怒られても判別できない。


 オリーゼが小さく息をついて、ルカに向き直った。


「——さて。続けるわよ。声で、相手の霊魂に触れるの。言葉じゃなくていいわ。——触れたいと思うこと。それが響きになれば、届く」


「……オリーゼさんは、いつもこうやってコビトたちを」


「ええ。同じことよ。これと同じことを、あの霊珠にやりなさい」


 ルカが霊珠を見た。青白い丸い石。光はない。ただの石に見える。


「やってみて」


 ルカが息を吸った。目を閉じた。


 声を出した。——最初は何も起きなかった。ルカの声は普通の声だ。少年の、少し高い声。霊珠は沈黙している。


「力まなくていいわ。声を相手に届けるつもりで。——あなたが呼んでいるのだと、あの人に伝わるように」


 ルカがもう一度声を出した。今度は少し低い。喉の奥から出している。


 ——霊珠が、かすかに震えた。


「もう少し。そのまま」


 ルカの声が変わった。——本人が意識しているのかどうか分からない。声の質が変わった。振動が変わった。喉から出ている音が、肚の底から響いているような。


 霊珠が光った。淡い。脈打つように、一度、二度。ルカの声に合わせている。


「いいわ。そのまま——」


 オリーゼの声が止まった。


 ルカの髪が変わり始めていた。


 淡い水色が、根元から灰白に変わっていく。——ゆっくりと。染まるように。


 オリーゼが息を呑んだ。


 ルカの顔立ちが変わり始めている。少年の丸みが消え、骨格が浮き出してくる。彫りが深くなる。灰白の髪。年を重ねた男の輪郭。


 オリーゼが身を乗り出した。驚いている。しかし止めない。——安定している。前回の暴発とは違う。体が崩れていない。声が途切れていない。


 一歩引いた。——また、これだ。目の前でルカの顔が消えていく。


「これは——叙述(じょじゅつ)よ」


 ルカの——いや、もうルカではない。


 目が開いた。深い藤色の、鋭い瞳。


 ◇


 最初に動いたのは、目だった。


 自分の手を見た。——年を重ねた手だ。指が長い。それから指を曲げた。確かめるように。


 周囲を見ている。——ゆっくりと。石壁を見た。空を見た。地面を見た。灰白色の石と、湿った土と、灰色の低い雲。


 観察している。——学者の目だ。


「……どれだけ経った」


 低い。やや枯れた声。ルカの声ではない。年を重ねた男の声だ。


 「ここはどこだ」ではなく「どれだけ経った」。——知っているのだ。自分が何者で、何が起きたかを。


 オリーゼが答えた。


「ここの遺跡が造られたのは、少なくとも五百年は前よ。——あなたはいつの時代の人?」


 灰白の男——イルヴィスが、オリーゼを見た。


「……五百年か」


 感情が読めない声だった。驚いているのか、悲しんでいるのか。——どちらでもないのかもしれない。


 目がオリーゼの肩を見た。ノクタが止まっている。


「……霊法を使えるようだな」


「少しだけよ」


「少しではないだろう。その人形——霊依だな。これだけの精度で維持している者は、そうはいない」


 オリーゼが何か言いかけたが、イルヴィスの目はもう別の場所を見ていた。


 ヴァンを見ている。——正確には、ヴァンの脚を。


「……面白い造りだな。この脚は」


 立ち上がろうとした。——が、体が言うことを聞かない。膝が折れかけて、石壁に手をついた。


「無理をしないで。まだ体が追いついていないわ」


 オリーゼが言った。イルヴィスは黙って座り直した。——従ったのではない。体が動かないから仕方なく、という顔だ。


 座ったまま、ヴァンの義足を見ている。


「……義足か。だが歩行に支障がない。関節が生きている——どういう仕組みだ。誰が作った」


「……あー、オリーゼさんです」


「……ほう」


 イルヴィスがオリーゼをもう一度見た。今度は少し違う目だった。——値踏みではない。興味だ。


「——一つ、聞かせて。この子があなたに呼ばれていた。なぜ?」


 イルヴィスの目がわずかに動いた。——オリーゼを見て、それからルカの体を見下ろした。自分の体を。


「……この子の霊紋の構造が、私の研究に近い。——だが今はいい。それだけのために呼んだわけではないだろう」


 切り替えが早い。——残り時間を分かっているのだ。


「とある遺跡の奥で、金属板を見つけたの。文字が刻まれているけれど、読める者がいないの」


「見せろ」


 ヴァンが金属板を差し出した。掌に収まるくらいの大きさ。表面に刻まれた、読めない文字。


 イルヴィスが受け取った。——指先が震えている。ルカの体の疲労のせいだ。


 文字を目で追っている。表情が変わった。


「……この名は知っている」


 声が変わった。——低いままだが、質が違う。知識に触れた時の、学者の声だ。


「珍しいな。……これはナクラだ。環境維持のための回路網。——私も図面でしか見たことがない」


「ナクラ?」


「自分の出す廃棄物を自分の燃料にして回り続ける装置だ。特定の領域の化学環境を維持する。——よく出来ている。作った奴は相当な腕だったはずだ」


 イルヴィスの目が光っている。


「そもそもこの装置の原理はな——」


「待って」


 オリーゼが遮った。イルヴィスが不機嫌な顔をした。


「——時間がないの。あなたの体は持たないわ。核心だけを聞かせて」


 イルヴィスが舌打ちした。——本当に舌打ちをした。


「……分かっている」


 金属板を見た。


