19 海から水を作ろう
砂漠の国である。
陸地に水などあるわけがない。
だが、海岸に沿って作られた国である。
広大な海岸と、ひろがる海が目の前にある。
「蒸留水を作ろう」
そう思いつくまでさほど時間はかからない。
まずは小さな所から。
透明なプラスチックを使って小さな温室を作る。 縦横3メートル。
高さは2メートル。
この左右に筏をつけて海に浮かべる。
天井からは三角錐を逆さにした透明な物体を取り付ける。
温室の中で蒸発した海水が、ここで水滴となってくっつく。
それらが重力に従って、下向きの先端部へと向かう。
その先端部の下にツボを吊り下げておく。
水はこの中に入る事になる。
これらを作ってまずは実験していく。
当然、材料は父親にねだって。
独裁者はノボルのおねだりに、
「いいぞ、好きにやってみろ!」
と即座に承諾した。
これまでの成果から、ノボルのやる事に疑いもなく全面賛同する。
もはや親馬鹿だけが理由では無い。
根底にあるのは、際限の無い子煩悩であるが。
こうして海の上に浮かべた温室の中で蒸留水が作られていく。
結果は上々。
ほぼ赤道直下の国のこと、海水の蒸発も早い。
思った以上に大量の水が手に入った。
「これなら上手くいくかな」
出てきた結果をもとに、より大きな施設や設備を作る事を考える。
もっとも、ノボルにそんな設計能力はない。
だが、父親からおねだりした人材がいる。
これらに適切な大きさの蒸留施設の設計をやらせていった。
遠慮無く使っていく、その為の人員だ。
実験は成功。
この結果を父親である独裁者に伝え、ノボルは更におねだりをする。
「もっと水を作りたいのです。
なので、もっと大きな温室を作りたいのです」
「分かった、やれ!」
「ありがとうございます」
息子からの評価を得るため、また砂漠で貴重な水を得るため。
父としても独裁者としても躊躇いはなかった。
「それで、どれくらいのものをつくるのだ?」
「そうですね、幅が10メートル余り。
長さが50メートルくらい。
これくらいは必要と考えてます」
「……なに?」
その大きさに、さすがに独裁者も驚いた。
とはいえ、子供に甘い父である。
独裁者の権力を好きなだけ使わせていく。
おかげでノボルは、求めるものを海岸沿いに作る事が出来た。
使ってない砂浜の上に、蒸留水を作る温室が並んでいく。
これらが砂漠の国に飲用水をもたらしていく。
もっとも、作れる水の量はしれたもの。
その全てが独裁者とその関係者にもたらされる事となる。
その代わり、国の中枢に携わるものだけではない。
末端の使用人や労働者にももたらされる。
おかげで独裁者は身近な者からの支持をより強固なものとしていった。
また、水は人間にだけ提供されるわけではない。
砂漠にも流し込まれていった。
「上手く緑地かするといいけど」
長い時間がかかる作業にノボルはとりかかっていく。




