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111 切り札の正体

 神宮寺はメンバーのざわめきが落ち着いた頃合いを見計らって、


「今回の決定に至った経緯は二点ある。急に社長命令されても納得できないと思うから伝えておく」


 といい、パソコンから画像ファイルを開いた。

 姫井が下絵をつくり、イラストレーターが仕上げた『守護女神アテナ』のキャラクタービジュアルである。


「これを見てどう思う?」


 可愛い。

 なおかつ格好いい。

 幼コレの人気キャラTOP10に入ってもおかしくないクオリティだとは思う。


「悪くはないよな。合格点だろうな。カノープスというライバルが登場しなければ、このまま実装した。でも一点だけ問題がある」

「ガルメモのキャラには可愛さで劣ると?」

「う〜ん、少し違うかな」


 俺の考えはすぐに否定される。


「次はゆり姫の最高傑作。みんな大好きサクヤ様だな」


 次に神宮寺が開いたのは『サクヤヒメ』のキャラクタービジュアルだった。


 可愛い。

 使いやすい。

 まあまあ強い。

 その三拍子が揃っているサクヤヒメは、押しも押されもせぬ大人気キャラクターなのである。


 俺からいわせると、全キャラを姫井が考案したのだから、クオリティにそれほど差がないように感じられる。

 しかし、幼コレユーザーの反応は微妙に違うのだ。


「なぜサクヤヒメが大人気なのか? そりゃ、飛びっきり可愛いからだ。じゃあ、なぜサクヤヒメが飛びっきり可愛いのか? 分かる人はいるかな?」


 首を傾げる先輩たち。

 俺は過去の会話を思い出し、遠慮がちに手を挙げた。


「サクヤヒメが黒髪で、細身で、色白だから……ですかね」

「ピンポン!」


 神宮寺がパチンと指を鳴らす。


「本人も薄々気づいていたが、アテナみたいな西洋風のキャラ、はっきりいってゆり姫は得意じゃない。でっかい武器とか、ゴツゴツした甲冑もな。まあ、得意じゃないってだけで、及第点の下絵は描けるのだが……」


 西洋の血を引いているくせに、西洋風のキャラクターデザインが得意じゃないのだ。

 納得した先輩たちが、うんうん、と頷く。


「ゆり姫は本領を発揮できない。新キャラがアテナである限りはな。軍神だから凛々しい雰囲気なんだけど、そういうのは正直いって苦手なんだ。その苦手分野でカノープスと勝負するのも変な話だろう」


 神宮寺が次々と画像ファイルをめくっていく。

 たくさんの黒髪、細身、色白キャラが俺の網膜に飛び込んできた。


「この数日でゆり姫が考えたキャラクター原案だな。和テイスト。全体的にふわふわしたデザイン。悩みに悩んだせいで、ゆり姫は体調を崩したのだけれども……」


 髪型や服装の異なるキャラが三十体はいる。

 これはロリコン愛の集大成といっても過言ではない。


「最強に可愛いキャラを考えてもらった。現在のゆり姫の全身全霊だ。そうしないとサクヤヒメを越えられるようなキャラは誕生しないから」


 神宮寺が一枚のイラストを拡大する。


「最終的に決まったのがこれ。イラストレーターさんに頼んで、最速で仕上げてもらった。つい十分くらい前に上がってきたキャラクタービジュアル」


 新キャラを初めて目にした先輩たちの反応は、


「グッときますね」

「か……可愛い……」

「オリジナルキャラですか!?」


 という良好なものであった。


 まさかの巫女さんである。

 髪型は躍動感のあるツインテール。

 そして片手には神楽鈴(かぐらすず)のようなアイテムを装備している。


 彼女には妖狐の力が宿っている設定らしい。

 足元には一匹の白狐も描かれている。


 巫女と妖狐。

 姫井がコンセプトに動物を取り入れてくるのは正直いうと意外だった。


「この幼女の顔つき……」


 どこかで見たことがある。

 俺の推測が正しければ……。


「限りなく社長に似ていますよね」


 冗談半分でいったのだが、


「ゆり姫の理想だからな。似ているのは仕方がない」


 神宮寺はあっさりと認めた。


 社長似のキャラクター。

 俺は年甲斐もなく胸をドキドキさせる。


「名前が『巫女いのり』じゃないですか⁉︎」

「うん、候補は色々考えたよ。巫女かんな、巫女さつき、巫女なつめ……けれども最終的には巫女いのりで行こうという方針になった。私たちだって覚えやすいだろ」


 このキャラクターには補足説明までついている。


『ヤマトという世界からやってきた巫女』

『妖狐一族の血を受け継いでいる』

『隣にいるのは相棒の妖狐コン』

『変身スキルにより獣耳と尻尾が生える』

『変身後は戦闘終了までスキルが変身⇨鬼火になる』


 変身後のイラストも添えられている。

 幼コレとしては初となる獣っ娘キャラクターなのである。


「バトル中にキャラクターが変身するという要素は、前々から考えていたけれど、うちのゲームで実装するのは初めてだな」


 変身前と変身後。

 二種類の可愛さを楽しめるという趣向だ。


 俺としては純粋な巫女さんスタイルに惹かれる。

 しかし、人気が集中するのは獣っ娘の巫女さんの方だろう。


「ユーザーに喜ばれると思う。まあ、2Dモデルが変身前と変身後の二通りいるから、単純に作業が増えるのだけれども……」

「間に合いますかね? 2Dモデル?」

「ちょっと本気を出すしかないな」


 神宮寺はこともなげに言い放つ。

 そうなるとクリアすべき問題はあと一つ。


「巫女いのりの声って、誰が担当するのですか?」

「今から声優さんを捕まえるの難しいだろ。セリフも未定だし。だからうちの社長がやるしかねえよ。そういう意味だと、早く風邪を治してくれないと困るんだよな」


 瀬古いのりが声まで担当するらしい。


「楽しすぎますね。その発想……」

「だよな。もう普通の感覚じゃねえよな。控えめにいって最後の切り札だよ」


 これは間違いなく幼女株式会社の総力戦となりそうだ。

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