激突
フロアーには中央に一つ、周りに4つの柱があり、それを伝って自動防衛兵器が降りて来ていた。その他、スロープは壁に沿って作られ、ガーダーやタンクタイプが移動できる様になっていた。
ボゴン! バゴン!! という床との激突音と共に、目の前にガーダーが数体落ちてくる。見上げると、厄介なパルスポッドも降りてきていた。宙に浮いているパルスポッドを破壊すると、宙でプラズマ雲を放出し、それに触れたロボット達を麻痺状態にしていた。
「うおおおお!!!」
と怒号をあげつつ、背後から本隊がフロアになだれ込んでくる。あのジャミング装置を部屋の端に設置すれば、ひとまず付近の敵は、敵の司令官に相当するアビスからの命令が伝わらず、有視界で対処してくる筈だった。そうなれば、今まで戦ってきた自動防衛機との戦いと大差は無い。
最初に囮になった俺とアサリナ大佐は、二体のガーダーに追われつつ、そのセンサーをビームガンで焼き切っていく。しかし二体を無効にしても、新たに四体のガーダーが頭上から落ちてきて、床の甲板にめり込みつつ着地していた。
更に五本の柱を伝って4足形とローグタイプが、さながら植物の枝を伝う虫の様にワラワラと下降してくるのが見える。
「雪刃さん、ボマーの位置を優先的に!」
「了解、一体ずつだけどいい?」
「私がやるわ、ボマーは今の所3体、同調は以前と同じチャンネルでいい?」
シアリカさんがそう言って、エルイルの近くに行き、膝をついて遠距離センサーを作動させる。エルイルが対艦砲で遙か上空のボマーを撃ち抜くと、大爆発が起こって、十体近くのロボットの破片と壁の甲板が落ちてきていた。
「わ、私は、小稲さんの援護に行きます」
雪刃さんは慌てて元の持ち場に戻り、古川さんやシアリカさんと同じく、管制塔になっている小稲を守って、近づいてくる無数の敵を排除していた。
「3900! ジャミング開始します!」
野太い男性の声がそう叫ぶと、シュバン! という空気が斬れる様な音と共にセンサーがノイズだらけになって使い物にならなくなる。
「スキャン、センサー停止! エネルギー探知モードに切り替えます!」
小稲とシアリカさんがそう言うとディスプレイ上のターゲットがまるで温度センサーの様な色つきの物に変わる。
バッテリーの熱量で敵を探知するモードで、いわゆる有視界戦闘だった。敵か味方を見分ける為にマーカーはつけられるが、種別までは分からない。形で大凡判断するしかなかった。
「3800階に侵攻する! アサリナ隊、カガネ隊、前へ!」
「やっぱり、大佐が先陣に立つのか……」
3800へ侵攻しようとしていた本隊の兵士が、自分達の前を進むアサリナ大佐とカガネ隊長の姿を目で追っていた。その表情は険しかったが、目には力強い意志を宿していた。
「大佐に遅れるな! 続け! 3800にジャミング装置を設置するぞ!」
三人がかりで巨大な箱を引きずりながら、兵士達がスロープを上り始める。その周りでは、アビス本体からの命令を遮断され、4000階以下の自動防衛装置と化したロボット達が次々に破壊されていた。
「ボマー二体、壁の向こうだ」
エルイルが舌打ちをしてライフルで狙うのをやめる。
「正面か、私がやる」
アベリアさんがチェーンガンではない、別のロングライフルを構え、そして狙いをつけて撃つ。その銃口からは細く赤い熱線が放たれ、壁ごと向こうにいる敵を焼き切っていた。まるで距離無制限のレーザートーチだった。焼き切られたボマーは近くにいたボマーも含めて、大爆発を起こしたが、そのおかげでスロープも使えなくなってしまっていた。
「良い腕だ。支援機は破壊された壁の所を使って通路を作ってくれ。ジャミング装置が通ればいい」
「了解」