「制御するには鍵が要る。——制御鍵だ。装置固有の認証機構を持つ。持ち主以外には起動できない」


「構造は?」


「三層だ。柄が持ち主を識別し、核が信号を作り、針が装置に火を入れる。——これがないと装置の制御はできない」


 イルヴィスの声が早くなっていた。残り時間を意識している。


「鍵の核には特殊な化合物が要る。——魔汞と霊晶の強制結合体だ。普通は存在しない。作れる技術者も——」


 声が途切れた。


 ルカの——イルヴィスの手が震えていた。震えが大きくなっている。額に汗が浮いている。


「……時間か」


 イルヴィスが自分の手を見た。灰白の髪の先端が、水色に戻り始めている。


「まだ話すことがある。鍵の素材の入手先と、もう一つ——」


 声が掠れた。外見が揺らいでいる。灰白と水色が混じっている。深い藤色の瞳が薄くなっていく。


「——また呼べ。まだ足りない」


 それが最後だった。


 灰白が水色に戻った。骨格が丸くなった。——ルカだ。ルカの顔が戻ってきた。淡い藤色の目が、焦点が合わなくなっている。


 体が傾いた。オリーゼが支えた。


「十分よ。今日はここまで」


 ルカが何か言おうとした。口が動いたが、声にならなかった。——そのまま、目を閉じた。


 顔面蒼白。呼吸は浅いが安定している。——前回の暴発よりはずっとましだ。


 ヴァンが金属板を拾い上げた。イルヴィスが手放したものだ。


 ◇


 翌日。


 ルカは朝には起きていた。顔色はまだ白いが、昨日よりましだ。自分で歩ける。


 オリーゼがルカの体を診た。


「昨日よりは回復しているわ。でも、もう一度やるのは——まだ早い」


「分かっています」


 ルカが頷いた。落ち着いている。——少し、変わった。あの顕霊の後から。目の奥に、何かが残っている。


 ヴァン、オリーゼ、ルカの三人で、得られた情報を整理した。制御鍵の素材——魔汞と霊晶の化合物。作れる技術者。どちらも、この村では手に入らない。


「素材を探すにしても、まずイルヴィスの話の続きを聞かないと。具体的な手がかりがない」


 オリーゼが言った。


「……もう一度、あの人を呼ばないと」


 ルカが言った。


「ええ。でも今のあなたの体では、すぐには無理よ。回復を待ちましょう」


 ルカが少し黙った。霊珠を見ている。


「……僕が呼びたいんです。あの人はまだ話したいことがあった。——僕も、知りたいことがある」


 ルカが霊珠を見ていた。


「あの人を顕霊できるのは僕だけだ。——あの人の知識が要るなら、僕がいないと駄目だ」


 オリーゼが黙った。


「——そうね」


 ◇


 ヨルガに話をしたのは、その日の午後だった。


 ヨルガの家。村長の住居というには質素な、石段の上の板の間。壁に古い地図が貼ってある。窓から薄い光が差し込んでいる。


 ヨルガは椅子に座っていた。杖を膝の横に立てかけている。目がオリーゼを見て、ルカを見て、ヴァンを見た。


 オリーゼが説明した。遺跡で起きたこと。霊珠のこと。イルヴィスのこと。金属板に書かれていた内容。——そして、ルカを連れて行く必要があること。


 ヨルガは最後まで黙って聞いていた。


 沈黙があった。長い沈黙だ。


 ヨルガの目がルカを見ている。九年間育てた子どもを。——遺跡の声に応え、霊珠を手にし、古代の学者を降ろした子どもを。


「……お前が決めたのか」


 ルカに言った。


「……はい」


「誰かに言われたわけではなく」


「……はい。僕が——行かないといけないと思いました」


 ヨルガが目を閉じた。


 長い。——窓の外で、風が鳴っている。


 目が開いた。


「——戻ってこい」


 それだけだった。


 ルカが何か言おうとして——口を閉じた。目が少し赤くなっている。


「……行ってきます」


 声が震えていた。——でも、笑っていた。少しだけ。


 ◇


 翌朝、村を出た。


 薄い光が石壁を照らしている。煙の匂いがする。——誰かが朝餉(あさげ)の支度をしている。サータス村の、いつもの朝だ。


 ルカが小さな荷物を背負っている。着替えと、霊珠と、ヨルガが持たせた干し肉。それだけだ。少年の旅支度。


 村の入口でヨルガが見送った。杖を突いて立っている。——何も言わなかった。ルカが振り返った時、目が少し細くなった。それだけだった。


 歩いた。村を出て、石がちの道を下っていく。


 谷の入口に着いた。


 見下ろした。切り立った崖の間を、白い霧が埋めている。木々の先端だけが霧の上に突き出していた。——行きの時より明らかに濃い。


「霊素が増えているみたいね。あの生き物がいなくなった影響かしら」


 オリーゼが言った。


 ルカが谷を見ていた。目を細めている。


「……何か、いますね」


 リュートが鼻を鳴らした。尻尾が下がっている。——あいつも分かっている。


 ヴァンは谷の霧を見た。白い。深い。


「行きましょう」


 ルカと一緒に頷いた。


 降りた。


 深淵での生活、五十二日目。


 谷が、白く飲み込んでいく。


---


第19話「震えた手と、届いた声」 ―― 了 ――

【あとがき】

養霊酒は、霊素を含む液体の一種。霊素の消耗を回復させる。

養魔酒が魔素を補うのと対の関係にある。味は苦く、舌の奥に甘みが残る。

ヴァンは養魔酒すら飲めないのに、ルカは初日から養霊酒を飲まされていた。

体質の差は残酷である。

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