25 電動工具と発電所でもっといろいろなものが作れるようにしよう
ノボルが導入したかったのは文房具だけではない。
できればもっと高額な製品も集めたかった。
しかし、予算が厳しい小国である。
高額製品を買おうにも金が無い。
だから安価な文房具から揃えた。
それに、まずは土台を造らないとどうしようもない。
高額製品を買い集めても、これが横領され横流しされていったら無駄になる。
なので、高額製品は後回しにした。
幸い、安価な製品の導入で、横流し経路が発見され、これを一網打尽にできたけど。
それに、たとえ高額製品を導入しても、それだけでは上手くいかない。
様々な仕事を仕切ってさばく事務作業が壊滅してたら、必ず停滞を引き起こす。
だから、まずは事務作業の効率を上げた。
ここにきて、ようやくノボルは新たな機器を買い込めるようになった。
早速、父親におねだりをする。
「父上、電動工具が欲しいです」
「うん、わかった」
「あと、発電所も」
「うん……うん?」
ノボルが求めたのは電気の工具だ。
それも、そう大きなものではない。
電動ドリルに電動のこぎり。
その他、人が手に持って使える道具を集める。
これなら、大がかりな機器よりも安い。
そして、これらを動かすための電気が必要になる。
なので、発電所を求めた。
今の発電能力では、独裁者の宮殿の電力化をまかなうだけで限界が来てしまっている。
もっと多くの電気が必要だった。
なので発電所を求めた。
ただ、大がかりな建設になるので、どうしても出来上がるまで時間がかかる。
しかし、それほど長くも待っていられない。
なので、1年以内に作れる事。
これを求めた。
当然、大きな発電所は作れない。
発電力もそれなりのものになる。
それでかまわなかった。
電気を使う家がほぼ無いのだから。
これが出来上がるまでは、小型の発電機をいくつも用意してまかなった。
最初に注文した工具と共にやってきたこれは、独裁国家の電動化の最初の一歩となる。
こうして、手作業がほとんどだった作業場のささやかな近代化がなされていった。
だが、効果は大きかった。
手作業ではできない事を機械がしてくれる。
作業効率が大幅に変わっていった。
最初は小さな作業場から始まった。
ノボルが父親にねだって作ったものだ。
ここに職人を集め、電動工具を渡す。
そして仕事をさせていく。
いきなり国営工場など、全ての工業関連の場に導入するのは不可能だった。
発電所がない、必要な数を揃える事が出来ない。
独裁者の強権でもできない事だ。
だから、ノボルの手元で全てを始めた。
いつも通りに、今まで通りに。
しかし効果は抜群だった。
実際にやって見せて、結果を見せる。
こうなると及び腰だった者達も積極的になる。
俺も使いたいと言い出し始める。
これもいつも通りである。
人間というのは、今まで通りにこだわる。
使えば効果があるとわかっても、便利な事を退けようとする。
解消する方法は実例を見せる事だけだ。
これで大半の者達はやり方を変える。
例外もいる。
どんな事があろうと今まで通りだけを続けるものはどうしても出ててくる。
それが理由があるなら良いが、たいていは頑迷なだけである。
こうした連中は切り捨てるしかない。
その為にも、まずは新しいものを使う事を好む者達を集めた。
実際に使ってみて効果を確かめるために。
自然と実験室のような性格になっていく。
ノボルの作った小さな作業場は、最先端機器の使い勝手を試す場になっていく。
この場で出来上がった事が壁新聞で国内に広められていく。
何が出来上がり、どんなものが作られたのか。
このためにどれだけの時間がかかってるのか。
これらが広く伝えられていく。
発電所ができるまでに、こうして多くの成果が知られるようになった。
知った者達は時分も使いたいと言い出してく。
その要望を聞き入れつつも、しかしすぐには電動工具を提供はできなかった。
発電所ができるまでは電動工具を渡しても意味が無い。
持ち運びできる発電機と共に渡そうにも、数が揃わない。
しばらくは順番待ちになってしまう。
少しずつではある。
でも、確実に工業化は進んでいく。
小さな工具によって。
それすらも無かった国にとっては大きな進歩になった。