大佐の指示を聞いて、小稲とシアリカさん、雪刃さんが壁の側まで行き、作業を始める。俺達は壁の中に入って、迷宮の中をこちらへと向かってくる敵を撃退していた。
「カガネ隊長、セトル君、エネルギー残量が40%をきっています。後退して補給して下さい」
「セトル、先に補給しろ。私は20ミリMGを持っている」
「そんなのまだ持ってたんですね……」
「大抵の敵はまだこれで倒せるからね」
自分は一旦後退すると、3900階でジャミング装置を護衛している小隊の所に行き、エネルギーを補給して貰った。
「上はいけそうか?」
「はい。いけます」
「頼んだぞ」
「ありがとうございます。行ってきます」
短い会話だったが、支援機のパイロットは俺に握手を求め、強く握ってくれた。それが俺を信じている、という気持ちの強さの表れだった。
小稲達が焼き切った甲板を利用して足場を作り、上へと登るスロープへと道を繋げた頃、俺はもどってカガネ隊長と交代した。
「よし、先へ進んで3800のエリアを確保してくれ」
下からは巨大な装置を運んできた小隊が、小稲達の作った道を通っている所だった。
俺が上へと進むとアサリナ大佐と古川さんが近場にいる敵を掃討していた。
「ガーダーが来るが、武器が無い。比奈瀬が盾になって、古川と雪刃で止めろ」
「了解です」
アサリナ大佐はそう言うと、スロープの右手を指さして、皆に少し戻るように手を振って指図した。するとドゴン、という鈍い音と共に壁が切り裂かれ、ガーダーが大きなチェーンソーで壁を破壊しながら出てきた。
(あいつ、あんなヤバイ武器を持ってるのか)
今まではほとんどセンサーを吹き飛ばして難を凌いでいたが、このスロープの上では逃げる場所などなかった。アサリナ大佐達は比奈瀬さんの後ろに行き、古川さんと雪刃さんが比奈瀬さんの背中にあるハンドルに手をかけて、敵に飛びかかるスタンバイをする。
「シールド、展開します」
比奈瀬さんが新しい貰ったシールドは上下左右に翼を出す様に大きくなり、そしてその表面にパルスシールドまでコーティングされていた。
「随分とすごい物を持っているな比奈瀬」
アサリナ大佐が驚いてそう言った。
「わ、私もさっき貰ったばかりで……でも、これならいけます」
ガーダーがチェーンソーを振り上げて比奈瀬さんに踏み寄ってきたが、以前の甲板なら焼き切られていた所を、この盾はパルスシールドがある為に逆に弾かれていた。
バジュン、という音と共にガーダーが振り上げたチェーンソーが弾かれて、相手は大きくバランスを崩す。それを見計らって、古川さんと雪刃さんが比奈瀬さんの上からガーダーの上へと跳躍していた。
雪刃さんがセンサーにジャミング弾を撃ち込んで動きを停止させると、そのセンサー部分を古川さんがレーザーブレードで切り落としていた。
ぐらり、と揺れたガーダーに皆瀬さんが盾を構えて体当たりをし、そのまま下へと突き落としてしまう。
「雪刃、中にパルス弾を」
「はい」
ガーダーが開けた壁の穴の中に雪刃さんが手榴弾を投げ込むと、中でバジィィンという電子爆発音が響いていた。その後、大佐が中に動ける敵が居ないかどうかを確認する。
「よし、ここに3800階のジャミングを設置してくれ。私と古川は一度補給に戻る」
と言うやいなや、アサリナ大佐と古川さんは二人とも宙に飛び、ワイヤーを中央付近の柱にひっかけて、映画に出てくるアクションスターの様に空を舞って降りていった。
「す、すげぇ……俺には無理だ」
「アサリナ大佐も古川さんと同じウォリアーですから、体術はすごいですね」
「えっ、アサリナ大佐ってアサルターじゃなかったの?」
そう言えば、X壱式に搭乗しているアサリナ大佐は知っているが、X6K式に載っているアサリナ大佐と行動するのはこれが初めてだった。




